鉄筋工という仕事をご存じでしょうか。
コンクリートの中に入る鉄筋を、図面どおりに加工し、組み立てる職人です。
鉄筋の交点を「ハッカー」という道具でクルクルと結んでいく。その手際のよさは、まさに職人技です。
こんにちは、りょういちです。石材と土木の現場で約25年、お墓づくりと土木工事に携わってきた元石屋です。1級土木施工管理技士でもあります。
今回は、私が担当した墓地のL型擁壁工事をもとに、鉄筋工の仕事と道具を紹介します。
- 鉄筋工は、鉄筋を切る・曲げる・組み立てる仕事。鉄筋コンクリートの骨組みをつくる専門職です。
- 鉄筋の結束には、ハッカーと結束線を使います。小さな道具ですが、使いこなすには経験が必要です。
- 鉄筋の加工には、切断機やベンダーを使います。工場で加工するのが基本ですが、D13程度なら現場加工が早い場合もあります。

鉄筋工とは?コンクリートの骨組みをつくる職人
鉄筋工は、鉄筋コンクリート構造物の内部に入る鉄筋を加工し、組み立てる職人です。
仕事の中心は、大きく3つあります。
鉄筋工の主な仕事内容
| 作業 | 内容 |
| 切断 | 図面に合わせて鉄筋を必要な長さに切る |
| 曲げ加工 | 鉄筋を決められた形や角度に曲げる |
| 配筋・結束 | 鉄筋を所定の位置に並べ、結束線で固定する |
住宅の基礎やマンションの柱・梁だけでなく、橋、擁壁、お墓の基礎工事にも関係する仕事です。
鉄筋は、コンクリートを打ち込むと見えなくなります。
しかし、完成した構造物の強さを支える大切な部分です。
なぜコンクリートに鉄筋を入れるのか
コンクリートは、押しつぶそうとする力(圧縮)には強いものの、引っ張る力(引張)には弱い材料です。
そこで、引張に強い鉄筋を組み合わせます。
コンクリートと鉄筋がお互いの弱いところを補う。これが鉄筋コンクリートの基本的な仕組みです。
ただし、鉄筋をたくさん入れればよいわけではありません。
鉄筋の太さ、間隔、位置、継手、コンクリートのかぶり厚さを、設計どおりに確保することが大切です。
あわせて読みたい:ワイヤーメッシュと鉄筋の違いは?お墓の基礎はどちらがいい?
異形棒鋼とは?表面のふしに意味がある
鉄筋コンクリートに使われる代表的な鉄筋が、異形棒鋼(いけいぼうこう)です。
表面を見ると、ギザギザした突起があります。
この突起を「ふし」と呼びます。
ふしは、コンクリートと鉄筋の付着を確保し、力を伝えやすくするためのものです。
異形棒鋼には、D10、D13、D16などの呼び名があります。
例えばD13の公称直径は約12.7mm。1mあたりの重さは約1kgです。
D10よりD13、D13よりD16のほうが太くなります。
お墓の基礎工事では、私が仕事をしてきた茨城県ではD13を使うことが多く、小さな基礎にはD10を使うこともあります。
ハッカーとは?結束線で鉄筋を結ぶための道具
鉄筋工が使う代表的な道具が「ハッカー」です。
名前だけ聞くと、コンピューターのハッカーを思い浮かべるかもしれません。
ところが、建設現場のハッカーは、鉄筋を結ぶための手工具です。
先端が小さなカギのように曲がっていて、持ち手を回転させながら使います。
ハッカーの使い方と鉄筋の結び方
鉄筋を交差させた場所に、結束線という細い針金を通します。
その結束線をハッカーの先端に引っ掛け、クルクルと回して締め付けます。
手順は次のとおりです。
- 二つ折りになった結束線を鉄筋の交点の下から通す。
- 結束線の輪の部分にハッカーの先端を引っ掛ける。
- もう一方の結束線の端もハッカーに掛ける。
- ハッカーを回し、結束線をねじって締め付ける。
- ハッカーを抜き、結束線の先端を処理する。

動きだけを見ると簡単そうですが、実際にやってみると難しいものです。
弱く締めれば鉄筋が動いてしまいます。反対に、締めすぎると結束線が切れてしまいます。
この加減が、なかなか難しい。
慣れた鉄筋工は、ハッカーを素早く回して、次々と鉄筋を結んでいきます。
小さな道具ほど、腕の違いが出る。
ハッカーを使いこなすには、それなりの経験が必要です。
結束線とは?焼きなました鉄線を使う
ハッカーと一緒に使うのが結束線です。
鉄筋同士を結び、組み立てた位置から動かないように固定するための細い針金です。
一般的には、焼きなまし鉄線(なまし鉄線)が使われます。
焼きなましは、鉄線を熱処理して、曲げたりねじったりしやすくする加工です。
硬い針金では作業しにくいため、結束には柔らかい鉄線が向いています。
結束線には、あらかじめ二つ折りにしたものや、表面処理の違うものなどがあります。
鉄筋の結束間隔に決まりはある?
