茨城県人でも知らない方も多いですが、茨城県は全国でも有数の御影石の産地です。
県西から県央地区にかけては、関東平野につくば山系の山々が連なり遠くからでもよく見えます。
笠間市や桜川市の道路を走っていると採掘のために削られた山々が目立ちます。
そんな茨城県の石材産地には、3つの石材組合(真壁・羽黒・稲田)がありそれをまとめる形で、茨城県石材業協同組合連合会があります。
石材協同組合連合会において、石質比較実験として、海沿いや畑の中など、環境の違う8霊園を対象として計2473基のお墓の劣化度合の調査を行いました。
調べたお墓の建立後の経年数は、0~40年間に及び、石材石種は141種類になります。
かなり本格的な調査であり十分に統計的な裏付けのある内容にまとまっています。
この調査の目的は、御影石の劣化メカニズムを解明して、良質なお墓づくりに活かしたいということです。
せっかくお墓を建てたのはいいけど、数年でボロボロになってきたら嫌ですよね。
ところが現実的にそういったお墓があることが調査によりハッキリとデータとして指示されています。
大きな原因は3つあります。
- 石種の違い
- 環境の違い
- 構造の違い
御影石は、通常の風化であれば緩やかに変化をしていきます。
特に機械技術が発達して硬い御影石を加工できるようになったので、通常であれば急激な劣化は起きません。
ところが、悪い影響を受けると簡単に劣化が進むことがあります。
御影石の劣化メカニズムについて一つづつ説明していきます。
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目次
茨城県の霊園における石材劣化実態調査
茨城県内の8つの霊園を対象にして実際のお墓を調査して石材劣化実態調査を行いました。
調査対象となった霊園・墓地は、海岸部、平野部、山間部、都市部、内陸部と条件が異なるところを選んでいます。
調査の中で主な御影石の劣化の原因がハッキリとわかってきました。
①石種の違い
石材劣化分類
御影石の劣化の度合いを以下のように分類しました。
劣化度 1 | 色やけ・変色・色落ち・艶とび・水じみ・濡れ |
劣化度 2 | 光沢度低下・吸着物・エフロ・変色・鉄気 |
劣化度 3 | ざらつき・キズ・ピンホール・ポップアウト・穴あき |
劣化度 4 | 剥離 |
劣化度 5 | 割れ |
劣化なしと劣化度1を「健全」 とし、
この全体に対する割合を「健全度」と定義しています。
ちょっと難しい専門用語が並びますが、劣化度が上がるほど、御影石が重篤なダメージを受けていることになります。
それでは、実際の石種毎の劣化ダメージのデータを見ていきます。
主な石材での劣化状況・経年劣化(%は健全率を表す)
茨城県産墓石の健全率
稲田石 | 8年経過で劣化が始まり、30年位までは健全率60%前後で推移。 |
真壁小目石 | 20年80%以上。 |
茨城県産の石は経年でざらつきがでてきます。
真壁小目石が建立後20年で健全率80%以上、稲田石で30年で60%以上。
比較年数が違うのが気になるかもしれませんが、2473基のお墓の調査で、使用されている石種の割合が違いますし、それぞれに年代のバラツキがあります。
例えば、茨城県産の墓石は、古い年代では良く利用されていますが、ここ10年ぐらいは、中国産墓石が圧倒的に多くなっています。
なので、同じ条件での比較でないことはご了承ください。
中国産墓石の健全率
G603 | 8年まで65% 18~20年37% |
G614 | 3~5年60% 6~8年50% 9~11年40% 12~14年30% |
G623 | 3~5年65% 18年以上30% |
中国産墓石は、輸入されるよになってまだ日が浅いこともあり、20年を超えるとサンプルとなる墓石自体がほとんどありません。
茨城県産の墓石と比較すると年数が若い割には、健全率が低いことがわかるかと思います。
単純にこの結果からわかるのは、茨城県産の御影石は、中国産と比較して経年劣化に強いということです。
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茨城県産の御影石が風化に強い理由
御影石は鉱物の集合体
墓石は石を切って磨いたものですが、実際には小さな鉱物の集合体です。
マグマが冷えて固まったものであり、元々のマグマが含んでいた鉱物の割合によって、大きく御影石の性質が左右されます。
茨城県の石種は、石英の割合が高くなります。
石英は水晶と同じ鉱物で、誰が見てもキレイな結晶になっている石英を水晶と呼んでいます。
水晶は鉄よりも硬い鉱物であり、酸性雨などの科学的な劣化にも強いです。
また、日本の御影石全般に言えることですが、中国産御影石が1億万年を超える古い石がほとんどなのに対して、6千万年とか、半分程度の月日しか経っていないことも大きな理由になります。
茨城県産の御影石の多くが表面のザラツキ程度ですんでいるのはそのためです。
結晶がしっかりと結びついているので、剥離や割れなどの重篤な現象が起きにくくなります。
クンナムは劣化に強い!
