こんにちは、1級土木施工管理技士のりょういちです。お墓の基礎工事などで、鉄筋が溶接してあるのを、たまに見かけます。
鉄筋を組み立てるための溶接(点付け)は、基本的にやらないほうがよいです。溶接したまわりが、硬くてもろくなりやすいためです。
鉄筋の交点は、焼なまし鉄線(結束線)で緊結するのが基本です。
溶接してよい場合もあります。設計で決められ、施工方法と品質が確認された溶接継手や、工場で管理された溶接は別です。

鉄筋の溶接は、なぜ頑丈そうに見えるのか
鉄筋を溶接すると、ガチッと動かなくなります。施工も楽です。
ベース配筋なら、生コンを打つ作業中に、鉄筋が動きにくくて安定します。
ダブル配筋や、立ち上がりのある構造物ほど、鉄筋を固定するのは難しくなります。昔の職人さんは、溶接で固定してしまうことがありました。
一見、溶接したほうが、頑丈で良さそうに見えます。ただ、鉄筋を組み立てるための溶接は、基本的にしないほうがよいのです。
なぜ鉄筋の点付け溶接がいけないのか
鉄筋を点付け溶接すると、その部分が局所的に高温になり、そのあと冷えます。溶接の条件によっては、熱の影響を受けた鉄筋の材質が変わり、硬くてもろくなったり、割れたりする危険があります。
溶接情報センターのQ&Aには、仮付け溶接をすると、溶接金属に接した母材の熱影響部(溶接の熱を受けた、まわりの鉄筋)が硬化して、脆くなったり、割れたりする危険がある、と書かれています。
そのため、継手の一部にならない仮付け溶接は、特別な指示がなければ行ってはならない、とされています。
国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版の鉄筋工事には、「鉄筋には、点付け溶接を行わない。また、アークストライクを起こしてはならない。」と書かれています。
アークストライクとは、溶接の火花(アーク)を、うっかり鉄筋の表面に、一瞬だけ飛ばしてしまうことです。
溶接用語の規格(JIS Z 3001-4)では、母材の上に瞬間的にアークを飛ばし、すぐ切ったときにできる不完全な部分、とされています。
鉄骨工事の資料では、その部分が急に熱せられて、急に冷やされるため、硬くてもろい組織になり、割れの起点になり得る、と説明されています。点付け溶接と同じように、避けるべきものです。
公共建築工事向けの仕様書で、民間のお墓の工事に直接当てはまるものではありませんが、考え方の参考になります。
点付け溶接で、割れなどの欠陥ができると、引っ張る力を受けたとき、そこから切れるおそれがあります。組立のための溶接で、鉄筋本来の性能を損なうのは、本末転倒です。
地震などで鉄筋に大きな引張力が加わったとき、溶接の影響で鉄筋の強度や粘り強さが損なわれていると、その部分が損傷の起点になるおそれがあります。
りょういち溶接で動かなくなって、施工が楽になるのと、鉄筋が強くなるのは、別の話です。強度の履き違えは、いけません。
鉄筋の組立は、どうするのが正しいのか
鉄筋の交点は、焼なまし鉄線(結束線)で緊結します。


