皆さん土葬と聴くとどのようなイメージを持たれますでしょうか?
「一昔前の風習でしょ?」
と思われる方も多いかもしれません。
ところが現代日本においても土葬はまだ行われているのです。
死生観という括りで捉えた時に、火葬と土葬とでは全く違ってきます。ここには宗教観も大きく係わり遺体と魂は同じところにあるとするイスラム教のように亡くなってからの火葬は認めない宗教もあります。
また自分たちで遺体を棺桶に入れ、延べ送りし、土を掘り、埋葬するという一連の儀式の流れ。相当重く心にのしかかってきます。
遺体は土の中でゆっくりゆっくり腐敗していくのは、火葬に慣れてしまうとなかなか感じにくいですが、もの凄いことであると思うのです。
それでは、実際に土葬を経験され、山師もされている大久保さんの話を元に現代の土葬事情についてお話をさせていただきます。
目次
現代日本人の土葬事情
日本における土葬の実態
大久保さんからお伺いした奈良県での土葬の話をする前に、現在日本全体で土葬がどのような状況にあるかについて説明させていただきます。
現在の日本においては火葬普及率が99.9%以上、土葬の実例は、年間100例程度しかありません。
埋葬には墓地埋葬法という法律があり、土葬を行うことは制限されているわけではないのですが、自治体によっては禁止されているところもあります。
そもそも土葬できる霊園や墓地が極端に少ない状況にあります。
在日ムスリム向けの墓地は全国で7カ所しかありません。私が住んでいる茨城県に1つ霊園がありますが、全国的に20万人いるとされるムスリムの人たちに対して土葬墓地が足りていないそうです。
奈良県では今でも土葬されている地域がある
それで、日本人向けの土葬が現在も行われているのかという話ですが、奈良県の一部地域では今でも土葬が行われています。
その割合いは大久保さんに聞いたところ10%程度。残りが火葬になるので、これを多いか少ないかどちらかに感じるかというところですが、平成一桁台のころはほとんど土葬だったそうです。
これが少しづつ火葬に移行していき、さらにコロナ禍の中で、急速に進んでいるそうです。
それでは、なぜ土葬の村が火葬に移行していったのでしょうか?その理由に迫ってみます。
土葬の村で火葬が増えた理由
その大きな理由は、葬儀場ができるようになったからです。
基本的に葬儀屋さんに頼むと、葬儀場と火葬と通夜ふるまいなどの食事はセットになってくるので、段々土葬が行われなくなっていきました。
それまでは、自宅にて葬儀を行い、食事を振る舞い、野辺送りをして土葬しました。
それはかなりの労力がいることであり、親族にとっての負担でもあったと大久保さんは言います。見えない部分でのお金もかなりかかった。
故人を送るために自宅にて親戚や近所の人を呼び、三日三晩お酒を飲み続けたそうです。とりあえず誰かが亡くなるとお酒が2ケース頼まなければならない。
それを皆で飲み干さないと葬儀ができない。それだけ手厚く故人を弔うということではありますが、家族にとって大きな負担にもなるということです。
中野家の大変な自宅葬
これは、私の中野家でも同様のことがありました。茨城県の田舎町にあります。
埋葬は火葬ですが、平成15年に亡くなった祖父の時は自宅葬でお通夜まで4日ほど間があり、その間中ずっとお酒を飲んでいました。
入れ替わり立ち代わり100人以上は来たのではないでしょうか?つまみの刺身だ、揚げ物だと、色々と食事を用意をして、近所の女性も総出で手伝いをしてくれます。
当時はまだ私も20代でしたが、お酒を注いで回ったり、手伝いをしたりで大変だったのを覚えています。喪主は父親だったので私にはわかりませんが、お金もけっこう掛かったのでしょうね。
それと比較すると祖母の時は平成27年で、だいぶ様変わりしていました。葬儀屋に頼んだので、ほとんどのことをやってくれます。送り出す家族の負担がかなり減りました。
どちらがいいかは一概に言えませんが、大久保さんはお父様を土葬で、お母さまを葬儀場で火葬で送って、やっぱり火葬の方がいいと言います。
「一度、葬儀屋に頼むと土葬には戻れない。とにかく大変だったよ。」とのことです。
土葬の穴掘りの大変さ
そして何よりも土葬が大変なの、経験が無くても皆さまも想像がつくと思います。
縦棺にご遺体を入れる際、 足の骨を折って入れることもあるそうです。山に埋葬する時、掘ってたら 隣に埋めたはずのご遺体が出てくることも。
そして穴を掘ることが、かなりの重労働になります。夏場だと特に大変です。
土葬で埋葬する際には、8尺(1.8ⅿ)埋めると言いますし、私も実際に土葬を掘り起こした時にそれぐらいの深さがありましたが、大久保さんは1.3~1.4ⅿ程度だったそうです。
それでも土を掘るというのは相当な重労働です。簡単そうに見えてあれだけヘビーな仕事もありません。手彫りで人が入るだけの穴を掘るのは数人掛でも骨が折れるのです。
単純計算で、2ⅿ×1ⅿ×1.4ⅿの大きさの穴を仮に掘ったとしたら、2.8㎥の土量になります。
土量だけ言われてもピンとこないかもしれませんが、大型ダンプに積み込める土量の約半分ぐらいになります。何となくでも理解できましたでしょうか?
ひいき目に見ても超ハードです。
私ならもしやることになってもバックホウで掘ることしか考えません。生温いと思われるかもしれませんが、重機に慣れた現代人には考えられないぐらい大変だということです。
それでも土葬で埋葬されたい
そんな大変な思いをして埋葬する土葬ですが、今でも奈良県の一部では現在でもされています。
自分を土葬にして欲しいという意志を遺言書に残す方もいらっしゃるそうです。
その大きな理由は、ずっとそういう風習でやってきたというのが大きいけど『火葬がいや!!燃やされるのがいや!!』という感情が大きく働いているそうです。
確かに火葬はいざ焼かれるとなると胸に重くのしかかるものがあります。今はまだ肉体があるものが焼かれて骨になる。
骨拾いも大切な儀式ではありますが、悲しいという表現では表しきれない、複雑であり何ともいえない感情が沸きあがってきます。
その意味で、土葬は土に埋めるまで遺体の姿形がそのままですし、土に埋めた後はゆっくりと腐敗し土に返っていきます。
そう言われてみると、火葬が当たり前だと思っていた私も土葬の方が安心できるような気がしてきます。
youtbeでも紹介しています。
まとめ
現代日本人の土葬事情について書いてきましたが、平成一桁のころはほとんどが土葬だったのが、令和の現在は10%程度に減ってしまっています。
大久保さんがおっしゃるには、「コロナ禍の中で火葬率があがったし、土葬の風習はもっと減っていくだろう。」とのことでした。
この文化が失われていくことに寂しさを覚えながら、実際に続けていくとなると苦労も伴うことから無責任なことも言えないと思いました。
私は、土葬のお墓を掘り起こしたことはあれど、実際の土葬に立ち会ったことはありません。私が生まれる前に茨城の地元では土葬の風習が無くなっていました。
だけど、今回の大久保さんへの取材を通じて、どんな風に土葬をしたのか、送る側はどんな気持ちで送ったのか、想像すると様々な感情が沸いてきました。
大久保さんありがとうございました。そして今回のご縁をつないでくださった大阪府堺市にある和泉石材の北条さんありがとうございます。
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