墓石がボロボロになったり、表面から石の粒がポロポロ崩れたりする。そんな相談が増えています。
御影石は、普通の風化ではなかなか崩れません。100年ほど経って、表面にザラつきが出てくる程度の、のんびりした風化です。
ところが、エフロレッセンスが関わると、墓石が急速に劣化してしまうことがあります。
原因は石の性質だけではありません。近年のお墓の構造にも、大きな理由があります。
- 御影石の自然な風化は非常に遅く、通常は100年ほどで表面がザラつく程度。古い石塔には、わびさびと風格が生まれます。
- 墓石の表面に白い斑点が現れ、ポロポロ崩れる原因の一つがサブフロレッセンスです。石の内部で塩類が結晶化し、石を傷めます。
- 近年の頑丈で堅牢なつくりや、草対策の板石張りは、お墓の内部に入った水が悪さをする原因になります。一度劣化すると修復は難しく、予防が重要です。

墓石の風化は、普通なら100年でもわずか
御影石は年月とともに少しずつ風化する
御影石も自然の石ですから、いつかは風化して崩れていきます。
しかし、人間が生きる時間と比べれば、その速度はずいぶん遅いものです。
普通の風化であれば、100年ほど経って表面に少しザラつきが出てくる程度。墓石が短期間でボロボロに崩れるようなものではありません。
石は頑丈で、文字を刻んで長い年月にわたり保存できる、優れた記録媒体です。
だからこそ、お墓や記念碑として使われてきました。
古い墓石の風化には、わびさびと風格がある

茨城県産の稲田石は、古くから使われてきた歴史のある石です。100年ほど経過したお墓や建築物も残っています。
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長い年月を経た石塔には、新しいお墓とは違う美しさがあります。
少しずつ風化した石肌には、わびさびがあり、風格があります。
私は、これも石という素材の良さだと思います。
新しいときの美しさだけではなく、年月を重ねることで生まれる美しさがあるのです。
それでも、お墓をできるだけ長く、きれいな状態で保ちたいという方もいます。その方法は、次の記事で紹介しています。
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御影石はどの鉱物から風化するのか?
稲田石の白・黒・灰色の粒に注目

写真は、茨城県産の稲田石です。
よく見ると、白・黒・灰色の鉱物が組み合わさっていることがわかります。
御影石の代表である花崗岩は、主に石英・長石・黒雲母などの鉱物からできています。
これらの鉱物は、それぞれ風化のしやすさが違います。
稲田石の場合、最も早く劣化するのが黒い部分の黒雲母です。
黒雲母はサビてポップアウトを起こす
黒雲母は鉄などの金属成分を含んでいます。
そのため、酸化によってサビが生じ、周囲の石の表面を弾き飛ばすことがあります。
これを「ポップアウト」と呼びます。
石の表面に小さな穴ができたり、粒が欠けたりする現象です。
次に風化が進むのが、灰色の部分にある斜長石です。斜長石はカルシウムなどを含む長石の仲間で、比較的風化しやすい鉱物です。
しかし、その風化速度でさえ、以前勤めていた石材会社の研究では116年間で約1mmという数字でした。
石英が完全に溶けるまで3,400万年
同じ研究で示された鉱物の溶解にかかる年月を比べてみます。
| 鉱物 | 溶解・風化にかかる年月 |
| 黒雲母 | 最も早く劣化し、サビやポップアウトが起こる |
| 斜長石 | 約116年で1mmの風化 |
| 正長石(カリ長石) | 完全に溶解するまで約260万年 |
| 石英 | 完全に溶解するまで約3,400万年 |
※いずれも以前勤めていた石材会社の研究で扱われた数値です。すべての環境で同じ速度になるという意味ではありません。
石英が完全に溶けるまで3,400万年。正長石でも260万年です。
もはや、人間の時間の尺度では測れないほどの年月です。
普通の風化で御影石がそうそう崩れない理由が、ここにあります。
もちろん、石の種類や置かれた環境によって風化の進み方は変わります。それでも、短期間で墓石がボロボロになる現象を、普通の風化だけで説明することはできません。
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りょういち石は、長い年月をかけて少しずつ姿を変えます。その変化と、短期間でボロボロになる劣化は、分けて考える必要があります。
墓石がボロボロになる原因「エフロレッセンス」とは?
墓石の表面に現れる白い筋や粉


写真の黒い石に、白い筋が垂れています。
これは「エフロレッセンス」と呼ばれる現象です。日本語では「白華現象(はっかげんしょう)」といいます。
モルタルやコンクリートに含まれる成分が水に溶け出し、石の表面に移動して、白い結晶として現れます。
白い結晶には、炭酸カルシウムなどが含まれます。
黒い御影石では白い筋が特に目立ちます。
石の表面で結晶化して流れ落ちるだけなら、主に見た目の問題です。
しかし、同じような結晶化が石の内部で起こると、話はまったく変わります。
石の内部で起きるサブフロレッセンスが怖い
石の内部で塩類が結晶化する現象を「サブフロレッセンス」といいます。
水に溶けた成分が石の細かな隙間へ入り、内部で結晶化します。
その結晶が成長すると周囲に圧力がかかり、石の表面を押し出してしまいます。
その結果、表面が浮き上がったり、粒がポロポロと崩れたりします。
普通の風化のように、ゆっくり風格が増していく変化ではありません。
石そのものが急激に傷んでしまう、厄介な現象です。
表面で白くなるエフロレッセンスと、内部で石を破壊するサブフロレッセンス。この違いが大切です。
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墓石の白い斑点・白いポツポツは劣化のサイン?


