お墓の建て直し費用をなるべく安く抑えたい!
先祖代々受け継いできた墓所が古くなってきたので、新しく立て直したいと考えていらっしゃる方はご注意です。
案外、施主様が甘くみているのが、コンクリートの強度の低下。
コンクリートの耐用年数は60年程度とされていて、古いコンクリート基礎を再利用してその上にお墓を建てるのは基本的にタブーです。
申し遅れました。私は、1級土木施工管理技士のなかの(@ryoryoly)と申します。
公共事業や大手ゼネコンの仕事などにも携わり、お墓の工事の管理もしています。
なるべくお墓の建て替え代金を安く節約したいという気持ちはわかりますが、本来やるべきことをきちんとやらないのは、違う話です。
石屋さんの中には、とにかく仕事を引き受けてやってしまったもの勝ちとう発想の方も少なからずいます。
後先考えていないんですね。
もしくは、コンクリート基礎は壊れないから問題ないぐらいに考えているのかもしれません。
真面目にしっかりとした仕事をしようと思っている石屋さんほど、依頼主から疑いの目を向けられる可能性すらあります。
この記事を書こうと思ったのは、神奈川県川崎市で石材店を営まれている吉沢さんの記事を読んだからです。
川崎市多摩区のお寺で、新規墓所の基礎工事にかかりました。…ところが!
また、富山県のお墓の営業マン宮崎さんも以前に触れています。
既存基礎にヒビが入ってるのに基礎工事をやりなおさず、そのまま建てる
真面目に丁寧な仕事をされている石材店が割に合わないのでは、切な過ぎます。
お墓のコンクリート基礎の再利用について、1級土木施工管理技士の立場から解説していきます。
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目次
コンクリートは硬くて壊れない?
私が、以前実際にあった話なのですが。
お墓の解体工事の依頼があり、実際に現地を確認してお見積りをお出ししました。
寺院墓地だったのですが、更地にして墓地をお寺にお返しするのが鉄則です。
見積りの項目は大きく以下の3つです。
- 墓石解体・撤去・処分
- コンクリート基礎解体・撤去・処分
- 砕石埋戻し
墓石とコンクリートをすべて撤去して空いた穴を砕石で埋めるという内容です。
この中で、石材店の立場として一番やりたくないのはコンクリートの解体です。
法律で30分作業したら休憩をいれることが義務付けられています。
コンクリート解体費用は、ちょっと高目になるのは致し方ないのです。
お見積りを依頼主に持っていった際に最初に言われたのが、
次に墓地を購入して利用する人のためにも壊さない方が親切だろうとの話でした。
コンクリートの耐用年数の話をしても全く納得していただけないんですね。
寺墓地なので、墓地管理者(ご住職)にご相談したら【更地での返還】を求められました。
再度、依頼主に説明して、コンクリート基礎の撤去をのんでもらった経緯があります。
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コンクリートは壊れます!
冒頭の話に出たようにコンクリートの耐用年数は60年程度と言われています。
しかし、実際にはもっともっているコンクリート構造物は巷で見かけるし、何百年でももつ感覚なのかもしれません。
そんなこともあって『コンクリートは壊れないものだ、解体する必要などない!』という考えに至るのでしょう。
では、実際にどうなのでしょうか?
この写真は『爆裂現象』が起こったコンクリートです。
鉄筋コンクリート構造物には、内部に鉄筋が必ず入っていますが、数十年といった単位で、サビて内部から破壊するのです。
コンクリートはアルカリ性ですが、空気に触れて徐々に表面から中性化していきます。
鉄筋はアルカリ性の状態だとサビませんが、中性化するとサビます。
つまりコンクリートの中性化により『爆裂現象』が起こります。
コンクリートの中性化は、特殊な薬剤を塗布するなどして遅らせることもできます。
ただし、ビルなどの高額な構造物に用いられるものです。
コンクリートを内部から破壊する爆裂現象が起こる可能性が大です。
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コンクリートに鉄筋が入っていない場合は?
じゃあ、鉄筋が入っていないコンクリート基礎なら問題ないじゃないか!
と思われるかもしれません。
昔のお墓の基礎は、鉄筋が入っていないものも多くあります。
ただし『じゃあ何故、わざわざ鉄筋を入れるの?』という話で、壊れやすいコンクリートを補強する意味で鉄筋が入っているんです。
コンクリートは圧縮強度(あっしゅくきょうど)が強いけど、引張強度(ひっぱりきょうど)が弱いという特徴があります。
鉄筋は引張強度を高めるために必要で、入ってないとひび割れやクラックが起こりやすくなります。
現在の関東でのお墓の基礎工事は【べた基礎】といって、墓所の一面にコンクリート基礎を打つのが主流です。
一昔前は、【布基礎】という、お墓の石が乗る部分にだけ布状に打っていました。
先の東日本大震災では、この布基礎がぽっきり折れてお墓がサバ折り状態になっているところもありました。
そもそも論として、問題外です。
鉄筋が入っている新しいコンクリート基礎の場合には?
まだ、お墓を建てて間もないけど、建て直す場合もあるかもしれません。
その場合には、コンクリートの嵩上げ(かさあげ)も視野に入れても良いでしょう。
コンクリート基礎の嵩上げ(かさあげ)工事手順
- コンクリート基礎をハツリ、鉄筋の径とピッチの確認(太さと間隔)
- 問題がなければ、コンクリート基礎上部を5cm~10cm程度全面チッピング
- チッピング後、念入りに清掃
- コンクリート上部に接着の役目をするシーラーを塗布
- 15cm~20cmのコンクリートをかさ上げ
という工法も考えることができます。
まだ新しい、そして鉄筋がまともに入っているコンクリート基礎は、解体するのが恐ろしく大変なので、状況によっては、選択することもありです。
ただし、
- コンクリート基礎が以前よりも高くなり見っともなくなる。
- けっこう手間が掛かるので、それなりに費用が掛かる。
という問題点もあります。
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まとめ
お墓の基礎工事 墓所を建て直す際のコンクリート基礎の扱いについて説明してきましたがいかがでしたでしょうか?
そもそも論として、コンクリート基礎は壊れます!
この認識を、石材店も依頼主も共有してもらわないと話がスタートしません。
まだ新しくて鉄筋がきちんと入っていることが確認できる場合には、コンクリート基礎の嵩上げ(かさあげ)という手段もあるにはあります。
状況に応じてですが、そちらを検討してみるのもよろしいかもしれません。
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