【完全版】お墓の基礎工事の『施工の流れ』と『価格のポイント』まとめ【1級土木施工管理技士監修】

お墓 基礎工事

どんな構造物でもそうですが、土台となる基礎工事はしっかりと作る必要があります。お墓の基礎工事は地域ごとに特色があり、一概に説明をすることはできないのですが、建築基準法に準拠してなるべく根拠のある説明をしていければと思います。

なかの
こんにちは、1級土木施工管理技士のなかのFacebook Twitter自己紹介)です。

土木工事の現場監督として数多くの現場をこなしてきました経験を元に、お墓の基礎工事について説明いたします。

ちなみに私は石屋さんの講師としてお墓の工事の指導をさせていただく立場にあります。

お墓の基礎工事は大きくわけると以下のポイントに集約できます。

  1. 墓地の地盤確認:適正な地耐力の確保。場所によっては、地盤改良(セメント改良・軟弱地盤対策・杭打ち)が必要になる。
  2. 基礎砕石(割栗石):砕石を地盤の上で、構造物の重量を跳ね返す地盤反力が確保できるように入念に締め固める。(割栗の場合、地盤にめり込み杭のような役割も果たす。)
  3. 配筋:構造計算上、基準を満たすような太さの鉄筋を選び適正な間隔で配置する。コンクリートの中性化も考慮する。
  4. 型枠:型枠を生コン打設時の衝撃などにより動かないように、固める。
  5. 生コン:構造上十分に耐えられる強度を有するように設計を定める。また、気温により適正な呼び強度で打設する。
  6. 生コン養生:コンクリートが適正に強度を発現するように養生を行う。

以上、大まかなお墓の基礎工事の流れですが、一つづつ説明していきます。そして、私の記事をパクるキュレーションサイトが多いので一言付け加えておきます「パクらないでね」

パクった時にバレるような仕掛けを付けときます(笑)

 

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目次

お墓の基礎工事の施工の流れと価格のポイント

①墓地の地盤確認

住宅を建てる際には、地盤調査をして、建物の重量に耐えうる地耐力を有しない場合には、適正な地盤補強をすることが義務付けられています。ただ、お墓にはそのような定めがなく、各石材店の判断にゆだねられています。

そのためか、大きな地震が起こった際には、墓地の被害は大きくなりがちです。大地震が起こると必ずと言っていいほど、倒壊しているお墓がクローズアップされます。お墓の耐震や免震などの構造も大切ですが、実のところ地盤のウェイトが大きく、いくら強固にお墓をつくっても地盤が弱いとどうにもなりません。

標準貫入試験

標準貫入試験

一般的には住宅の場合には、スウェーデン式サウンディング試験が行われます。もしくはもっと正確な情報が必要な場合には標準感貫入試験を用います。しかし、墓地においてはそこまでして地耐力を確認することは稀です。なので、周囲のお墓の沈降具合、地形、過去の地震の被害などを加味して、なんらかの地盤改良を施します。簡易的な地盤調査として鉄筋棒を持っていき、自分で差し込んで感触で確かめるというのもあります。あくまで感触の話になってしまうので根拠に乏しいですが、慣れると感覚で強い地盤か弱い地盤かわかります。

なかの
鉄筋がずぶずぶ入るようなところは要注意!
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墓地の地盤における価格のポイント!

本来であれば、適正な地盤調査の元に地耐力を計測し、それに応じた地盤改良工事をするのが筋です。ただし、先に述べた通りお墓には建築基準法のような定めがありません。

なので石屋さんの勘に頼る部分が多くなります。

また地盤改良工事にはいくつか種類がありますが、その中で適正なものを選択していきます。その際にも地盤の特徴や効果的な地盤改良を選ぶのには熟練の技術者の目が必要になります。ざっくりとお墓の地盤改良の種類と価格をあげていきます。

