最近の家電製品は、機能が豊富で全てを把握して使いこなすことが困難だったりします。
例えば、電子レンジだと水蒸気で加熱することが普及機種でも当たり前になり始め、2段オーブンで「焼き」と「蒸し」が同時にできたり、油なしで揚げ物ができたり、多機能でボタンも多く最初は説明書を片手に悪戦苦闘することになります。
でもそこを把握しないと、この便利になった電子レンジの恩恵を享受することはできません。
ところが、お墓が私たちにもたらす心理的な恩恵ってあまり説明ができているように思えません。「モノ消費からコト消費へ」という言葉を良く聴くようになりましたが、どちらかというと私たち石屋さんは、お墓の「モノ」の部分、石の種類だったり、色、形、圧縮強度、吸水率、比重、耐震性、基礎工事などは一生懸命に説明をされるのですが、供養などの「コト」について説明するのはどうやら苦手なようです。
私は、この部分をずっと疑問に思っていました。なんで「モノ」の部分ばかり時間を割いて説明をするのだろう?お墓は供養の場であり、グリーフケアの場であり、心理的な説明をすることは、お墓の恩恵を受ける上でもっとも大切なことなのではないのか?
ちょっと辛辣な話にもなっていますが、今回はお墓のaccountability【説明責任】について書いてみます。
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目次
お墓はそのままで「コト」を含んだ商品
「モノ」を所有することに疑問を抱く時代
現在は「モノよりもコトの時代」なんて言葉を耳にする機会が増えてきました。商品の所有に価値を見出す消費傾向を「モノ消費」と言いますが、現代日本人は、豊かな時代を生き、モノに溢れる時代を享受してきたためにモノを所有することに疑問を抱き始めています。
さらにインターネットも普及し、人々は簡単にその対象について深く調べることができるようになり、無駄な消費をしなくなることに拍車をかけています。
断捨離やミニマリストなんて言葉も流行っていますが、要するにモノ余りの時代に対するアンチテーゼであり「もっと所有物を少なくシンプルな生活にしましょうよ」という話であります。そんな中で、お墓を『不必要なモノ』と捉える人達も増えてきました。
お墓はそのままで「コト」商品
でもお墓をあらためて捉えてみると、そのままにして多分に「コト」を含んだ商品であることに気が付きます。
お墓は、大切な家族が収まる場所であり、ご先祖様がいらっしゃる場所であり、自分の終の棲家です。そこで祈りを捧げるわけなので、こんなにも「コト」を含んだ商品は、実は世の中のあらゆる商品を見回しても稀なのです。
商品やサービスを購入したことで得られる体験に価値を見出す消費傾向を「コト消費」といいます。お墓の場合、お墓参りがまさに「コト消費」そのものです。なのでお墓参りの価値を高めてあげることが、そのままお墓の価値を高めることに直結します。
でも私たち石屋さんの多くは、この部分を説明することが苦手です。だけど私たちにはお墓の「コト」の部分を説明するaccountability【説明責任】があるように思えるのです。お墓を『不必要なモノ』として捉える人が増えてきているのだから、尚更です。
そこを「最近の消費者はけしからん!」と言ってしまうのは、厳しい言い方をすればお門違いであり責任放棄です。それならば私たち石屋さんがお客さんを否定せず(ここが大切)にお墓の「コト」を伝える言葉を持つべきなのです。
お墓の目に見えない価値とは?
「モノ消費」から「コト消費」への変動の背景には、モノで満たされることに慣れた現代人が「モノとしての機能はもういいから、目に見えない価値が欲しい」という価値観に変化してきたというところがあります。
お墓で言うと、納骨できる機能であれば、永代供養墓でも樹木葬でも代用できます。お骨を海に撒いてしまう散骨はもっと合理的です。いや機能だけに注目すると、お墓は承継しなければならないシステムであり、煩わしくて面倒くさいということにもなるでしょう。
でも承継は置いといても【ご先祖様】の意味を伝えないことにはお墓のaccountability【説明責任】を果たしたことになりません。そして私たち日本人は潜在的に先祖供養を大切に思っています。
これは多くの方にとって目に見えないニーズでありますが、私の経験上、先祖供養のありがたみを知った方は、とても喜ばれることが多いです。知らなかったニーズに気づけたからですね。つまり目に見えない価値を知り、お墓の価値が高まったということです。
ちょっと極論にも思えるかもしれないので、実際の文化庁の統計データを基に話をさせていただきます。
日本人の先祖供養の意識
こちらは文化庁の「日本人の国民性調査」の結果をグラフにしたものです。日本人の宗教観に関するデータがあったので参考にさせてもらいます。
昭和33年から平成25年までの推移を表したものですが、宗教を信じる人の割合はだいたい30%前後になります。少ないですね。
そして「宗教心は大切か」という問いに対しては、平成25年で全体の66%が大切だと答えています。そして「宗教を信じている人」と「宗教は大切」の割合を平成25年で比較すると、なんと38%ものギャップがあります。この差って何なのでしょう?