鉄筋をどのくらいの間隔で結ぶのかも、気になるところです。
国土交通省の「土木工事共通仕様書」では、鉄筋の交点の要所を、直径0.8mm以上の焼きなまし鉄線またはクリップなどで結束し、鉄筋が動かないようにすることが示されています。
つまり、すべての交点を機械的に結べばよいという話ではありません。
コンクリートを打ち込むときにも鉄筋が動かず、設計された位置と間隔を保てることが重要です。
なお、実際の工事では、適用される仕様書や設計図書の指示に従います。
結束線の端がコンクリート表面側に突き出さないようにすることも大切です。
鉄筋結束機なら自動で結べる
ハッカーによる手作業のほかに、電動の鉄筋結束機もあります。鉄筋工に革命をもたらした便利な機械です。
結束機の先端を鉄筋の交点に当てて操作すると、専用の結束ワイヤを送り出して、自動で結束する仕組みです。
結束する場所が多い大きな現場では、作業の省力化に役立ちます。
ただし、機械本体が大きく、電源やバッテリー、専用ワイヤも必要です。
小規模な工事であれば、ハッカーのほうが取り回しがよく、扱いやすい場合があります。
私としては、規模や作業場所に合わせて使い分けるのがよいと思います。
墓地のL型擁壁で鉄筋工の仕事を見た
ここからは、私が担当した墓地の造成工事を紹介します。
施工したのは、現場打ちコンクリートのL型擁壁です。
L型擁壁は、断面がアルファベットの「L」のような形をした、土を支えるためのコンクリート構造物です。
土の重さや圧力を受けるため、内部には設計に応じた鉄筋を組み込みます。
実際の鉄筋工の配筋作業

写真は、墓地の現場打ちL型擁壁の配筋をしているところです。
鉄筋を設計された位置に並べ、交点を結束線で縛って組み立てていきます。
長い鉄筋を扱うため、材料を運んだり配置したりするだけでも大変です。
太くて重い鉄筋は、2人1組で取り扱います。
鉄筋工の仕事は、ハッカーを回すだけではありません。
鉄筋の位置を確認し、重い材料を運び、姿勢を変えながら結束する。腰や腕にも負担のかかる仕事です。
約4tのD13を朝8時から午後3時までに組み上げた
この現場では、約4tものD13鉄筋を使いました。
作業を始めたのは朝8時ごろ。
それが午後3時ごろには、配筋を終えてしまいました。
専門の鉄筋工による作業です。仕事を見ていると、頭で考えるよりも体が動いている感じで、迷いがありません。
それでも、この量の鉄筋が次々と組み上がっていくのを見ると、プロの仕事の速さがよくわかります。
体力だけでは、こうはいきません。
鉄筋を扱う段取りと、ハッカーを回す手際。熟練した職人ならではの仕事です。
鉄筋工がL型擁壁を配筋する動画
実際の配筋の様子を動画に残しています。
鉄筋工の動きや、結束作業の手際を見ていただくと、文章だけでは伝わりにくい仕事の様子がわかります。
配筋が終わったら、コンクリートを打ち込む前に確認
鉄筋を組み終えたら、そのままコンクリートを流せばよいわけではありません。
鉄筋の径、間隔、継手、位置、かぶり厚さなどを確認します。
特に、かぶり厚さは重要です。
かぶり厚さとは、鉄筋の表面からコンクリートの表面までの最短距離のこと。
鉄筋をコンクリートで適切に覆うことは、鉄筋の腐食を防ぎ、構造物の耐久性を確保するうえで大切です。
そのために、鉄筋を所定の位置に保持するスペーサーを使います。
あわせて読みたい:鉄筋スペーサーの種類と使い方|サイコロ・ドーナツの違いと設置個数
また、鉄筋がさびているからといって、すぐに不良施工と決まるわけではありません。
さびの状態と、鉄筋・コンクリートの品質への影響を区別して考える必要があります。
鉄筋のさびについては、別の記事と動画でも説明しています。
あわせて読みたい:基礎の鉄筋のサビは施工不良?大丈夫なサビと、本当に見るべき「かぶり厚」
鉄筋の切断と曲げ加工に使う3つの道具
鉄筋工の仕事には、結束だけでなく、鉄筋を切ったり曲げたりする加工もあります。
一般的には、加工図に合わせて工場で鉄筋を加工し、現場へ運び込みます。
ただし、小規模な工事や現場での調整が必要な場合には、その場で加工することもあります。
大型の鉄筋切断機・曲げ機