劣化に強い石の代名詞としてよく紹介される黒御影石のクンナムですが、調査の結果でも最高クラスに強いことが証明されています。
斑レイ岩であるクンナムは、構成する鉱物構成からして全然違くてマグネシウムや鉄に富んでいます。吸水率も低くなります。
②環境による違い
霊園・墓地によって風化速度が違う!
『御影石は塩害に弱い!』というのは、石屋さんなら誰でも知っていることです。
御影石は鉄分を含みます。塩分が触れるとサビが出やすくなるんですね。
サビは劣化の大きな原因になり、ひどくなると、内部で膨張したサビが石の表面を弾き飛ばす「ポップアウト」という現象を引き起こします。
そういったこともあるので、沿岸部の墓地は御影石の劣化も早いだろうと予測していたのですが、調査の結果では、平野部の畑の中の墓地の方がよほど風化が早くなります。
土は有機物を含みバクテリアや様々な化学物質も含みます。
墓地によっては農薬が散布されていることもあるでしょう。
御影石には細孔という微細な穴が存在し水分を吸います。
土の中に含まれている様々な成分も一緒に吸収してしまい。
それが風化を早めるようです。
③構造による違い
どの霊園でも起こる恐ろしいエフロレッセンス
先の2つの劣化要因は、予算があったり、墓所が決まっていたり避けられない場合のある原因になります。
エフロレッセンスが原因のお墓の劣化は、建立して1年程度でも起こりますし、石肌が見るも無残にボロボロになるのです。
エフロレッセンスとは、セメントに含まれる塩化物が、空気と触れることにより結晶化して起こります。
それが、御影石の細孔の内部で結晶化してしまうと内部からの破壊を引き起こすことになります。
手で触れただけで、ポロポロと石肌が崩れていくお墓もありました。
これは、沿岸部、内陸部関係なく、発生する恐ろしい現象です。
皮肉なことに近代のお墓の構造が耐震性も考慮して頑丈になったことにも原因があります。
エフロレッセンスは、寒い地方ほど、起こりやすい現象です。
関東でも神奈川や東京よりもより寒い茨城や栃木で起こりやすいですし、東北に行くともっと深刻になります。
盆地で寒暖の差が激しい地域も要注意です。
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まとめ
お墓に利用される御影石の劣化メカニズムについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
原因は大きく3つあり対策法としては、それぞれ
- 石種の違い:劣化に強い御影石を選ぶ
- 環境の違い:お墓が土に触れる環境の墓地を避ける。沿岸部をなるべく避ける。
- 構造の違い:エフロレッセンスが御影石の内部で起こらないような対処を施す。
が考えられます。
御影石は天然のものであり、硬くて頑丈なようでいて、悪条件が揃うと簡単に劣化してしまいます。
石材協同組合連合会の石材劣化実態調査は『石材学』という本にまとめられています。
茨城県内の8つの霊園の調査結果だけでなく、風化を加速して石質の違いを調べたり、様々なデータが載っているので、ご興味のある方はぜひ、お問い合わせください。
1冊2000円になります。石屋さん向けです。
学術的なデータが多くて難解な内容ですが、石材に関する知識がギュッと詰まった内容になっています。
コメント
コメント一覧 (2件)
鉄道近くの墓地だと、レールからの鉄粉が飛んできて悲惨なサビ具合になってしまいますよね。
霊園全体が錆びてしまっている墓地を知っています・・・
米陀さん、コメントありがとうございます。
鉄粉の影響もありますよね。帯磁率の高い御影石だと磁力によって引き付けてしまいます。