いざ墓誌に名前を刻もうとしたら、ご先祖様の戒名も命日もわからない…。じつは、よくあることなんです。
お墓を新しく建てるときも、先祖代々のお墓を近くに移すときも、古くなったお墓を建て直すときも、墓誌や墓石にはご先祖様の戒名・俗名(生前の名前)・命日・享年を刻みます。ところが何代も前の方になると、記録がどこにあるのかわからないケースが多々あります。
古いお石塔に戒名が彫ってあっても、石がボロボロになって読み取れなかったりするんですよね。
でも、探す場所には順番があります。お位牌・過去帳・お寺・戸籍の順に、調べ方を説明していきます。
- 先祖の戒名は、まず家のお位牌・過去帳・木札を確認し、見つからなければ菩提寺の過去帳を調べます。
- 名前や命日がわからない場合は、戸籍・除籍謄本で先祖をたどります。2024年3月からは、本籍地以外の役所でも請求できるようになりました。
- 古い記録が残っていない場合は、わかる範囲まで調べ、確認できたご先祖様から墓誌に刻んでいけばよいと私は思います。

先祖の戒名を調べるのは、どんなとき?
先祖の戒名を調べる場面は、主に4つあります。
お墓を建てる・移す・建て直すとき
新しくお墓を建てたり、郷里のお墓を近くに移したり、古いお墓を建て直したりするときは、墓誌に先祖の戒名・俗名・命日・享年を刻みます。そのために、先祖の記録を集める必要があります。
墓じまい・改葬で、お墓の中のご先祖様を確かめるとき
墓じまいでお墓を移すときは、役所に「改葬許可申請書」を出します。申請書には、亡くなった方の本籍・住所・氏名・死亡年月日、埋葬や火葬の年月日などを書く決まりです。
最近亡くなった方なら、すぐにわかります。ところが古いご先祖様になると、空欄になってしまうことがあるんですね。お位牌や過去帳の戒名から、俗名や命日をたどっていきます。
あわせて読みたい:墓じまいとは?費用・流れ・手続きと、ご先祖様に申し訳ないと悩む方へ
家族が亡くなり、新しく戒名を授かるとき
戒名には、信士・信女、居士・大姉、院号といった位があります。新しく戒名を授かるときは、先祖の戒名と位をそろえることがあります。
あるお寺の住職は、先祖より上の位にすると申し訳なく感じたり、先祖はみな院号居士なのに一人だけ信士だと気になったりする、という相談が多いと話しています。そのため、お寺から先祖の戒名を聞かれることがあります。
一方で、新しくお墓をつくる方や、散骨・樹木葬などで先祖のお墓に入らない方は、先祖の戒名にこだわらなくてよい、というのが同じ住職の考えです。
家系図をつくる・自分のルーツを知りたいとき
自分のルーツを知りたくて、家系図をつくる方もいます。ご先祖様をたどる基本は戸籍ですが、古い戸籍は保存期間が過ぎると取れなくなります。
それより前のご先祖様は、お墓に刻まれた戒名や、お寺の過去帳が手がかりになります。家系図の作成キットは、このあと④の戸籍の章で紹介します。
先祖の戒名・命日を調べる6つの順番
| 調べる順番 | 調べる場所 | 確認できること |
| ① | 家のお位牌 | 戒名・命日など |
| ② | 家の過去帳・木札 | 戒名・俗名・命日など |
| ③ | 菩提寺の過去帳 | お寺に記録された戒名・没年月日など |
| ④ | 戸籍・除籍謄本 | 先祖の本名・親子関係・死亡年月日など |
| ⑤ | 古い石塔 | 石に刻まれた戒名・命日・俗名など |
| ⑥ | わかる範囲で墓誌に刻む | 確認できたご先祖様の記録 |
古い石塔は、最初にお墓を確認するときにも見ておきましょう。ただし、文字が読めなければ、ほかの資料と照らし合わせる必要があります。
①お位牌で先祖の戒名と命日を調べる
最初に確認したいのは、家の仏壇にあるお位牌です。
お位牌には、一般的に次のような情報が記されています。
- 戒名(法名・法号)
- 亡くなった年月日(命日)
- 俗名
- 享年や行年
ただし、お位牌の種類によって記載内容は異なります。
先祖代々のお位牌が残っていれば、そこから戒名や命日をたどることができます。
浄土真宗は過去帳を確認する
浄土真宗では、基本的にお位牌を用いません。
そのため、戒名にあたる「法名」を調べるときは、過去帳を確認します。
宗派によって、先祖の記録の残し方が違うことも覚えておきましょう。
②家の過去帳・木札で先祖の名前を調べる
過去帳とは、亡くなった方の戒名や俗名、命日などを記録した帳面です。
代々お寺との付き合いがある家庭では、家に古い過去帳が残っていることがあります。