写真の石の表面に、白いポツポツが現れています。
こうした白い斑点は、サブフロレッセンスによる劣化で見られる症状です。
この現象は、決して珍しいものではありません。
ただし、白い斑点があれば必ずサブフロレッセンスというわけではありません。石そのものの鉱物や、表面に付着した汚れとの区別が必要です。
注意したいのは、白い部分だけでなく、その周囲の石が浮いたり、細かく崩れたりしている場合です。
エフロレッセンスは昔のお墓にも見られますが、サブフロレッセンスによって石が内部から破壊される現象は、昔のお墓ではほとんど見られませんでした。
比較的新しいお墓で、こうした症状が起きることが問題なのです。
私は石材店からも、墓石がポロポロ崩れてしまうという相談を受けてきました。
以前勤めていた石材会社では、長年にわたって石の劣化メカニズムを研究してきました。その成果は大きな反響があり、石材の専門家である石材店からも評価をいただきました。
この研究で重要だったのは、石材そのものだけでなく、お墓の構造と水の関係です。
なぜ現代のお墓は急速に劣化しやすいのか?
頑丈なお墓と全面石張りが原因になる
ここが一番重要な話です。
昔と今では、お墓のつくり方が大きく変わっています。
もちろん、地域によってお墓の構造には違いがあります。
近年は、お墓を頑丈で堅牢につくるようになりました。
さらに、雑草が生えないように墓所の地面を板石で覆う施工も増えています。
一見すると、良いことばかりに思えます。
ところが、この構造が墓石を急速に劣化させる原因になるのです。
問題は、お墓の内部に入った水です。
水がモルタルやコンクリートの成分を溶かし、石の内部へ運びます。そこで結晶化が起こると、サブフロレッセンスによって墓石の表面が破壊されます。
つまり、頑丈につくったつもりのお墓が、かえって石を傷めてしまうことがあるのです。
昔のお墓には少なかった劣化が増えた理由
以前勤めていた石材会社では、こうした石の劣化メカニズムについて長年研究してきました。
その研究から、近年のお墓の構造とサブフロレッセンスの関係がはっきりとわかってきました。
昔のお墓と現代のお墓では、水の動き方が違います。
石の種類だけを考えていても、急激な劣化の原因はわかりません。
お墓の構造まで理解する必要があります。
実際には、この仕組みを知らないまま、エフロレッセンスが起こりやすいお墓を建てている墓石販売店が多くあります。
その理屈を理解していなければ、何度も同じような劣化を起こしやすいお墓をつくってしまいます。
結果として、お客様に大きな迷惑をかけてしまうのです。



