お墓を建てるのは当たり前。
そんな時代は、終わりを迎えていると感じます。
年に一度づつ東京と大阪で行われるエンディング産業展、終活・葬儀・埋葬・
地方と都市部、大家族と核家族、子供のいるなしによって捉え方は違いますが、従来のお墓に関する考え方は大きく変わってきています。
私は、石材店に勤めていて墓石業界の立場からお墓ばなれには危機感を抱いています。
ただ、一方で、諸行無常(しょぎょうむじょう)の世の中でいつまでも同じ状態なわけもなく、自然な流れでもあると捉えています。
さて、その中でただ手をこまねいていればいいというわけではありません。
だって、お墓にも魅力が沢山あるからです。
価値観の多様化が進み埋葬方法も多様化するのなら、その中で選んでもらえるように努力をすればいいわけです。
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目次
お墓ばなれなんて生易しい国産墓石ばなれ
私は、茨城県桜川市にある石材産地の老舗石材店に勤めています。
昔ながらに伝統的な技法で石材製品をつくりお墓も職人が一生懸命につくっています。
桜川市(旧真壁町・大和村・岩瀬町)は、全国でも有数の石材産地で、全国にお墓を提供してきました。
中国産墓石が輸入されるようになって風向きが変わり、日本でつくられたお墓は高額なためにどんどん売れなくなりました。
石材加工屋さんがドンドンつぶれ、または中国産墓石を扱う問屋に変わっていきました。
今は、お墓ばなれで業界全体が危機感を持ち始めましたが、国産墓石ばなれはとっくの昔に始まっていたのです。
いや「ばなれ」なんて生易しい言葉ではありません。
国産墓石崩壊と言ったほうが正しいかもしれません。
現在流通している墓石の8割が中国産墓石といわれています。
かつて国産墓石でまかなっていたシェアは急激に奪われました。
それでも国産墓石を売らないとならない環境
私は、国産墓石を加工する会社に勤めました。
入社した頃には、既に中国産墓石が多く輸入されるようになっていました。
その中でも会社の方針として、国産墓石を続けることを使命としていたので、10年前の30才の頃の私は相当に苦労しました。
まず売れません。
どうやって売ったら良いのか見当もつきませんでした。
本気で安くて売れそうな中国産墓石を売りたいと思ったぐらいです。
ブログを始めてみて、国産墓石の良さを伝えようと、様々な工夫をしてみました。
墓石市場に占める国産墓石の割合は2割しかありませんが、その中でも何とか仕事を取ることを考えたのです。
その中で学んだのは、国産墓石の良さが伝わる人には伝わる。
きちんと魅力を説明すれば価値を感じて購入してくださる方がいらっしゃるということです。
そういった視点でお墓ばなれを考えると、我々石材店にはまだまだできることがあると感じます。
お墓ばなれを「けしからん!」と言っても何も始まらない
さて、今のお墓ばなれの状況を見てみましょう。
お墓のライバルが沢山でてきています。
永代供養墓・合葬墓・樹木層・散骨・手元供養・宇宙葬etc
「けしからん!由々しき状況だ!」
と墓石業界の我々が声を荒げても消費者には届きません。
かえって既得権益を守ろうとする悪いイメージを持たれてしまいます。
そうではなくて、お墓には、魅力が沢山あるのです。
魅力を伝えてライバルの中で選んでもらえる努力をしていかなければなりません。
とてもじゃないけど、胡坐(あぐら)をかいていられるような状況じゃないのです。
石の重厚さ、石は古今東西、魂が込められる素材として特別な存在として扱われていきました。
古事記にも出てくる千引岩もそうですよね。
職人さんが伝統的な技法を凝らすのも見応えがあります。
そして、やっぱりお祈りを捧げる場所としてのお墓は、他の埋葬方法と比較してもとっても秀逸なのです。
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お墓のモノ消費とコト消費
最近言われることが多くなってきたモノ消費とコト消費。
生活者にお墓に目を向けていただくヒントは、どうやらここにありそうです。
「時代はモノ消費からコト消費へ」
そんな言葉をニュースや新聞でも多く見かけるようになりました。
商品の所有に価値を見出す消費傾向を「モノ消費」、商品やサービスを購入したことで得られる体験に価値を見出す消費傾向を「コト消費」といいます。参照元:https://ferret-plus.com/6452
そもそも生活者がお墓を購入する動機は何なのでしょう?
家族が亡くなりお骨を収める場所が必要になったからお墓を購入するケースが多いです。
モノ消費
読み方:モノしょうひ
商品の機能的価値に焦点を当て、製品やサービスを物的に所有することに意味があるとする消費の仕方。もっぱら、商品によって得られる経験を価値とする「コト消費」と対比して用いられる。参照元:https://www.weblio.jp/content/%E3%83%A2%E3%83%8E%E6%B6%88%E8%B2%BB
お骨を収める場所としてのお墓、これって思いっきり機能的価値ですよね。
つまりモノ消費というわけです。
ちなみに機能面で言えば、優れた競合の埋葬方法が他にも沢山あります。
安くお骨を収めることができる合葬墓は、費用を安く抑えたい人には合理的です。
散骨は、そもそもお骨を海や山に撒いてしまうので、管理する必要すらありません。
また、お墓を新聞折込チラシで、激安特価!
なんて販売してしまうのも考えものです。
これは、お墓をモノとして扱っている最たるものであるように感じます。
お墓を軽く扱っているんです。
少し厳しい話になってしまいますが、お墓ばなれは業界が自ら招いた側面もあるのではないでしょうか?
お墓のコト消費って何?
それでは、お墓のコト消費って何なのでしょうか?
お墓によって得られる体験。
つまり、お墓参りをするコトです。
だから、我々業界人に求められているのは、お墓参りの良さを伝えることなのだと思います。
「お墓参りをしよう!」じゃありません。
それでは、業界のゴリ押しになってしまいます。
そうではなくて「お墓参りってめっちゃ楽しいよ♪」的な、思わずお墓参りに行きたくなるようなそんな仕掛けです。
現在のお墓ばなれどころじゃない、もっとずっと不利な国産墓石を扱ってきた経験から、お墓参りについてもっと良さを伝えていく活動をしていくべきだと感じています。
先日、私が企画・発行した「20年後の君につたえたいこと~ご先祖さまからの贈り物」は、お墓参りに価値を感じてもらうためにご先祖さまの大切さを知って欲しくてつくったものです。
これは一例ですが、個人的には、こういった活動を継続していくつもりです。
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まとめ
以上、私が墓石業界に従事してきて、そしてブログを書き続けてきて学んだ経験からの記事でした。
最近、墓石業界自体が、暗雲が立ち込めているというか何となく暗いような気がしています。
中には、そういうことに気が付いてないか無関心な石材店もいますが、相当感度が鈍っているので気を付けた方がいいと思います。
お墓をモノ消費からコト消費へ。
機能的なお墓のお骨を収めるモノとしての側面から、お墓参りをするコトへの意識を変えていくことが求められているのだと感じています。
そして、兆しとして、そういった活動をしているニュータイプの石屋さんも出始めています。
お墓の将来は暗いだけではなくて、新しい展開、明るい未来もあるのではないでしょうか?
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