日本最古の歴史書『古事記』。その中に、お墓の起源となる石が出てくることをご存知でしょうか?
こんにちは、おはかのなかのブログのりょういちです。私は元石屋で、1級お墓ディレクターです。
石は大昔からお墓として利用されてきました。石には、特別なパワーが秘められているのです。
その石とは、千引の岩(ちびきのいわ)。古事記で、イザナギが黄泉の国の入り口をふさいだ大岩で、その場所と伝わるのが、島根県松江市東出雲町揖屋の黄泉比良坂(よもつひらさか)です。
- 千引の岩は、古事記でイザナギが黄泉の国の入り口をふさいだ、千人で引くほどの大岩。
- 伝わる場所は、島根県松江市東出雲町揖屋の黄泉比良坂。今も本物の千引岩を見られます。
- 神話の時代から石には神秘的な力があるとされ、千引の岩はお墓の起源と言われています。

古事記には神秘的な魅力があり、多くの方が動画でアニメ化して説明してくれています。私が文章で書くよりも100倍理解しやすいので、ご紹介します。
『なんで、お墓は石なのかな~』なんて考えながら見ていただけると嬉しいです。
千引の岩(千引岩)とは?黄泉の国の入り口をふさいだ大岩
黄泉の国の入り口を塞ぎ、あの世とこの世とを隔てた大石が『千引岩』です。お墓の起源と言われている石ですね。
日本神話って、いろいろとファンキーなんですよね。お子様にそのまま見せたらいけない内容もあります。
ということで、まずはオブラートに包んだ内容で、わかりやすく古事記を説明してくれるアニメ動画を紹介します。
イザナギとイザナミの、黄泉の国の物語
古事記に登場するイザナギとイザナミは、日本の国土や多くの神様を生み出した夫婦の神様です。ところが、イザナミは火の神カグツチを生んだことで命を落とし、黄泉の国へ行ってしまいます。
ちなみに、イザナミが自分の命と引き換えに生んだカグツチを、イザナギが斬ってしまうのも、何とも言えない話です。吐しゃ物や糞、それこそいろんなところから神様が生まれるのが、日本人の精神性を表していると思います。
妻を忘れられないイザナギは、イザナミを連れ戻そうと黄泉の国へ向かいます。イザナミは、黄泉の国の神様と相談するあいだは「私を見ないで」とイザナギに約束させました。
しかし、イザナギは待ちきれず、櫛の歯に火をともして、イザナミの姿をのぞいてしまいます。そこで目にしたのは、変わり果てた妻の姿でした。
イザナギは必死に逃げ、黄泉比良坂のふもとにあった桃の実を投げつけて、なんとか追っ手を追い返しました。それでも最後には、イザナミ自身が追いかけてきます。
愛していたイザナミが蛆だらけになって、黄泉平坂を追いかけてくる様子が、けっこうホラーです。そこでイザナギが使ったのが、千引の岩です。
千引の岩は、千人で引くほど重い石
「千引(ちびき)」とは、千人で引かなければ動かないほど重いもの、という意味です。「千引岩」「千引石」「千曳岩」とも書き、古事記の話では、どれも同じ石を指しています。
坂の名前も、「黄泉比良坂」を「黄泉平坂」と書くことがあります。
イザナギは、この大岩で黄泉比良坂をふさぎ、石をはさんでイザナミと向かい合いました。
イザナミは「あなたの国の人を、一日に千人殺しましょう」と言い、イザナギは「それなら、一日に千五百の産屋を建てよう」と答えます。こうして二人は永遠に別れ、人の死と誕生が繰り返されるようになった、というお話です。
千引の岩には、神様の名前がついている
古事記では、この千引の石に「道反(ちがへし)の大神」「塞(さや)ります黄泉戸(よみど)の大神」という名前がついています。ただの大岩ではなく、神様としての名前まで与えられているんですね。
石があの世とこの世を隔て、その石そのものが神様になる。ここに、昔の日本人が石に感じていた特別な力が現れています。
千引の岩の場所は?島根県松江市の黄泉比良坂
古事記には、千引の岩が登場する物語の最後に、「その黄泉比良坂は、今、出雲の国の伊賦夜(いふや)坂という」という一文があります。
実際に本物の千引岩と黄泉比良坂が、今も島根県松江市東出雲町揖屋にあります。驚きですね。

観光庁の多言語解説文でも、千引の岩は今も黄泉比良坂で見られると紹介されています。
近くには揖夜神社がありますが、黄泉比良坂は神社の境内ではありません。同じ揖屋にある、神社から約1km離れた別の場所です。