国土交通省の土木工事共通仕様書(案)では、交点の要所を、直径0.8mm以上の焼なまし鉄線、またはクリップ等で、鉄筋が動かないように緊結する、と決められています。
使った鉄線やクリップは、かぶりの中に残してはならない、ともあります。
重ね継手も、直径0.8mm以上の焼なまし鉄線で、数か所緊結します。継手の長さは、設計図書で決められた長さを確保します。
建築工事の仕様書でも、鉄筋の継手部分と交差部の要所を、径0.8mm以上の鉄線で結束する、とされています。公共工事の仕様書ですが、鉄筋の組立の基本として、お墓の基礎でも参考になります。
鉄筋を溶接してもいい場合はあるのか
鉄筋の溶接が、すべてだめ、というわけではありません。ここで区別したいのは、鉄筋を組み立てるための点付け溶接と、鉄筋同士を構造的につなぐ溶接継手です。目的も施工方法も違います。
同じ仕様書には、圧接継手、溶接継手、機械式継手を使う場合は、鉄筋の種類や直径、施工箇所に合った方法を選び、品質を確かめる資料をそろえる、と書かれています。設計図書にない継手は、施工前に、監督職員の承諾が必要です。
つまり、現場で思いつきでする点付けはだめで、設計で決められ、施工方法と品質が確認された溶接継手は、認められる、ということです。
国土交通省の公共建築工事標準仕様書では、溶接継手の作業は、試験で能力を確かめられた技能資格者が行います。施工が終わったら、すべての継手部を外観試験で確かめます。
もうひとつ、工場で製作される溶接金網や鉄筋格子(JIS G 3551)も別です。現場で、思いつきでする点付け溶接とは違います。
| 継手の種類 | どんな方法? |
| 重ね継手 | 鉄筋を必要な長さだけ重ね、焼なまし鉄線で数か所緊結する。力は、主にコンクリートとの付着で伝わる |
| ガス圧接継手 | 鉄筋の端部を加熱して、圧力を加えてつなぐ |
| 機械式継手 | カプラーやスリーブなどの部品で、機械的につなぐ |
| 溶接継手 | 鉄筋同士を溶接でつなぐ。設計で決められ、施工方法と品質の確認が必要。点付け溶接とは別物 |
現場で、溶接しようとした職人さんの話
現場で、ウェルダーを用意して、鉄筋を溶接しようとしていた職人さんがいました。注意したら、こう怒鳴られました。
「溶接した方が、がっちりくっついて、強いに決まってっぺ!!」(茨城弁)
気持ちは分かります。溶接すると、鉄筋がガチッと動かなくなります。「くっついた=強い」と感じるのは、自然なことです。
ただ、動かなくなることと、鉄筋が強くなることは、別の話です。鉄筋は、コンクリートの中で、引っ張る力を受け持つ材料です。溶接の熱で、その鉄筋の性質が変わると、役目を十分に果たせなくなるおそれがあります。
「今まで大丈夫だった」という声もあります。でも、溶接した部分に問題があるかどうかは、見た目では分かりません。
プライドも傷つくので、注意するのは難しいです。イメージで凝り固まっていて、説明しても、納得してもらえないことも多いです。
だから、現場では、個人の感覚ではなく、基準に沿って判断できる人が必要です。それが、正確な知識を持った、監督の仕事だと思います。
お墓の基礎でも、考え方は同じです
お墓の基礎に鉄筋を入れるときも、考え方は同じです。鉄筋は、点付けで固定せずに、焼なまし鉄線で緊結します。継手は、定められた長さを確保します。これが基本です。
公共工事の仕様書が、そのまま適用されるわけではありません。ただ、勘や経験、思い込みに頼らず、基準に沿って施工するのが、結局いちばん確実です。
よくある質問
- 鉄筋の点付け溶接は、絶対にだめですか?
-
継手の一部にならない仮付け溶接は、特別な指示がなければ行ってはならない、とされています。設計や仕様で認められた溶接継手は別です。
- 鉄筋を結束するには、どんな線を使いますか?
-
国土交通省の土木工事共通仕様書(案)では、直径0.8mm以上の焼なまし鉄線、またはクリップ等で緊結する、と決められています。
- 鉄筋の継手には、どんな種類がありますか?
-
共通仕様書の継手の章には、重ね継手、ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手が出てきます。どれを使うかは、設計図書に従います。
- 溶接された鉄筋を見つけたら、どうすればいいですか?
-
まず、施工した会社や現場の監督に、その溶接の目的と施工方法を確認してください。設計で認められた工法か、適切に施工されたものかを確かめることが大切です。
- 機械式継手とは何ですか?
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鉄筋の端部に、カプラーやスリーブなどの部品を取り付けて、機械的につなぐ継手です。重ね継手、ガス圧接継手、溶接継手とは別の継手です。
鉄筋の結束に使う道具
鉄筋の結束には、焼なまし鉄線(結束線)と、結束用の工具のハッカーを使います。結束線は、仕様書にある直径0.8mm以上のものを選びます。
どちらも、商品の検索結果へのリンクです。
あわせて読みたい:鉄筋工とは?ハッカーと結束線で鉄筋を組む仕事と道具
この記事の根拠
私の経験:1級土木施工管理技士としての、現場で鉄筋の溶接を注意した経験。
溶接の専門資料:溶接情報センター「鉄筋をアーク溶接する場合の溶接継手の種類・開先形状および施工上の留意点」(Q&A)(仮付け溶接と熱影響部の硬化)。
アークストライク:日本建設業連合会「鉄骨工事Q&A」(アークストライクの定義と影響。鉄骨工事の資料)。
建築工事の仕様書:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」令和7年版(5章鉄筋工事:点付け溶接を行わない、鉄筋の結束、溶接継手の技能資格者と試験)。
土木工事の仕様書:国土交通省「土木工事共通仕様書(案)」令和8年3月、1-3-7 鉄筋工(組立て、継手、ガス圧接)。








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