お墓の地盤改良の種類

墓所 地盤改良 杭打ち

杭打ち機

杭打ち 単管パイプ・PC杭(プレキャストコンクリート)・FRP杭(樹脂パイル)・場所打ち杭

個人的にお墓の基礎にソイルセメント杭という大掛かりな施工をしたことがありますが、ほとんどは単管・PC・FRPといった簡易的な杭打ち施工になります。鉄骨住宅のように鋼管杭を施工することもありますが、滅多にないと思われます。

価格的には、単管パイプだと1本2mで1000円程度、その頭にアタッチメントをつけて鉄製の大ハンマーで叩いて押し込みます。10本打っても10000円+人件費なので比較的お手軽な地盤改良方法と言えます。

PC杭やFRP杭は、2mで1本5000円ほどしますが、径が太くその分地震に強くなります。杭打ち用の特殊な機械を借りるのとクレーンが必要になるので、経費は高くなります。FRP杭は2mの長さに連結して打つことができるのが特徴です。

専用のソケットがあるのと、穴を開けて鉄筋を差し込みボンドで張り付けてもいいです。打ち込めるところまで打ち込めるので地盤改良の意味としては強力になります。

墓所 地盤改良 杭打ち

FRP杭

場所打ち杭は、杭上に長細く専用のスコップで穴を掘り、そこに鉄筋を入れて生コンを基礎と一緒に打設する方法です。基礎との一体化ができるのが特徴で、らせん状の鉄筋を加工するのが多少面倒くさいけど径も太くけっこう効きます。価格は安いのですが、余り深く掘れないのが弱点です。

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トップベース工法・D-BOX

トップベース工法やD-boxは、軟弱地盤に強い工法になります。D-boxは施工が容易なので、比較的どこの石材店でも施工ができると思います。トップベースは強力な支持層を形成するのですが、癖が強く適正に施工できる石材店は限られてきます。価格はPC杭を打つのとそんなには変わりません。

表層改良工法

表層改良工法とは、基礎砕石を入れる床にセメントや石灰を混ぜて転圧し、柔らかい層を硬い層に変える工法です。土木工事ではたまにやるのですが、あまりお墓ではやらないでしょうね。

砕石置換工法

杭を打つことができない道路工事では、1mを超える砕石の層を設け、20cm程度の厚みごとに入念に転圧していきます。これはお墓の施工でも有効です。掘削土量が多くなるので、土砂の運搬量が増え、同時に砕石の量も増えるのでその分の価格が嵩みますが、例えば柔らかい層が薄くてその下に硬い層があることがわかっている場合には強力な地盤を形成することになります。

プレローディング工法

あんまりお墓の工事でプレローディング工法を利用することは少ないかと思いますが、例えば盛土の圧密沈下を促したい時に便利です。具体的には、漬物石を思い浮かべてください。重いものを乗せとくと土も締まっていきます。土を多く盛っておくだけでも圧密沈下を促せます。

ただし、長時間置く必要があるので、なかなかお墓の工事で使いどころは難しいと思います。

なかの
地盤調査とか、なんちゃら工法とか、ややこし過ぎてわからないわ
なかの
なんか色々と面倒くさいことを言っていると思いますが、経験の豊富な信頼できる石材店を選ぶようにしてください。

②基礎砕石(割栗石)

お墓の基礎工事 基礎砕石

ランマー転圧

適正なお墓の基礎砕石の施工方法とは?

基礎に用いる石は、各石材店によってさまざまで砕石、もしくは割栗石を用いることが多いです。加工をする石材店によってはコッパと呼ばれる石の切れ端を砕いたものを利用することもあります。個人的にコッパは目的として不適格なのでお勧めしません。

基本的には、基礎砕石の役目は地盤反力を得るためのものです。地盤反力とは、上に乗る墓石やコンクリート基礎の加重を跳ね返す力。そのために最適含水比に近づけて入念に転圧をして、硬い層を作る必要があります。割栗を用いる石材店もありますが、その場合には若干意味合いが異なって、下の地盤にくいこませて地耐力を上げる意味になります。この場合には、目つぶしとして砕石の層を上につくり地盤反力も補う必要がでてきます。
※最適含水比とは砕石が締め固まるのにちょうどよい水分量を含むことをいいます。