また、戒名や命日を書いた木札をまとめて、仏壇に保管している家庭もあります。
お位牌だけでなく、過去帳や木札も探してみてください。
火事や引っ越しで記録をなくした場合
私が担当したお客様の中に、火事でお位牌や過去帳をすべて失ってしまった方がいました。
また、引っ越しの際に、どこへしまったかわからなくなってしまった方もいました。
こうなると、家に残っているものだけでは調べられません。
りょういち先祖代々のお墓を建て直すとき、こうした記録が残っていないことは珍しくありません。でも、調べる方法はまだあります。
家族や親戚に聞いてみる
家に記録が見つからなければ、年長の家族や親戚に聞いてみましょう。
位牌や過去帳がどこにあるか、菩提寺はどこか、本家の仏壇に先祖の位牌がまとめてあるか。こうしたことを、親戚が知っていることがあります。
菩提寺がわかれば、次のお寺の過去帳で調べられます。
③お寺の過去帳で戒名を調べる
家に記録がなければ、次は菩提寺(ぼだいじ)に相談します。
菩提寺とは、代々のご先祖様の供養をお願いしてきたお寺のことです。
お寺にも、檀家だった方の戒名や没年月日などを記録した過去帳があります。
ご先祖様の名前と亡くなった年月日がわかれば、お寺の過去帳から戒名を調べられます。
ただし、お寺ごとに記録の残り方や閲覧の扱いが違います。過去帳を直接見せてもらえるとは限りません。
まずはご住職に事情を説明し、調べてもらえるか相談しましょう。
名前も命日もわからないときは?
昭和初期、大正、明治時代までさかのぼると、ご先祖様の名前も没年月日もわからないことがあります。
お寺の過去帳に記録があったとしても、誰のことなのかわからなければ探すのは大変です。
名前も年月日も手がかりがない状態では、お寺にしらみつぶしに調べてもらうことになってしまいます。
そんなときは、先に役所で戸籍や除籍謄本を取り寄せてみましょう。
そこからご先祖様の名前と死亡年月日を調べ、お寺の記録と照らし合わせます。
④戸籍・除籍謄本で先祖の名前と命日を調べる
戸籍は、家族関係を公的に記録したものです。
先祖の本名や亡くなった日を調べるときに役立ちます。
戸籍謄本と除籍謄本の違い
| 書類 | 内容 |
| 戸籍謄本 | 戸籍に記載されている全員の事項を証明する書類 |
| 除籍謄本 | 死亡や婚姻などで全員が除かれた戸籍の内容を証明する書類 |
戸籍は、基本的に夫婦とその未婚の子を単位に作られます。
結婚や死亡などによって全員が戸籍から除かれると、その戸籍は「除籍」となります。
古いご先祖様を調べるときは、除籍謄本のほか、戸籍を書き換える前の記録である「改製原戸籍」が役立つこともあります。
ただし、戸籍には戒名は記載されません。
戸籍で調べるのは、あくまで俗名や親子関係、死亡年月日などです。その情報を手がかりに、お寺の過去帳から戒名を探します。
2024年3月から戸籍の取り寄せが楽になった(広域交付)
以前は、本籍地のある市区町村ごとに戸籍を請求する必要がありました。先祖をさかのぼると、本籍地が何か所にも分かれていることがよくあります。遠くの役所に一つずつ請求するのは、大変な手間でした。
2024年(令和6年)3月1日から「広域交付」が始まり、これがずいぶん楽になりました。今は、住まいや勤め先の近くの役所の窓口で、戸籍・除籍の証明書を請求できます。本籍地が全国に分かれていても、1か所の窓口でまとめて請求できます。
請求できるのは、次の方です。
- 本人
- 配偶者
- 直系尊属(父母・祖父母など)
- 直系卑属(子・孫など)
請求する本人が市区町村の窓口へ行く必要があり、広域交付では郵送や代理人による請求はできません。
また、運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの本人確認書類が必要です。
コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍も、広域交付の対象外です。その場合は本籍地の市区町村に問い合わせてください。


除籍謄本の保存期間は150年
除籍簿の保存期間は、現在150年です。
2010年(平成22年)までは、保存期間が80年でした。
そのため、古い除籍簿の中には、すでに保存期間を過ぎて処分されてしまったものもあります。
保存期間が150年になったからといって、150年前までの記録が必ず残っているわけではありません。
江戸時代まで先祖を調べられる?