頑丈なお墓が、必ずしも石にやさしいとは限りません。石の劣化を考えるうえで、内部に入った水の動きは重要です。
現代のお墓の構造について
お墓の構造については、動画も掲載しておきます。
あわせて読みたい:水を吸う石は劣化が早い?墓石の吸水率一覧と本当の原因
墓石がボロボロになったら研磨で直せる?
一度起きたサブフロレッセンスの修復は難しい
サブフロレッセンスによって墓石が崩れ始めてしまうと、事後対応は難しくなります。
以前、石材店からこんな相談を受けました。
「石の表面を研磨したらどうでしょうか?」
しかし、簡単な話ではありません。
墓石は重い石を組み合わせて建てられています。
一度組み立てた墓石を取り外し、工場などで研磨し直すには、大変な作業が必要です。
しかも、サブフロレッセンスは石の内部で起きる現象です。
表面を削ったところで、どこまで深く研磨すればよいのかわかりません。
仮に表面をきれいにできても、内部で同じ現象が続けば、再び劣化するおそれがあります。
研磨だけでは根本的な解決にならないのです。
あわせて読みたい:【プロ御用達】 石の補修&墓石クリーニング方法の勉強会まとめ
サブフロレッセンスが起きてしまったら
サブフロレッセンスは石の中で起きているので、直しようがありません。
年月がたって石に風格が出る「わびさび」とは、まったく別のものです。昔のお墓には、サブフロレッセンスは出ません。そもそも、昔のお墓はモルタルを使っていないからです。
白い斑点がサブフロレッセンスなのか、どこまで進んでいるのかは、見ただけでは分かりません。見た目が気になるなら、石屋さんやプロのお墓クリーニング屋さんに見てもらい、どうするかを判断してもらうのがいちばんです。
プロのお墓クリーニングについては、こちらの記事で紹介しています。
あわせて読みたい:お墓クリーニングの真実を語ります!プロと素人の道具や洗剤の違い【墓石掃除】
あわせて読みたい:お墓のプロとしてホームセンターカインズの【お墓のクリーニング】の監修をしました
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劣化を防ぐには、建てる前の対策が重要
原因は、お墓の中に入った水です。ですから予防の基本は、お墓の中に水をためないことです。
お墓の基礎は、水はけを考えてつくります。基礎のコンクリートに息抜きの穴をあけ、塩ビ管を通して、中に入った水が下へ抜けるようにするのです。
墓所の地面を板石で全部覆うなら、なおさら水の逃げ道が大切になります。お墓を建てる前に、石材店に「お墓の中に入った水は、どこから抜けますか」と聞いてみてください。すぐに答えられる石材店なら安心です。
あわせて読みたい:お墓の基礎工事の流れと価格のポイント|地盤から養生まで
私は、墓石販売店にも、この劣化メカニズムをきちんと理解してほしいと考えています。
お墓を建てたあとに取り返しのつかない劣化が起きれば、困るのはお客様です。
問題が起きてから修理を考えるより、建てる段階で劣化を防ぐことが重要です。
石材店の方も、一般のお客様も、お墓の劣化についての質問を受け付けています。
よくある質問
- 墓石の寿命は100年くらいですか?
-
100年で寿命を迎えるわけではありません。
御影石の普通の風化は非常に遅く、100年ほどでは表面が少しザラつく程度です。
石の種類や環境、お墓の構造によって違いはありますが、100年経ったからといって墓石がボロボロになるものではありません。
- 墓石に白い斑点があるのは、石が溶けているからですか?
-
白い斑点の原因は一つではありません。
サブフロレッセンスによって白い斑点が現れ、石の表面が崩れる場合があります。
ただし、白い斑点だけで原因を断定することはできません。
石の表面がポロポロ崩れている場合は、石材店に状態を確認してもらってください。
- 御影石は水に溶けるのですか?
-
御影石を構成する鉱物も、非常に長い年月をかけて風化したり、溶解したりします。
以前勤めていた石材会社の研究では、石英が完全に溶けるまで約3,400万年、正長石は約260万年という数字が示されています。
普通の風化と、塩類の結晶化による急激な劣化は別の現象です。
- 墓石の白い汚れとエフロレッセンスは同じですか?
-
白い汚れがすべてエフロレッセンスというわけではありません。
エフロレッセンスは、モルタルやコンクリートなどから水に溶け出した成分が、表面で白く結晶化する現象です。
石の内部で塩類が結晶化して表面を破壊するサブフロレッセンスとは、区別して考える必要があります。
- 崩れた墓石を磨き直せば元に戻りますか?
-
研磨だけで根本的に解決することはできません。
石の内部で劣化が起きている場合、どの深さまで削ればよいのかわからないためです。
組み立てた墓石を取り外して研磨する作業も大変です。
サブフロレッセンスは、起きてからの修復より、起こさないための予防が重要です。
まとめ|墓石の風化と急激な劣化は別のもの
御影石は、普通の風化ではそう簡単に崩れません。
100年ほど経って石肌が少しザラついてくる。そんなゆっくりした変化が、古い石塔にわびさびと風格を与えます。
一方、サブフロレッセンスによる急激な劣化は、まったく別の問題です。
モルタルやコンクリートから溶け出した成分が、石の内部で結晶化し、墓石の表面をボロボロにしてしまいます。
さらに、近年の頑丈なお墓や全面石張りが、内部に入った水の影響を大きくしていることもあります。
以前勤めていた石材会社で取り組んだ研究は、多くの石材店から評価をいただきました。
私が伝えたいのは、石の性質だけでなく、お墓の構造まで考えてほしいということです。
お墓は、長い年月にわたって残していくものです。
そのためにも、急激な劣化を起こさないことが何より大切です。
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元石屋のひとこと



古いお墓の風化には風格があります。でも、サブフロレッセンスによる崩壊は違います。せっかく建てたお墓を長く残すためにも、石だけでなく構造を知ってほしいのです。
この記事の根拠
- 以前勤めていた石材会社の石材劣化メカニズムに関する研究。御影石を構成する鉱物の風化速度、黒雲母のポップアウト、エフロレッセンスと墓石構造の関係についての資料。
- Getty Conservation Institute「Salt Research: Mechanisms of Salt Decay and Mitigation Methods」。水分と塩類が石材の内部で結晶化し、劣化を引き起こす仕組みに関する研究。
- The Concrete Society「Lime leaching」。コンクリート中のカルシウム成分の溶出と、炭酸カルシウムなどによる白華現象の説明。
- Getty Conservation Institute「Understanding Salt Crystallization and Decay」。石材内部の細かな空隙で起きる塩類の結晶化と劣化の研究。








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