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お墓の基礎工事の理想的な方法は、私ならばランマーとプレートのどちらも利用して転圧をしたいところです。それはこの2つの機械は目的が違うからなんですね。ランマーは真下に押し出すような力が加わり垂直方向に砕石を締め固めます。それに対してプレートは微細な振動で砕石同士が密接に固まります。

一般的にお墓に利用する砕石はC-40~0という種類を用いることが多いです。40~0とうのは40㎜から0㎜(ダスト)が幅広く分類している砕石をいい、振動を掛けるとお互いに隙間に入り込み締め固まるんですね。

基礎砕石の価格のポイント

基礎砕石の価格のポイントは、手間の掛け具合によります。割栗石+砕石だと2つの材料を用いることになりますし、施工方法も違います。その分手間が掛かるので経費が掛かることになります。

また、転圧が大切なのですが、ここも手間をどれだけ掛けるかによって価格が変わります。が、そんなにびっくりするような価格の差にはならないので、しっかりと丁寧な施工をしてくれる石材店に施工をお願いしたいところです。

③配筋

鉄筋 配筋

異形鉄筋

お墓の鉄筋の適正な施工方法とは?

お墓の基礎工事には、建築基準法のように定められた法律はありませんが、準拠することで十分に強度があり、客観的に信用できる基礎工事になります。その中で、鉄筋は実は重要なファクターになります。知識の有無で雲泥の差が出るからです。

もともと、鉄筋は硬いけど柔軟性がなく割れやすいコンクリートに引っ張り強度をもたせるために配置されます。墓石の重量に耐えうるように、適正な鉄筋の径や太さ、間隔を定める必要があり、特に負荷がかかる部分には多めに配筋します。このように鉄筋はコンクリートの柔軟性の乏しさを補うためのものでありますが、致命的な弱点があります。それが爆裂現象です。

爆裂減少とは、コンクリート内部でアルカリ性の被膜に守られている鉄筋が、コンクリートの中性化によりサビてしまい。内部で膨張して内側からコンクリートを破壊する現象です。コンクリートは柔軟性がないので、内部から力が加わると比較的容易に破壊されます。それを回避するためには、鉄筋のかぶり厚を適正に確保することが必要になります。

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また、施工上注意するところは、継手長さと位置です。お墓の基礎だと継手は余りないかもしれませんが、ダブルに組む場合などは素人と玄人の差がハッキリくっきり出ます。この辺りは書き出すと切りがないので省略させていただきます。

あと、結束線での縛り方も注意が必要です。ハッカーという道具を用いて結束をするのですが、慣れていないと甘い結束になりぶらぶらしてしまうこともあります。生コン打設の際には、鉄筋の上に乗って移動するのでそれだと外れてしまうこともあります。

さらに、基礎砕石との距離を稼ぐためにスペーサーブロックを適正に配置しましょう。これは鉄筋が動かないように適正な位置に配置することと、被り厚さを確保して中性化から守るという2つの意味があります。

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異形鉄筋を用いよう!

使用する鉄筋は、基礎のサイズにもよりますが、お墓だとD13㎜が多く用いられるようです。小さめであればD10㎜でも問題ないでしょう。それよりも異形棒鋼という凸凹のついた鉄筋を使用することを厳守してください。

以前は丸鋼というツルツルの鉄筋を使用していました。ワイヤーメッシュ(溶接棒鋼)も同様で鉄筋の表面がツルツルしています。これだとコンクリートとの密着が弱く剥離しやすいのです。だからワイヤーメッシュはダメです。

コンクリートの中に鉄筋を入れるのは、引張強度を高めるためです。引張強度とは、コンクリートがしなった時に破壊されない力です。コンクリートはめちゃめちゃ硬いのですが、しなるとバキッと割れてしまいます。それを防止するために鉄筋を入れるんですね。それが丸鋼だと効力を発揮しません。だから異形棒鋼を使用するんですね。

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また、鉄筋の世界は奥が深くて、様々な鉄筋の種類があります。例えば通常良く利用されるSD295やSD295A、ちょっとマニアックで少し強度の高いSD345など、同じように見える鉄筋でも少しだけ違いがあります。またコンクリートの中性化に対応した亜鉛溶融メッキ鉄筋とか、エポキシ樹脂被膜鉄筋とか、値段も少々お高くなりますが、性能の良い鉄筋もあります。

なかの
マニアック過ぎますね。
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④型枠

永代供養墓 型枠

正しいお墓の型枠の施工方法とは?