私は2019年5月に、島根県に実際にある千曳岩を見に行きました。黄泉平坂もちゃんとあって、独特な雰囲気がありました。

何か底知れぬ力を感じると共に、そこに立っていることに感動を覚えました。
この千引岩、レッカーで吊ればどかせそうですが、イザナミが出てきそうで怖い。
なぜお墓は石なの?千引の岩がお墓の起源と言われる理由
お墓には、当たり前のように石が利用されていますが、それには理由があります。神話の時代から、石には神秘的な力があるとされていました。
千引の岩は、あの世とこの世を隔てる石
千引の岩は、お墓のルーツです。イザナミが行った黄泉の国という洞窟は、当時の古墳の石室をイメージしていると言われています。
お墓は、この世とあの世の境界線です。イザナギが黄泉の国の入り口をふさいだ千引の岩も、あの世とこの世を分ける境に置かれています。
「お墓は江戸時代の檀家制度からできたもの」という意見もあります。でも、日本の埋葬のルーツを探っていくと、古事記に登場する、あの世とこの世を遮る千曳岩に行き着きます。
私のYouTubeチャンネルでも、「あの世はどこにある?」をアニメにしています。千引の岩の話とあわせて、見てみてください。
あわせて読みたい:あの世はどこにある?~民俗信仰における【3つのあの世】について解説
石は、魂が宿る器
私が考える、石がお墓に使われる理由はもう一つあります。それは、石には魂が宿るということです。
魂は、人間が人工的に作ったガラスや金属には宿りません。石は自然のものなので、加工しても魂が宿るのです。
樹木は生きていて、もともと魂を持っているので、ほかの魂は宿ることができません。
だから石なんです。魂が入る器なんです。
大昔、今のように情報が行き交っていない時代に、エジプトのピラミッドも、ヨーロッパも中国も日本も、石でお墓をつくってきました。そこに、人工物ではない石という素材の神秘性を垣間見ることができます。
あわせて読みたい:真壁小目石は日本の顔?石のプロがその深淵なる魅力をお伝えします
古事記には日本人の精神が現れている
千引の岩の話だけでも面白いのですが、古事記には、今の私たちにもつながる日本人の考え方がたくさん出てきます。
次は、淡路島のPR動画です。イザナギとイザナミが初めて生んだ島が、淡路島なんですね。
この動画には解説編もあります。こちらがとても良く出来ていて、意味が分かりにくい神話を詳しく説明しています。
黄泉平坂から逃げ帰ってきたイザナギは、体を清める『禊(みそぎ)』を行います。日本人が無類の風呂好きなのは、こういった精神性に基づくという解説が、とても腑に落ちます。
私が生粋の日本人である証拠でしょうか(笑)
この解説を見ると、古代の日本人が自然と調和し、時には猛威をふるう自然現象に神々の力を感じ、畏敬していたことがわかります。自然を支配しようとする西洋の価値観とは、かなり違っていますよね。
ご先祖様を崇拝する先祖供養も、こういった日本人の精神性から生まれたものなのです。
古事記のアニメ動画をパッと見ただけでは、よく理解できない部分もありますが、裏には深い意味が隠されているんですね。知ってみると、我々の精神に根付いている部分が多いことを感じます。
最後に、ファンキーだけど、的確でとてもわかりやすい古事記の動画を紹介します。
ちょっと、めちゃくちゃな部分もありますが、親しみやすいのは何ででしょうか? 日本神話って、不思議な魅力に溢れています。
このシリーズ、②と③もめちゃくちゃ面白いので、おすすめです。
あわせて読みたい:人が亡くなると魂は三つの段階をたどる~民俗学から見た日本人の霊魂観
よくある質問
- 千引の岩は、どこにありますか?
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島根県松江市東出雲町揖屋の黄泉比良坂にあります。古事記でイザナギが黄泉の国の入り口をふさいだ大岩が、ここにあると伝わっています。
- 黄泉比良坂は、神社の中にありますか?
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揖夜神社の境内ではありません。同じ揖屋にありますが、神社から約1km離れた別の場所です。
- 「千引」は、どう読み、どういう意味ですか?
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「ちびき」と読み、千人で引かなければ動かないほど重いもの、という意味です。千引の岩は「千曳岩」「千引石」とも書きます。
- 黄泉比良坂は、怖い場所ですか?
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古事記では黄泉の国の入り口として描かれていますが、今は神話ゆかりの場所として知られています。私が訪れたときは、独特な雰囲気がありました。
まとめ
日本神話『古事記』のアニメ動画をいくつか紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? これだけ見れば、けっこう深い部分まで理解できると思います。
千引の岩は、イザナギが黄泉の国の入り口をふさいだ大石です。あの世とこの世を隔てるこの石は、お墓の起源と言われています。
改めて思うのは、『古事記』から古代日本人の精神性を知ることができ、今の私たちでも共感できる部分、根付いている部分があるということです。
自然を畏敬して、八百万の神がいると感じたり、ご先祖様を大切に思ったり。どこまで行っても、根っこのところが日本人なんだなーと感じました。
この記事の根拠
- 私の経験(島根県の千曳岩・黄泉比良坂を見に行ったこと。)
- コトバンク「古事記」(712年(和銅5年)に太安万侶が元明天皇に献上したこと。)
- 観光庁 地域観光資源の多言語解説文データベース「黄泉比良坂」(千引の岩が、今も黄泉比良坂で見られること。)
- 國學院大學 古事記 神名データベース「道反之大神」(千引の石につけられた神様の名前(道反之大神、別名 塞坐黄泉戸大神)。)
- コトバンク「千引き」(精選版 日本国語大辞典)(「千引」の意味。)
元石屋のひとこと
りょういち千引の岩は、あの世とこの世を隔てる石で、お墓のルーツです。石は魂が入る器。だから、お墓は石なんです。










コメント
コメント一覧 (3件)
[…] 日本神話の古事記にお墓の起源! 『千引岩』についてわかりやすく説明 投稿日 2017年7月4日 22:27:12 (未分類) […]
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