江戸時代から続く家では、戸籍だけでご先祖様をすべて調べるのは難しいでしょう。
明治時代の古い戸籍が残っていれば、さらにさかのぼれることもありますが、記録には限界があります。
私は、家系を調べるときは、確認できた人の名前や生没年月日を整理しておくとよいと思います。
家系図にしておけば、どのご先祖様まで確認できたのかもわかりやすくなります。
あわせて読みたい:家紋の調べ方|苗字で分かるのは候補まで。確実に見つける方法
家系図は、書き込むだけで形にできる作成キットを使うと手軽です。
⑤古い石塔に刻まれた戒名を調べる
まずは、今のお墓に墓誌があるか見てみましょう。墓誌があれば、先祖の戒名や命日がまとめて刻まれています。
古いお墓が残っている場合は、石塔に刻まれた文字も確認します。
昔のお墓には、個人や夫婦ごとに建てられた石塔があります。
そこに戒名や没年月日が刻まれていれば、大切な手がかりになります。
ただし、古い石塔は風化が進み、文字が読み取れないこともあります。
石そのものがボロボロになっている場合もあります。
判読できた文字を、お位牌や過去帳、戸籍の情報と照らし合わせましょう。
読めない文字を推測だけで補って、墓誌に刻むのは避けたいところです。
⑥戒名がどうしてもわからない場合は?
いろいろ調べても、ご先祖様の戒名がわからないことはあります。
特に江戸時代や、それより昔から続く家では、すべてを調べるのは難しいでしょう。
そんな場合は、わかるところまでさかのぼり、確認できた最古の戒名から墓誌に刻んでいくのも致し方ないと思います。
わからない戒名を無理に刻まなくてもよい
私は、ある程度調べたところで見切りをつけるしかないと思います。
記録が残っていなければ、それ以上は調べようがありません。
大切なのは、わからない情報を無理に埋めることではなく、今わかっているご先祖様の記録を残しておくことです。
自分で調べきれないときは、家系の調査から家系図の仕上げまでを頼める、家系図作成サービスもあります。



代々続く家のすべての戒名を調べるのは、難しいことです。私は、わかる範囲で整理して、次の世代に残していけばよいと思います。
戒名を墓石や墓誌に刻む場所は?
調べた戒名を刻む場所は、大きく分けて2つあります。
- 石塔
- 墓誌(ぼし)
石塔に刻む場合、基本的に和型墓石では正面に向かって右側、洋型墓石では裏側に刻みます。
ただし、石塔には刻めるスペースに限りがあります。
長く続いている家で、多くのご先祖様の戒名を刻むなら、墓誌のほうがいいです。
墓誌は、ご先祖様の戒名や俗名、命日、享年などを記録する石の板です。
いわば「家族の年表」のようなものです。
ただし、霊園によっては墓誌を設置できない場合もあります。
また、墓誌は必ず建てなければならないものではありません。石塔に十分なスペースがあれば、そこに刻んでもよいのです。
あわせて読みたい:墓誌(霊標)とは?書き方・名前の順番と費用、必要かどうか
戒名を追加して刻む時期は?
新しく亡くなった方の戒名を追加する場合は、できれば四十九日までに刻んでおくとよいでしょう。
間に合わなければ、初盆や一周忌に合わせても問題ありません。
石材店への依頼は、できれば1か月ほど前にしておくと安心です。
あわせて読みたい:墓石や墓誌に名前・戒名を『追加彫刻』する時期は【49日・一周忌・初盆】のどれ?遅れたらどうする?
