お墓を建てる際に、一緒に設けることの多い墓誌(霊標)。
比較的、最近になって作られるようになったことをご存知でしょうか?
※墓誌は地方によって呼び方が変わり霊標とも呼ばれます。
また、浄土真宗では戒名ではなくて、法名が用いられるので、法名碑と呼びます。
墓誌は、家族の年表のような側面を持ちます。
一般的に墓誌はお墓の見えやすい場所にあり、お墓参りの際に視認できるようになっています。
その中で、ご先祖様を思い出し、お祈りを捧げるのです。
今回は、そんな墓誌について私の石屋人生で、気がついたことや知ったことを盛り込んでいきます。
また、この記事はブログで書いていますので、皆様からいただいたご意見も反映して、書き換えることができます。
バージョンアップできることが強みです。
私は、茨城県にある石材店に勤めているサラリーマンですが、お墓は地域ごとに異なり、墓誌に関しても違うので、皆様からのご意見はありがたいです。
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目次
墓誌(霊標)って何?
墓誌は、簡単に言うと『家族の年表』です。
亡くなった家族の情報を記録していく役割を果たします。
また、生きているうちに戒名をもらう方もいて、その場合には、生前でも墓誌に戒名や名前を刻む方もいらっしゃいます。
一言でいうと、見やすくてわかりやすい。
墓誌(霊標)に刻む情報
- 戒名
- 命日
- 行年(亡くなった年。数え年で)
- 俗名(生前のお名前)
その他、経歴や受賞歴などの情報を刻まれる方もいらっしゃいます。
墓誌(霊標)に刻む順番
- 亡くなった順
- 夫・妻・子供と家系図のように順番に並べる
墓誌に戒名や名前を刻む順番は、亡くなった順にそのまま刻んでいくか、家系図のように夫・妻・子供と右から刻んでいく方法とがあります。
茨城では、けっこうバラバラでどっちもあります。
個人的には、家系図のように並んでいると、目で見て直ぐにわかるので、後世のためにもいいような気がしています。
ただ、そうなると奥さんが先に亡くなると夫の戒名を彫るスペースを空けておかなければならないので、そこだけを間違えないようにしなければなりません。
墓誌にはどこまで遡って刻めばいいの?
どこまでご先祖様を遡って墓誌に刻めばいいのという話ですが、個人的には、戒名や俗名が残っているご先祖様は、すべて刻んでもらいたいです。
それこそ、墓誌の裏面にも刻むことができるので、なるべく自分のルーツであるご先祖様の記録を残してあげて欲しい。
その上で、費用を掛けたくないという方がいるのなら、省略することもできます。
墓誌に名前を刻むのに、1名当たりいくらという考え方をする石材店が多いです。
墓誌(霊標)が必要とされるようになった理由
墓誌は比較的新しく増えてきました。
それには、時代背景も大きく影響しています。
個人墓や夫婦墓が多かった江戸時代から明治時代
江戸時代や明治の初期頃までは、個人だったり夫婦で1つのお石塔を建てていました。
今でも墓相型のお墓では、夫婦で1つのお墓を建てています。
ただ、個人や夫婦単位でのお墓は、墓地面積が広くなければ建てられないという悩みがあります。
お石塔の数が増えてくると墓地に収まりきらなくなってきて、先祖代々をひとまとめにしたお石塔を建てるようになってきました。
先祖代々のお石塔を建てる
今も主流なのが、1つの石塔で先祖代々をひとまとめにしたお墓です。
これならば、土地の少ない都市部でも多くの墓地を確保できます。合理的ですね。
この場合、ご先祖様の戒名や俗名などの情報はどこに刻むかと申しますと、お石塔の左右に刻むようになります。
ただ、お石塔の幅は、和型墓石だと8寸~11寸程度が多く、27cm~33cmほどしかありません。
その為に、ご先祖様が多くなってくると刻むスペースが無くなってきます。
墓誌であれば、ご先祖様の情報を刻むスペースを広く取れます。
一般的な墓誌であれば、表に刻みきれなくなったら裏返して彫ることもできます。
また、お石塔に文字を刻む際には、「魂抜き」と「魂入れ」という儀式をすることになっています。
お坊さんにお墓に来ていただいて、お経を読んでいただきます。
墓誌であれば、特に魂が宿るものではないので、お坊さんに「魂抜き」と「魂入れ」をお願いすることはありません。
そんな背景があって、墓誌(霊標)が増えてきたのだと推測されます。
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墓誌(霊標)に利用される石の種類は?
墓誌に利用される石種は、石塔と同じ石を利用するか、刻んだ文字が目立つ黒御影石を利用することが多いです。(茨城県及び関東近郊)
下の写真は黒御影石の墓誌ですが、このような感じで、戒名や俗名を刻んだ部分が白っぽくなって見えます。
こちらは、黒御影石に白ペンキを入れた墓誌です。
黒と白でコントラストがハッキリするので、戒名字彫りがくっきり見えますね。
こちらは、白御影石(真壁小目石)に黒いペンキを入れた墓誌。
白御影石は、戒名や俗名を刻んだだけではよく見えません。
なので、黒か白のペンキを入れるのが一般的です。
白く入れるとこんな感じの墓誌になります。
ちなみに、前側の墓誌が「墓誌」と刻んであって、後ろの墓誌が「法名碑」と刻んであるのがお分かりになりますでしょうか?
