福島県の阿武隈高地にある「滝根みかげ」の採石場は、自然豊かで、景色が最高にキレイ。
風車がクルクル回っていて、のんびりと時が流れる美しい場所でした。
滝根みかげの採石場で驚いたのは、道がきちんと整備されていること。
今回案内していただいた、採掘元である㈱イシフクの望月隆司副社長いわく、ポルシェで石切場まで登ってきた人もいるそうです。
なんでそこまで整備しているのかというと、滝根みかげの採石場は、テーマパーク化への取り組みを行っているんですね。
星空がキレイなので、夜の星空ツアーなんかも計画しているそうです。
ただ、滝根みかげは、東京電力福島第1原発から30キロ圏内ということもあり、東日本大震災の際には大きな影響を受けました。
緊急避難準備区域になり、採石場の操業を一時停止せざるを得なかった時もあります。
そんな部分にも触れつつ、滝根みかげの魅力に迫ってみたいと思います。
目次
滝根みかげってどんな石?
滝根みかげは、白と黒がハッキリした石目で、特に白い部分が丸くて、雷おこしの粒みたいに見えます。
また圧縮強度が目立って高いのが特徴です。
圧縮強度は、上からぐ~~~っと押しつぶした時にどれぐらいの強さで石にヒビが入るかを確かめる試験で測りますが、滝根みかげは粘り強いんですね。
なので艶のもちが良く、角もちも良いです。
参考に、比較として、中国産の花崗岩G623のデータを載せてみます。
滝根みかげ物性データ
- 吸水率:0.14%
- 圧縮強度:193.73N/m㎡
- 見かけ比重:2.66t/㎥
G623物性データ
- 吸水率:0.186%
- 圧縮強度:104.17N/m㎡
- 見掛け比重:2.645t/㎥
滝根みかげの弱点は大きな黒玉
石目もキレイで性質も良い滝根みかげですが、弱点があります。
大きな黒玉が出やすいんです。
それも、直系20cmぐらいは当たり前の大きな黒玉です。
あんまりにも黒玉が出ている石はパンダ石とも呼ぶようです。
このぐらいの黒玉がボツボツ出てしまうこともあります。
阿武隈山系の石は黒玉が多いそうですが、滝根は集中して大きく出ます。
茨城県産の真壁小目石も黒玉が出て悩みますが、スケールが違いますね。
原石を切ると中から黒玉が出てくるケースもあるので、尺(約30㎝)角以上のものを取ろうとすると4割ぐらい使用できる感覚だそうです。
8寸(約24cm)角で6割。うまく使うと7割いけるという人もいます。
見えない部分に黒玉を回して良いのであれば、歩留まりがずっと良くなりそうですね。
また、キズは目視で確認しやすいので、原石の段階で見分けることができます。
滝根みかげの等級について
滝根みかげは、石の等級分けをしっかりとしています。
原石の段階で、特級・1級・準1級・2級を分けます。
お墓の石塔は、特級を加工して作ります。
原石における特級の割合はだいたい10%。
その中でも黒玉が出ることがあるので、実際に使用できるのは4%~7%ということになります。
これは、どこの石山でも同じような悩みを抱えていますね。
自然からの賜りものを扱うので、1つとして同じものはありません。
その中で、用途に見合った原石を選別していくことになります。
だから石は面白いんです。
愛着も沸いてくるんですね。
欠点を含めた特徴も、その石の愛すべきところなのです。
滝根みかげ採石場の様子
滝根みかげの採石場は、観光バスで石切り場まで行けてしまうぐらい、道が整備されています。
そして、風光明媚な場所で、周囲の景色が素敵。
またくるくると回る風車がいい味を出していて、のどかな雰囲気になっています。
福島県で採掘される石は、標高の高いところが多いです。
浮金石や大倉みかげもそうなのですが、滝根みかげも標高が800mを超えます。
冬季は、氷点下20度になることもあり、極寒の地になります。
それでも採掘しているそうです。過酷な作業ですね。
軽油が凍ってしまうので、北海道仕様を購入するのだそうです。
滝根みかげの採掘場に行くまでの道。
生い茂る木々の隙間から木漏れ日が降り注いでいて幻想的ですらありました。
ここに来るまでもず~っと福島を走っていましたが、景色がいいんですよね。緑が沢山。目の保養。
雲がゆっくり流れて、風力発電の風車がくるくる回る。
ここだけ、時間の流れが違うようで、しばらくずっと眺めていたくなります。
ワイヤーソーで滝根みかげを切り出しています。
ほとんどがこのワイヤーソーで切削して、破砕帯(断層に沿って岩石が破壊された帯状の部分)の除去や、石が倒せない狭い場所では、黒色火薬で対応しています。
ちょっと見かけた原石、確かに大きな黒玉が出ている部分がありますね。
わかりますでしょうか?
これも味わいの1つなんですよね。滝根みかげの味。
同じ花崗岩でも石ごとに特徴があって面白いなぁと思うのです。
福島第1原発の影響とこれからのビジョン
阿武隈の山々が見渡せる美しい景色、この山の稜線の向こうに福島第1原発があります。
望月隆司副社長がおっしゃるには、東日本大震災での事故以来、生活が一変したそうです。
元々、滝根みかげを採掘している川内村周辺では、豊かな自然を求めて移住をしてくる人もいたそうです。
川に行けば、イワナがその辺りで捕まえた虫で簡単に釣れた。
山に入れば、ワラビやコシアブラも豊富だった。
自然の湧き水も美味しくて、最高の環境だった。
でも、そんな当たり前の生活が奪われてしまいました。
実は、震災があった2011年に滝根みかげの採石場をテーマパーク化する計画がありました。
その矢先に地震があり福島第1原発の事故があり、計画は頓挫したのです。
でも、まだ採掘元である㈱イシフクでは、テーマパーク化を諦めていません。
整備された道や石をふんだんに使用した芸術的なトイレなど、これからのことも見据えた試みをされています。
滝根みかげの採石場には、福島の復興への想いも込められているんですね。
まとめ
福島県双葉郡川内村の滝根みかげの採石場を見学してきました。
風光明媚で、ドラマがあって、なかなかこれだけ盛り沢山な石山もないな~と感じました。
ぜひ、夜の星空ツアーをやって欲しいなぁと、満天の星空を仰向けで眺めてみたいです。
あとは、パンダ(黒玉)の部分のうまい活かし方があったら面白そうですね。パンダ。
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