戒名とは?法名・法号との違い
戒名とは、仏弟子としての名前です。
宗派によって、その呼び方が異なります。
| 宗派 | 呼び方 |
| 天台宗 | 戒名 |
| 真言宗 | 戒名 |
| 曹洞宗 | 戒名 |
| 臨済宗 | 戒名 |
| 浄土宗 | 戒名 |
| 浄土真宗 | 法名 |
| 日蓮宗 | 法号 |
戒名には、信士・信女、居士・大姉、院号などの位があります。
故人の社会的な地位や、お寺への貢献度なども、戒名の位を決める目安になります。
ただし、戒名の位が高いほど、あの世でよい待遇を受けられるというものではありません。
戒名のしくみ(院号・道号・戒名・位号)
戒名は、ふつう「院号」「道号」「戒名」「位号」の4つを組み合わせてできています。野口英世の戒名「大仁院殿済民英世居士」を例にすると、次のとおりです。
| 部分 | 例 | 意味 |
| 院号 | 大仁院殿 | 「院殿」「院」がつく部分。位の高い戒名につく |
| 道号 | 済民 | 戒名の前につく号 |
| 戒名 | 英世 | 本来の戒名。2文字 |
| 位号 | 居士 | 信士・信女、居士・大姉など。位と性別を表す |
古い位牌や過去帳を読むときは、この区切りを知っておくと、どこからどこまでが一人の戒名か見分けやすくなります。
戒名の意味や付け方については、別の記事で詳しく説明しています。
あわせて読みたい:戒名についての5つの疑問【必ずつけないとならないの?文字を選ぶ基準・生前に授かる・自分でつける・家族と同じ】
戒名の値段やお布施については、次の記事を参考にしてください。
あわせて読みたい:あの人の戒名は高い?安い?簡単に値段を見分ける方法をお教えします
先祖の宗派がわからないときは?戒名の文字で見分ける
先祖の宗派がわからないときは、位牌やお墓に刻まれた戒名の文字が手がかりになります。宗派ごとに、よく使われる文字があるからです。
| 宗派 | 戒名の特徴 |
| 浄土真宗 | 「釋(釈)」の字が入る(例:○○院釋○○)。女性は「釋尼」。位牌はつくらない |
| 浄土宗 | 「誉」の字が入る(例:○○院◇誉△△居士)。先頭に梵字「キリーク」が入ることもある |
| 日蓮宗 | 「日」の字が入る。男性は「法」、女性は「妙」の字が入る。上に「妙法」と書かれることもある |
| 真言宗 | 先頭に梵字「ア」が入ることがある |
| 天台宗 | 先頭に梵字「ア」や「キリーク」が入ることがある |
| 曹洞宗・臨済宗 | まれに先頭に梵字「バク」や「空」の字が入る(ふだんはあまりつけない) |
お仏壇のご本尊や掛け軸も、宗派によって違います。ただし、どれも見分けるための目安です。最後は、親戚や菩提寺に確かめましょう。
よくある質問
- 先祖の戒名がわからない場合、まず何を調べればいいですか?
-
家のお位牌と過去帳、木札を確認してください。
そこに記録がなければ、菩提寺に相談します。
名前や命日もわからない場合は、戸籍・除籍謄本から調べるとよいでしょう。
- お寺の過去帳は見せてもらえますか?
-
お寺によって対応が異なります。
過去帳には、ほかの檀家の情報も記録されています。
直接見せてもらうのではなく、ご住職に調べてもらう形になることもあります。
先祖の名前や没年月日など、わかる情報を伝えて相談してください。
- 宗派がわからない場合、戒名から調べられますか?
-
戒名の形式や使われている文字から、宗派を推測できる場合があります。
ただし、戒名だけで宗派を必ず特定できるわけではありません。
家のお位牌や過去帳、菩提寺の記録なども合わせて確認しましょう。
- 戸籍謄本から先祖の戒名や命日がわかりますか?
-
戸籍から、先祖の本名や死亡年月日などを確認できます。
ただし、戒名は戸籍に記載されません。
戒名を知るには、戸籍で調べた情報を手がかりに、お寺の過去帳などを確認する必要があります。
- 先祖代々の戒名が全部わからなくても、墓誌を作れますか?
-
作れます。
調べられた最古のご先祖様から、確認できた戒名や命日を刻めばよいでしょう。
無理にすべてをそろえる必要はないと私は思います。
まとめ|戒名はわかる範囲まで調べればよい
先祖の戒名や命日がわからないときは、お位牌・過去帳から始め、お寺の記録、戸籍・除籍謄本へと調べる範囲を広げていきます。
古い石塔に残された文字も、手がかりになります。
ただし、長く続いている家では、記録がなくなっていることもあります。
最終的には、ある程度さかのぼったところで見切りをつけるしかありません。
確認できた情報をきちんと墓誌に残す。それだけでも、次の世代にとって大切な記録になります。
あわせて読みたい:リメンバー・ミーの家系図と死者の日|日本のお盆との違い・先祖のたどり方
元石屋のひとこと



ご先祖様の名前を調べることは、自分の家の歴史をたどることでもあります。すべてがわからなくても、今残っている記録を大切にしてほしいと思います。








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