鉄筋の量が多い場合や、太い鉄筋を扱う場合には、大型の切断機や曲げ加工機を使います。
鉄筋を図面の寸法に合わせて切断し、所定の形に曲げていきます。
異形棒鋼のJIS G 3112には、D10、D13、D16からD38、D41、D51など、さまざまな呼び名があります。
D38なら公称直径は約38.1mmです。
こうした太い鉄筋は、手作業で簡単に加工できるものではありません。
加工する鉄筋の径や強度に対応した機械を使う必要があります。
工場で寸法と形をそろえておけば、現場では組み立てに集中できます。
ベンダー付き鉄筋カッター:切断と曲げを1台で
小規模な工事で便利なのが、手動式のベンダー付き鉄筋カッターです。
「ベンダー」とは、鉄筋を曲げるための道具のこと。
カッターとベンダーが一体になったものなら、1台で鉄筋の切断と曲げ加工ができます。
製品によって対応する径は違いますが、D13まで切断・曲げができる手動式のものがあります。
お墓の基礎工事などで使うD13程度の鉄筋なら、工場で加工して運ぶより、現場で必要な寸法に合わせて加工したほうが早い場合もあります。
ただし、1人で鉄筋を支えながら切断や曲げ加工をするのは、なかなかせわしないものです。
基本は2人1組です。正直、加工する本数が多いと勘弁してくれと思います。

電動鉄筋カッター:切断を楽にする道具
鉄筋を何本も切断するときに便利なのが、電動鉄筋カッターです。
電動や充電式の油圧カッターなら、手動のレバーを何度も動かさなくても鉄筋を切断できます。
コードレスのものも普及していて、手で持って切れるので、すでに組んだ鉄筋を途中で切るなど、自由度の高い使い方ができます。製品によっては、D16まで切断できます。
ただし、ここで紹介している電動鉄筋カッターは、鉄筋を切るための道具です。
曲げ加工はできません。
切断と曲げの両方を行いたい場合には、別にベンダーが必要になります。
また、切断能力は製品と鉄筋の材質によって異なるので、使用前に仕様を確かめることが大切です。
鉄筋加工の道具を比較
| 道具 | 主な用途 | 特徴 |
| 大型鉄筋切断機 | 切断 | 大量の鉄筋や太い鉄筋の加工に使う |
| 大型鉄筋曲げ機 | 曲げ | 寸法や角度をそろえて加工する |
| 手動ベンダー付きカッター | 切断・曲げ | D13程度の現場加工に便利 |
| 電動鉄筋カッター | 切断 | 切断作業の負担を減らせる |
| ハッカー | 結束 | 小規模な現場でも取り回しがよい |
| 鉄筋結束機 | 結束 | 結束箇所が多い現場で省力化できる |
大切なのは、どの道具が一番優れているかではありません。
加工する鉄筋の太さ、本数、現場の広さ、作業人数によって、適した道具は変わります。
お墓の基礎工事でも鉄筋の組み方が大切
鉄筋工の技術は、大型の擁壁や建物だけに必要なものではありません。
お墓の基礎工事でも、鉄筋を適切に組むことが重要です。
お墓の基礎なら、D13の鉄筋を一定の間隔に配置する工事もあります。
しかし、鉄筋が入っているというだけでは、その基礎の品質は判断できません。
私が確認したいのは、鉄筋の径や間隔だけでなく、継手の長さ、かぶり厚さ、スペーサーの配置などです。
鉄筋の交点を結束しても、鉄筋全体の位置がずれていたら意味がありません。
また、鉄筋を動かないようにするため、安易に交点を溶接するのも避けるべきです。結束線による固定と、設計された溶接継手は別のものです。
あわせて読みたい:鉄筋の溶接はダメ?頑丈そうに見えて強度が落ちる理由と、溶接してよい場合
お墓の基礎工事について、砕石の敷き均しから配筋、生コンの打設までの流れをまとめた記事もあります。
あわせて読みたい:お墓の基礎工事の流れと価格のポイント|地盤から養生まで
鉄筋の組み立て以外にも、現場打ちコンクリート工事には多くの仕事があります。
階段を現場打ちでつくった工事では、稲妻筋と呼ばれる鉄筋の加工や、階段の型枠づくりを紹介しています。
あわせて読みたい:現場打ちコンクリートとは?階段ができるまでを施工写真で解説
鉄筋工とハッカーについてよくある質問
Q.鉄筋工と鉄骨工は何が違う?
