私は稲田石の採掘元である石材店に勤めていて、毎日目にしています。
それだけに馴染みがあるし、愛情を持てる石種でもあるのですが、ちまたでは稲田石だけでなく、新稲田石・中国稲田石・本稲田石なる石の名前を散見するのです。
中国産の花崗岩で稲田石に石目が似ているものを「〇〇稲田石」と称してしまうんですね。
稲田石自体は、商標登録がしてありますが、頭に〇〇と付けられてしまえば、どうにもなりません。
それこそ遺憾の意(いかんのい)を示すしかできないです。
あげくの果てには、本当の茨城県笠間市稲田の石切山脈で採掘された稲田石を本稲田石と呼び始める始末です。
う~~~ん(汗)
目次
中国産の稲田石に良く似た花崗岩G655
中国稲田石・新稲田石と呼ばれる石種にはG623・G655がありますが、その中でもG655はパッと見た目は本当に稲田石に似ています。
G655の中に稲田石を置いてみました。
どうですか?
稲田石の方が白みが強いのはわかるかと思いますが、これを別々のところに置いたら区別をするのは難しいでしょう。
だから、G655は中国稲田や新稲田石などの名前を借りて市場に出回ったのです。
稲田石のブランド力を借りた形ですね。
明治神宮や日本橋、日本銀行、最高裁判所、実績を上げればキリがないブランド石である稲田石。
そのイメージを借りることができれば、とても売りやすいですよね。
でも、パッと見は同じでも石を構成している成分がかなり違うんです。
本当の稲田石とG655とでは、帯磁率が全然違う!
一般の方がお墓の購入を検討して墓石を見ても「どれもこれも同じような石じゃん!」となります。
確かにそうですよね。
中国産の稲田石に似た石と国産の稲田石で見た目で区別がつきにくいだったら偽物でも安い方がいいという話にもなります。
「国産墓石が欲しい!」
と希望されて石材店に来店されても石を見比べている内に違いが良くわからなくなるケースは多々あります。
たぶん、そこは石材店がキチンと説明をしていくべきところなのですが、多くの石材店が国産墓石に興味を失っているのが現状です。
だから、私は声を大きくして国産墓石の良さを伝えています。
日本人の石工さんがつくる国産墓石は、精度が良いと言われます。
例えば、墓石を据え付けていくのにすわりが良いなんて表現をします。
据付やすくて、工事の際にピタッピタッと納まっていくということですね。
・・・ちょっと話がそれました。
稲田石とG655帯磁率の差は100倍以上!
それ以外にも帯磁率が100倍以上も違います。
帯磁率というのは、どれだけ磁力を帯びているかの強さの比です。
100倍ってけっこうなインパクトですよね。
稲田石 帯磁率0.1
G655 帯磁率10.3
G655は、磁鉄鉱という磁石と同じ鉱物が多く含まれています。
だから磁力が強いんです。
同じように見える白系の御影石でもこんなに違う、不思議ですよね。
石の世界は奥深いんです。
ネオジム磁石で実験をしてみよう!
ネオジム磁石をつけると稲田石にはつきませんが、中国産のG655にはくっつきます。
それだけ磁力が違うということですね。
実際にネオジム磁石をお客さんの目の前でつけるとハッキリとしたリアクションをされる方が多いです。
ぜひ、皆さんもお試しください。
帯磁率が高いと何か悪いことがあるの?
磁鉄鉱の割合が多いことが、直接的に石に悪影響を及ぼすということではありません。
交通量が多い場所だったり、線路が近いと鉄粉を引き寄せてサビの原因になることは考えられますが、磁鉄鉱自体はサビにくい鉱物です。
ただ全くサビないわけではないので、油断禁物です。
御影石の劣化メカニズムは解明されておらず、酸性雨や農薬、ワックスなど何が影響してどんな影響が起こるのかわかっていないのです。
実際に稲田石と比較するとG655はサビが出ているものを多く見かけます。
二酸化ケイ素の割合が多い稲田石は、硬度も強度もG655よりも高いです。
二酸化ケイ素は安定した物質で酸性雨にも強いんです。
〇〇稲田石と呼ばれていても中身が違うんですよ~ということだけ覚えてください。
稲田石のブランド力は伊達ではありません。
まとめ
茨城県産の稲田石と〇〇稲田石との違いについて説明してきましたがいかがでしたでしょうか?
さまざまな実績のある稲田石は、イメージが良いので名前を借りられやすいんですね。
一周回って稲田石を本稲田石と呼ぶようになったのには笑うしかありません。
とにかく、見た目は似たように見えるかもしれないけど、中身はけっこう違うんだよということです。
それだけ覚えていてください。
そして誰かが「稲田石でも〇〇稲田石でも同じだよ!」と言っていたら「それは違うよ!」と教えてあげてください。
まず、そんなシチュエーションはないかと思いますが(笑)
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[…] 新稲田石・中国稲田石・本稲田石 この中で本物の稲田石はど~れだ? […]