浄土真宗では墓誌ではなくて法名碑
先程から「墓誌、墓誌」と連呼していますが、私は浄土真宗の門徒なので、自分のお墓にあるのは「法名碑」になります。
浄土真宗では、戒名ではなくて、法名をつけていただきます。。
つまり、法名を刻む碑なので「法名碑」。
なので、本来は「法名碑」と呼ぶべきなのですが、いつも「墓誌」で統一してしまっていますね。
この辺りは、「霊標」と呼ぶ地域もあるようだし、地域性があるのだと思います。
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墓誌(霊標)の価格はいくらなの?
墓誌の価格は、使用する石と大きさと形によります。
なので、単純にいくらぐらいという相場を言うことはできません。
国産石種や黒御影石だと費用が高い傾向にあります。
中国産石種で白御影石だと安価になります。
先ほども書きましたが、基本的に墓誌は、石塔に合わせるか、黒御影石を利用するかの選択が多いです。
もちろん、違う石種を利用しても問題ありません。
具体的な答えになっていなくて申し訳ありませんが、墓誌の価格を調べる際には、検討されている石材店に聴いてみることをお勧めします。
墓誌(霊標)は必要か?と言われれば必ずしもそうではない
墓誌が必要とされる理由は、ご先祖様の情報を刻むためのスペースの問題であることは触れました。
一つ一つのお石塔に戒名や俗名を刻んでいた→先祖代々のお墓に刻むようになった→墓誌に刻むようになった
の流れです。
でも、例えば「跡継ぎがいない、代が続かない」や「嫁いだ娘にお墓を守ってもらうことになっている」なんて場合には、名前や戒名を刻む数が限定されます。
その場合には、墓誌を建てるのではなく、お石塔に刻むという選択でもよろしいです。
特に、洋型墓石だと横に広いので、ある程度のご先祖様の情報を刻めるスペースがあります。
墓誌(霊標)は後から追加できる
墓誌は、建てられるだけのスペースが墓地にあれば、後からでも追加することができます。
なので、お石塔に彫れるだけ彫ったら墓誌を追加するという選択もあります。
また、生前にお墓を建てる寿陵(じゅりょう)では、まだ亡くなった方がいないので、墓誌を建てるかどうかは悩むところです。
寿陵を建てられるのなら、戒名も生前にもらって墓誌に刻んでおくというのも一つの案かもしれません。
古いお石塔に刻んだ戒名や俗名が消えてきたから墓誌にキチンと刻みたい
最近のお墓に利用される御影石は、硬質で風化にも強いので、文字を刻んでもそうそう風化するものではありません。
ただ、昔の加工技術の発達していなかった頃の石塔は、表面がボロボロになり、ご先祖様の記録である戒名や俗名が消えてきているものもあります。
そんなご先祖様の記録を大切に残したい場合には、新たに墓誌を設けて記録を刻んでもいいでしょう。
子孫繁栄を願って墓誌を建てる
墓誌には、ご先祖様の情報を沢山刻むことができます。
茨城県のよくある墓誌のサイズは60cm×75cm×6cmになりますが、一面に16名ほど刻むことができます。
裏返して彫ることもできるので全部で32名。
※墓誌のサイズは全国で違いがあります。
それだけの拡張性があるということになります。
ということは、子孫が代々続いていっても十分に入るだけの余地がありますね。
墓誌(霊標)の追加彫刻の価格について
ご家族が亡くなったら、追加字彫りをする必要があります。(地域によっては、刻まないところもあるようです)
この場合は、墓誌に現場で文字を刻むか、持ち帰って彫ります。
墓誌の追加彫刻の価格については、以前の記事で詳細に紹介しています。
地域や石材店毎の施工方法によって価格にはかなりの差があり、1万8千円~8万円もの違いがあります。
全国の石材店の方々からご意見をいただいてまとめた墓誌の追加彫刻の価格についての決定版です。
墓誌(霊標)の名入れの時期はいつまでにやればいいのか?
墓誌の名入れの時期についても、以前ブログ記事を書いています。
49日の納骨までに追加字彫りをできるのがベストですが、忙しかったり、忘れてしまったりして、遅れてしまう場合もあります。
その場合には、初盆や一年忌でも問題はありません。
様々な墓誌の形、省スペースへの対応も
墓誌には様々な形があり、独立で下駄を履かせたタイプや凹んだ部分に差し込むタイプ。
狭い墓地だと、墓誌を外柵に組み込んで省スペース化する場合もあります。
納骨堂の前蓋に戒名や俗名を刻むこともあります。
まとめ
墓誌の価格や書き方、必要とされる理由、書き方など、あらゆる情報を網羅して書いてみました。
墓誌が必要とされる理由は、ご先祖様の情報を刻むためのスペースを多く確保したいからです。
元々は、一つ一つのお石塔に戒名や俗名を刻んでいたものが、先祖代々のお墓に刻むようになり、そして墓誌に刻むようになりました。
墓誌は、亡くなった家族の歴史年表のような意味があり、分かりやすく伝えてくれます。
もしあなたが既にお墓を建てていて、墓誌があるのなら、ゆっくりと戒名や名前を見てみるのもよろしいかと思います。
そして、自分のルーツであるご先祖様に想いを馳せてみてください。
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