上の写真は、私が設計・施工管理をした永代供養墓の納骨堂の配筋・型枠の様子です。大きく複雑になり、生コンのボリュームが増えるほど、型枠の強度も求められるので短観パイプやサポートでガチガチに固める必要がありますが、一般的なお墓の基礎であれば、ここまで仰々しく施工をすることはありません。

ただ、打設時に動いてしまうと基礎の形が狂ってしまうことになります。また、四隅に対して、真ん中の方がコンクリートの圧力を受けるので、はらみやすくなります。お腹が出るようでちょっとみっともない基礎になりますので、注意が必要です。また、生コン打設前には散水をして型枠や基礎砕石に水分を含ませることが必要になります。

 

⑤生コン

お墓 生コン

生コンの設計強度は、いちいち構造計算などしていられないので、一般的な構造物の強度に準ずる形で良いと思います。また、打設する際の気温によって呼び強度を定めます。呼び強度とは、実際に施工する際の強度であり、コンクリートは気温が25℃を超えるか0℃を下回ると強度が落ちますが、条件が悪い気温の場合でも設計強度以上の品質を確保するために上乗せされた強度を言います。

また、生コンは品質を維持するために、練り混ぜ(おおよそ工場出荷)から打設終了までの時間は2時間と定められており、25℃を超える場合には1.5時間になります。それを超えるとコンクリートの硬化が始まっているので、著しく品質が落ちます。

コンクリート打設の際には材料が分離するので横流しは禁止、また振動棒を30cm間隔で垂直に挿入し丁寧に締め固める必要があります。細かいことを言い出すとキリがないのですが、けっこう品質に差が出ますので丁寧にやりたいところです。

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⑥コンクリート養生

コンクリートは『水和反応』という、水とセメントの化学反応により硬化しますが、乾燥をしてしまうとひび割れの原因となるので、一定期間は水分の逸脱を防ぐために養生をする必要があります。雨季などで乾燥ひび割れのリスクがない場合には養生をしなくても問題ありません。個人的には、夏場だったらプールみたいに3日ぐらいはひたひたにしておきたいぐらいです。

特に冬季は0℃を下回ってしまうと水分が凍ってしまい『水和反応』ができなくなるので、シート養生。場合によっては練炭やバーナーによる養生が必要になります。

 

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まとめ

お墓の基礎工事について、1級土木施工管理技士の立場から簡単にまとめてみました。どんな構造物でもそうですが、墓石の重量に耐えられる地盤があって、基礎砕石を丁寧に転圧して硬い層を作り、鉄筋や生コンを適正に施工してコンクリート基礎をつくります。

これらの基準や施工方法は、一般的な建築物の場合には建築基準法に定められているのですが、お墓の工事には法的な定めがありません。お墓の形は全国でさまざまですが、施工方法もかなりの違いがあり、例えば鉄筋でなくてワイヤーメッシュが主流の地域もあったりします。

これがそのまま施工不良と言うわけではなく、例えば墓相型だとモルタルを用いないで石塔を重ねたりしますし、お墓の基礎工事に関しては、地域性や宗教性も色濃く反映されるものであるということはご了承ください。

 

1級土木施工管理技士の「なかの」はこんな人ですよ。
自己紹介・プロフィール

こんな会社に勤めていますよ。
羽黒石材工業株式会社

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この記事を書いた人

中野良一のアバター 中野良一 羽黒石材工業㈱営業部長

1級お墓ディレクター・1級土木施工管理技士
見に見えない存在であるご先祖を「見える化」した【いのちの積み木】→http://senzo.inotinotsumiki.com 雪のように白くてキレイな【淡雪五輪塔】のプロデュース。

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