お墓に利用される御影石。種類が豊富で彩りも様々で、選ぶのも楽しいです。
でも石種によっては、価格に差があり『何でこの石はこんなに高いの?』と思われるかもしれません。
例えば、石のダイヤモンドとも称される香川県産の庵治石。希少性が高く、石山で採掘される原石のうち、墓石に利用できる品質を有するのは全体の5%程度しかないそうです。
重くて硬い石を切り出すのは、とても大変な作業なのですが、そんな思いをしても5%程度しか利用できない。とても厳しいですよね。
ところが、なるべく多くの原石を製品にしたいために、石の表面にキズやムラを隠すための誤魔化しをして墓石にしてしまう場合もあります。
これは中国加工の墓石に顕著に見られることが多いですが、これでは安物買いの銭失いにもなりかねませんね。
目次
墓石に利用できる御影石の条件とは?
工業製品ではない御影石は、マグマが冷えて硬化(結晶化)したもので、一つとして同じものはない自然の造形物です。
その為に、石山で切り出してもお墓として利用できる原石の割合はかなり少なくなります。
墓石の用途の条件とは
- 石目の偏りがない(ながれ・黒玉・キズなど)
- 周囲の環境による影響を受けていない
- サビが出ない(酸化鉄や硫化系鉱物を含まない)
- 風化が進んでいない
- ダイナマイトの発破によるキズ(マイクロクラック)がない
自然のたまものである御影石は、これらの条件を完璧に満たすことはできないのですが、なるべく影響が少なく石目の均一な御影石を採用していくことになります。
これらの条件は、御影石の種類によって難易度が変わってきます。
例えば、茨城県産の稲田石は中目で目の細かい庵治石よりもずっと石目を揃えやすい特徴を持ちます。
しかし、硫化分を内包しやすくサビがブワッと広がることがあります。
①石目の偏りがない(ながれ・黒玉・キズなど)
御影石はマグマが冷えて固まったものです。マグマは周囲の鉱物や有機物も溶かし込んだドロドロの液体で、貝殻化石の入ったブルーパールのような石もあります。
マグマが含む様々な鉱物は均一でなく、偏りがあります。冷えて固まった際にその偏りが石目(石の模様)として表れてきます。
「ながれ」という、石肌に模様が表れることがあります。流れが特徴の石種もありますが、たいてい墓石に利用される御影石には、石目の均一さが求められます。
とはいっても、自然のたまものである御影石は、均一な石目が不可能なので、なるべく鉱物が均一で美しい部分を利用してお墓に利用しています。
マグマの中心部と外側とでは、冷えて固まる(結晶化する)速度に差があります。
急速に冷えた場合には、細かい結晶が数多くでき、ゆっくり冷えた場合には大きな結晶が数少なく育ちます。これも石目の違いとなって表れます。
微細なキズ(マイクロクラック)が発生することも
御影石は微細なキズがある場合があります。以下のような場合に発生します。
- マグマが冷えて固まる過程で結晶のつなぎ目に隙間ができる
- 数千万年単位の地殻の隆起活動で歪みができ発生
- ダイナマイトの発破により発生(⑤で説明します)
キズがあると、水を吸い留めやすく風化を早める原因になります。
②周囲の環境による影響を受けていない
マグマが冷えて固まるのには、周囲の環境が大きく作用します。
堆積岩があったり熱水の通り道だったり、接触する部分は、冷える速度にも差がでてきます。そのために墓石としての用途には向きません。
私の勤める会社の稲田石の広い採掘場の中でも、そういった影響を受けた石を見ることができて、パンダ模様の石もあるのですが、これはゼノリス(捕獲岩)と言って、元々あった硬質砂岩をマグマが飲みこんだものです。
地下を走る熱水には、マグマから水に特定の鉱物が溶け出し水晶などの宝石や鉄や銅などの鉱床を形成します。自然の神秘というか、面白いですよね。
でも、探すための人件費や経費の方が高くついて割りにあいません。[
③サビが出ない(酸化鉄や硫化系鉱物を含まない)
御影石は鉱物が集まった結晶体ですが、その中にサビを引き起こす鉱物がいくつかあり、それを含んだ原石は極力お墓への利用は避けるようにします。
サビの出方にも色々パターンがあり、俗に言う「赤さび」は鉄気として最初からポツンポツンと点で出ています。
第二酸化鉄は、最初は見えませんが、空気に触れることで鉄気となります。また、硫化系鉱物を含んでいるとブワッとサビが広がり非常に目立ちます。
赤さびは最初から見えているので取り除くことは容易ですが、第二酸化鉄や硫化系鉱物は、時間を置いてから出てくることもあります。
扱い慣れている職人は、感覚で怪しい原石もわかるようです。
墓石にサビが出る理由については、こちらで説明しています。
④風化が進んでいない
花崗岩が風化してできた真砂土(山砂)と粘土です。花崗岩は、長年の風化作用により、粘土と砂にわかれます。
御影石は、硬くて風化に強いとはいえ、何千万年という単位の中で、浸食を受けてボロボロになっていきます。
石山の地表近くなどで、風化作用の影響を受けている石は利用できません。
⑤ダイナマイトの発破によるキズ(マイクロクラック)がない
通常、御影石を切り出す時は、ジェットバーナーやダイヤモンドソー・ワイヤーソーなどを用いて、ゆっくりと丁寧に切り出しますが、明らかに墓石に利用できる品質でないものは、効率を考えてダイナマイトで一気に破壊することがあります。
ダイナマイトの衝撃は相当なものなので、発破付近に近い御影石はマイクロクラックと呼ばれる微細なキズが広がります。その部分はお墓の用途に適しません。
でも、中にはガンガン発破を掛けてしまう石山もあります。(実際に見聞きしています)
まとめ
御影石の原石の選別についての記事を書いてきましたが、いかがでしたでしょうか?
石屋さんでも、石なんかその辺に転がっているじゃないか?とういう方もいらっしゃるのですが、実際のところ石山を経営していくのも楽ではないんです。
このようにして厳選された、原石の良質な部分を選んでお墓に利用しています。
御影石は自然のたまものであり、品質の一定した工業製品とは違います。そこが扱いの難しいところであり、面白いところなんですね。
もし、時間がゆるすのならそんな原石が選定される様子を見てみるのもいいものですよ♪
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