鉄筋工は、主にコンクリートの内部に入る鉄筋を加工・組み立てる職人です。
一方、鉄骨工は建物の柱や梁などに使う鉄骨を扱います。
どちらも建物を支える大切な仕事ですが、扱う材料や施工方法が違います。
Q.ハッカーは初心者でも使える?
使うこと自体はできますが、結束線を適切な強さで素早く締めるには練習が必要です。
強く回せばよいというものではありません。結束線を切らずに鉄筋を固定する加減が大切です。
Q.結束線は鉄筋の強度を高めるもの?
結束線の主な役目は、鉄筋を所定の位置に固定することです。
鉄筋コンクリートの構造的な強度は、設計された鉄筋とコンクリートが一体となって力を負担することで得られます。
結束線そのもので、構造物の強度を高めるわけではありません。
Q.鉄筋はすべての交点を結束する必要がある?
一律にすべての交点を結束するというわけではありません。
国土交通省の土木工事共通仕様書では、交点の要所を結束し、鉄筋が動かないよう堅固に組み立てることが求められています。
実際には、設計図書と工事に適用する仕様書に従って施工します。
Q.D13の鉄筋は普通の鉄筋カッターで切れる?
D13に対応した鉄筋カッターなら切断できます。
手動式のベンダー付きカッターにも、D13まで対応する製品があります。
ただし、鉄筋の鋼種や工具の切断能力を確認して使用してください。
この記事のまとめ
鉄筋工は、鉄筋を加工し、コンクリートの内部に入る骨組みをつくる専門の職人です。
鉄筋を固定するハッカーと結束線、切断や曲げ加工を行うカッターとベンダー。どれも、鉄筋工の仕事を支える道具です。
今回紹介した墓地のL型擁壁工事では、約4tのD13鉄筋を、朝8時から午後3時ごろまでに組み上げました。
鉄筋の量もさることながら、それを効率よく組み立てていく職人の手際が印象に残る工事でした。
元石屋のひとこと
りょういちハッカーをクルクルと回して、次々と鉄筋を結んでいく姿は見事です。約4tの鉄筋を短時間で組み上げる。これぞプロの仕事ですね。
あわせて読みたい:コンクリートの爆裂とは?中性化の原因とお墓の基礎を長持ちさせる方法
あわせて読みたい:鉄筋加工とは?切断・曲げの流れと継手長さ・かぶり厚さ
この記事の根拠
- 国土交通省「土木工事共通仕様書」第1編第3章第7節 鉄筋工(鉄筋の配筋、結束、かぶり厚さ、スペーサーについて。)
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」第5章 鉄筋工事(鉄筋の加工、組立て、配筋検査の基本要求について。)
- 日本製鉄「鉄筋コンクリート用棒鋼(JIS G 3112)」製品資料(異形棒鋼の公称直径、ふし、単位質量など。)
- 厚生労働省 建設労働者育成支援事業「鉄筋工:結束」(ハッカーを使った結束作業と職人の技術について。)
- 株式会社IKK「手動式ベンダーカッター DBC-13HP」(D6~D13の切断・曲げ加工能力について。)
- 株式会社マキタ「充電式鉄筋カッタ SC162DRG」取扱説明書(D16までの鉄筋切断能力について。)
- 株式会社マキタ「充電式鉄筋結束機 TR001G」製品情報(自動結束機の仕組みと対応する鉄筋径について。)





コメント
コメント一覧 (11件)
10㎡にも満たない墓地ばかりなので、常にベンダーで手作業です。。。
(ベンダーという名前をこの記事で知りましたw)
本職さんは早いですね~。
どうしても本職ではないので遅くなってしまいます(笑)
お墓の基礎工事だと、現場で寸法図って切った方が早いですよね。
動画を見るとわかりますが、本職は、ハッカーをクルクル回した後に、最後逆回転させます。
堅く縛れるのですが、この辺がプロの技ですね。
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