お墓の基礎工事などで、鉄筋を溶接してあるのをたまに見かけます。
一見、溶接をした方が頑丈で良さそうに見えますが、鉄筋コンクリート構造物に用いる鉄筋の溶接は基本的にやらない方が良いという話です。
目次
鉄筋の溶接はご法度です。
鉄筋を溶接してしまうと、ガチッと動かなくなるし施工も楽だったりします。
ベース配筋だったりすると、生コンを打つ際に上に載っても頑丈で安定します。
ダブル配筋や立ち上がりのある構造物になるほど固定するのが難しく、昔の職人さんなんかは、溶接してしまったりするのですが、基本的にダメです。
溶接をすると、点付けされた部分は急激に熱せられ、急激に冷却します。その為に、材質が変わり強度が低下します。
引張試験をすると点付けした部分で切断してしまいます。
これでは、引張強度を上げる為にわざわざ鉄筋を配置する意味がなくなります。
鉄筋の継手は定められた継手長さを確保し、焼きなまし鉄線にて緊結する。これが鉄則です。
現場でウェルダーを用意して鉄筋を溶接しようとしていた職人に注意したら、
『溶接した方が、がっちりくっついて強いに決まってっぺ!!』(茨城弁)
と怒鳴られました。
プライドも傷つくだろうし、注意するのも難しいんですけどね。イメージで凝り固まっているので、説明しても納得してくれない場合も多いです。
だから、監督業務ができるような正確な知識を持つ専門家が必要なのでしょうね。
なぜ、鉄筋を溶接することがいけないのか。
阪神淡路大震災をを契機として、建築基準法が改正になり、基礎に応じた地耐力が求めれれるようになり、地盤調査が義務化されました。また、偏心を考慮して耐力壁の配置にバランス計算が必要となりました。
これは、石材店には直接関係ないかのように思えますが、墓所においても重心のバランスを取ることも考慮していかなければならないと考えます。
また、コンクリート工事の適正化・耐震性のある基礎の設計など、今日の基礎工事の規範となる法律が施行されました。
鉄筋の溶接が問題視されるようになったのも阪神淡路大震災が契機です。
震災において溶接時の加熱および鉄筋結合部の断面欠損(溶接熱溶解)のある鉄筋コンクリート構造物が多く破壊され、大きな問題となりました。
溶接をすると、点付けされた部分は急激に熱せられ、また急激に冷却します。その為に、溶接した部分の材質が変わり強度が低下します。
地震などで、急激な力が加わるとその弱い部分に力が集中してコンクリートが破損します。だから鉄筋の溶接は御法度なんです。(圧着等の条件の整った溶接は除く)
ガス溶接って便利なんですね。バチバチバチって付ければ直ぐに強固にくっつきますから。動きません。固定するのに便利です。
ただそれは施工上に便利なだけであって、実際の鉄の強度は落ちているんです。強度の履き違えはいけません。
実際に震災時にはその弱い部分から破損をするという結果を招いています。
感や経験や思い込みに頼らず、震災を経て専門家が築きあげてできた規範に則ってやるのがベターでしょう。
鉄筋を溶接してもオッケーな場合がある?
だけど、実は鉄筋を溶接してもいい場合があるのをご存じでしょうか?
それがちゃんとJISで証明を取る場合です。
溶接した状態の鉄筋をJIS規格で証明を取ることができるのです。
これはコンクリート2次製品用の鉄筋を加工するような会社で可能です。
専用のソフトがあって、溶接をしてもちゃんと強度が確保できることを科学的な根拠に基づいて証明できます。
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