民俗学の父・柳田国男の著書『先祖の話』によると、人が亡くなると魂は三つの段階をたどるそうです。
この三つの段階を辿っていく過程が、個人的にとても日本人らしくて好きです。
魂って聴くと、「信じない」とか「存在するはずがない」と思われる方もいらっしゃると思いますが、いったんそのフィルターを外してください。
これから話していくのは、日本人が当たり前に受け入れてきた感覚であり、私たちの生活に今でも深く根付いている習慣です。
本日は、柳田国男の『先祖の話』を参考に、民俗学から見た日本人の霊魂観について紹介させていただきます。
目次
人が亡くなると魂は三つの段階をたどる~民俗学から見た日本人の霊魂観
死霊と荒魂(あらたま)
人が亡くなると魂は、不安定な「死霊」となって家の付近をさまようと信じられています。
時には生きている人に害をおよぼすこともあるので、荒々しい魂という意味の「荒魂」と呼ばれます。
荒魂を鎮める方法
死霊を鎮める方法は宗教により違いがあります。
仏教:追善供養
神道:鎮魂・慰霊祭
大切におまつりをしてもらうと、その家のわざわいを除き、幸福をもたらしてくれる除災招福の力があると信じられています。
「死霊」と聴いて個人的に連想してしまうのが、映画リングの貞子です。
呪いのビデオで、世間を恐怖に巻き込みましたが、貞子の場合は、「死霊」というよりもこの世に強い恨みを抱いて死んだ「怨霊」と言ったところでしょうか。
フィクションを混ぜると、おかしくなるのでこのぐらいで止めておきます(笑)
フィクションはあくまでフィクションですしね。
だけど生きている人に害を及ぼす死霊の感覚が、日本人に根強いのを感じます。
YouTubeでも心霊ものの動画がけっこうありますし。
祖霊と和魂(にぎたま)
そんな死霊も、追善供養を四十九日、百日目、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌と続けていく中で、年月とともに荒々しさが消えていきます。
安定して、やがてなごやかになり、和魂(にぎたま)と呼ばれる家の祖霊となります。
家族や子孫にわざわいや害をおよぼすこともなくなり、繁栄と恩恵をもたらすようになります。
最初は、荒れていた魂が、私たちの繰り返しの供養で穏やかになっていく。
そして、少しづつ神様に近づいていきます。
神霊と氏神
民俗信仰における魂の最終形態が氏神です。
人は、家族の供養をうけて33年経つと個性を持たない霊になると信じられてきました。(地域によって30年や50回忌のタイミングの場合も)
祖霊は、同じ地域の神様の仲間になるので「神霊」と呼ばれます。これが村の「氏神様」です。
氏神様は、地域の守り神であり、村全体の繁栄をもたらし、人々の願いをかなえてくださいます。
初詣で、神社にお参りをするのは、私たちのご先祖様に祈りを捧げる行為です。
そうすることで、私たちのルールであるご先祖様に感謝をし、力を借りて日々を生きています。
氏神様は、私たちのご先祖様だけでなく、地域一帯の有縁無縁の方々も含みます。
言い換えれば、日本人は日本に生まれ育ったすべての先人を大切に供養し続けてきたということになります。
世界的に見ても、このような宗教観をもった国は他にありません。
とても優しくて、懐が深い感覚を覚えるので、私は人が死ぬと氏神様になっていく感じがとても好きです。
人類皆兄弟とは言いますが、周りの人たちとのご縁を感じ、大切にしていく感覚。
現代日本においては、少し忘れられてきている感覚にも思えますが、だからこそ、今一度意識してみることが大切なのかもしれません。
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