ビシャン・コヤスケ・両刃・セットウ・ノミ
御影石を手加工で形作っていく際に必要になる道具です。
近年は、カッターなどの機械に頼る部分が多くなり昔ながらの手加工が減り、セットウを扱える石工さんも減ってきました。
昔ながらに腕1本と道具で石を形づくっていくのは、見ていて痺れます。
また、現代の機械を利用してダイナミックに切削をしていくのも面白いです。
そんな違いを楽しみながら見ていただけると幸いです。
目次
現在と昔の石材加工の違い
機械が主流の現代の石材加工
鉄でできた円盤の先にダイヤモンドの刃。
大きな硬い石も高速で回転する切削機で切断していきます。
細かい部分もベビーサンダーを利用して器用に形作っていきます。
磨き加工も全自動の研磨機があって、研磨盤を勝手に交換しながらピカピカに磨いてくれます。
細かい部分を叩くのには、ニーマと呼ばれる工具を用いてエアーコンプレッサーの空気圧で叩きます。
これら機械の導入によって、石材加工は飛躍的に楽になりました。
昔は、もちろん現代のような文明の利器はありません。
これらもすべて手加工で行っていたのです。
昔ながらの石材加工の様子
御影石を道具と腕1つで手加工をしていく場合には、原石→墨かけ→荒切り→のみ切り→ビシャン叩き→小叩き→研磨と進んでいきます。
今回紹介する動画は、TV撮影をされた時の様子を写したもので、昔ながらの工程をなぞったものです。
この動画では、のみ切りをした面とビシャンを叩いた面が違いますが、本来は同じ面に続けて加工をしていきます。
あくまで撮影用のパフォーマンスということでご了承ください。
それではそれぞれの工程の動画をどうぞ!
荒切り→ノミ切り
茨城県産の稲田石をフォークリフトで運んできて、コヤスケとセットウハンマーで荒にコブを落としていきます。
これを荒切りと言います。
「パカン、パカン」
と景気よくコブを落とした後には、ノミを用いてノミ切りをして石の形を整えていきます。
石頭(セットウ)ハンマーです。
コヤスケです。
コヤスケの先についている金色の部分が超硬合金であるタンガロイ。
このタンガロイは、石屋にとって革命的な発明だったそうです。
このタンガロイを採用するまでは、鉄で石を叩いていました。
鉄だと直ぐに変形してしまうので、毎日のように鉄鍛冶をして直していたそうです。
今でも昔からの石工だと、自分で鍛冶仕事をできる方もいます。
ビシャン叩き→小叩き
更に、コツコツコツコツとビシャン叩きをして、小叩き加工で、生地を締めていきます。
ビシャンです。
突起が沢山あるのがお分かりでしょうか?
ビシャンには、『鬼ビシャン』『八枚ビシャン』『百枚ビシャン』など目の数によって種類があり、目の荒い順からかけて面を平にしていきます。
両刃です。上の写真だと柄が付いていませんが、真ん中の穴にはめます。
小叩き加工では、両刃で石の表面に2㎜程度の間隔で細かく筋を作っていきます。
こうやって、硬い石を少しずつ平らに均していったんですね。
昔ながらの技法だと、磨き仕上げにする場合には、更に荒砥や石英粗面岩を用いて人力で研磨をしていきました。
包丁を砥石で研ぐような感覚で石を磨いていったのだと思いますが、相当根気のいる気の遠くなるような作業だったんだろうと推測されます。
現代でも人気のあるビシャン・小叩き仕上げの作品について
現在でもビシャン・小叩き仕上げは人気のある技法です。
その素朴な石の持味を活かした風合いはなんとも言えません。
石工の中には、燈籠などの石材作品を作る際に、昔ながらに道具と腕1本で作品を作りあげてしまう方もいらっしゃいます。
ただ、下地のゴツゴツされた感じが出て、素晴らしい風合いになるのですが、その分手間がかかります。
基本的に機械による切削で形作ってそこからビシャンや小叩きを施すのが主流になっています。
昔ながらのビシャンや小叩き加工は、磨きに至るまでの工程の途中でもありましたが、近年では意味が変わってきています。
原石→墨かけ→切削→ビシャン叩き→小叩き
原石→墨かけ→切削→研磨
切削をした平らな面を叩くか磨くかの2択ですね。
加工手間としては、ビシャンや小叩きの方が磨き加工よりも掛かります。
なので、その分価格も高くなります。
まとめ
ということで、現代と昔の石材加工の違いについて説明をしました。
文明の利器である機械を利用した現代の石材加工と、昔のものとはかなり違うことがご理解できたかと思います。
それと同時に、機械を使える石工は多くてもビシャン・コヤスケ・両刃・セットウ・ノミといった道具を使いこなせる人は少なくなっています。
墓石などの磨いた石材製品は今後も生産をしていくことができますが、伝統的な技法を用いたものを作れる人は本当に限られてきます。
需要が少ないのもありますが、こればっかりは何年何十年と携わって身に付いていくものなので、難しい部分ですね。
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