最後に「先祖を尊ぶか」に関する意識を見るとだいたい60%台を推移していることがわかります。平成25年で比較するとほぼ「宗教心は大切か」の結果に近くなります。ちなみに「一年の内で一度でもお墓参りに行く日本人の割合」もほぼ同じ割合です。
この結果を見て思うのですが、私たち日本人の多くは、潜在的に宗教に関心を抱き、そしてご先祖様を大切だと感じていて、ありがたみを感じたいというニーズを持っているということにならないでしょうか?飛躍していますか?
このデータを分析するに、またいのちの積み木の活動を通しても同じニーズを感じています。目に見えない【ご先祖様】を伝えることが、お客様にとっての価値創造につながり「コト消費」を満たすということです。
[ad#co-2]お伊勢参りで感じたこと
ちょっとだけ話が脱線します。私ごとではありますが、伊勢神宮に参拝してきました。
個人的に令和元年のGWをgolden weekではなくてGratitude Week(グラティチュード ウィーク)と定め、今までの人生を振り返りあらゆる自然や人々に感謝をする週間にしています。
今年の4月26日で43才を迎えました。後厄も終わり、今までの半生を無事に過ごせてきたことに感謝しております。そして、タイミングがちょうど重なるように平和の時代が終わりを告げ、新しい令和の時代が始まります。
なのでこの機会にと人生初のお伊勢参りをしてきました。43年間の感謝の心を表しきるのには、伊勢神宮をおいて他にないと感じたからです。
ちなみに多くの方が勘違いをされていますが、神社はお願いをしに行く場所ではなくて、感謝をする場所です。
私たちは自然と共に生きていて、すでに沢山の恵みをいただいてるので、その恩恵に対する感謝を届けるための場所が神社なのです。
私たちは、自分が今ここにいることを当たり前のように感じてしまいますが、けしてそんなことはありません。生きているだけで奇跡的なことであり、今まさにありがたい恩恵を受け続けているのです。
こちらは、日本の神社について海外の方に説明をしているわかりやすい動画です。
私は43年間の人生の中で、多くの感謝しきれないほどの恩恵を受けています。伊勢神宮の正宮でお祈りをした際に、その想いが胸に込み上げ、ただただ涙が溢れました。
ただただありがたい。私は「自然」や「縁ある皆さん」や「ご先祖様」のおかげで生きています。そんなことが胸の奥から込み上げて、涙がとめどなく流れました。
お伊勢参りをする人が増えている
話を戻します。伊勢神宮は太陽の神様である天照大御神(アマテラスオオミカミ)が祀られていますが、日本人の総氏神でもあります。つまり全ての日本人のルーツだと言うことですね。
伊勢神宮を参拝して気づいたのは、参拝者が多いということ。令和元年のGWということもありますが、朝の5時前の外宮でかなりの行列ができていました。実は、お伊勢参りは、近年ブームになっていて参拝者の数は7年連続で800万人を超えています。
交通網が整備されたり、遷宮の効果もありますが、それにしても世間一般的な宗教ばなれのイメージとほど遠い現状がそこにあります。これは、何も伊勢神宮だけの現状ではなくて、少し調べたら他の主要な神社でも参拝者数は増えていました。
ちょうど、先ほどの「宗教を信じている人」と「宗教は大切」だと感じている人の間の38%のギャップが頭に浮かびます。これが何を意味するのか?そして日本人は何を求めているのか?
「心の時代」とも言われる現代ですが、私たち石屋さんは、社会にどのように役立てるのかを丁寧に考える必要があると思うのです。
社会に求められないなら必要ありません。そして「モノ」を伝えているだけではどんどん不必要な「モノ」になっていくでしょう。私はお墓が社会に役立つものだと確信しています。そして日本人の心の奥底に眠っている【先祖供養】の概念は、大きな可能性を秘めていると感じています。なぜなら日本人の精神に深く根差しているものだからです。
[ad#co-3]まとめ
いろいろと書いてきましたが、私の結論としては、お墓を提供する人に【ご先祖様】の意味をきちんと伝えることは、その方にとってお墓を建てた恩恵を最大限に受けることにつながるということです。
まだまだ日本人の先祖供養に対する潜在的なニーズは高いです。だけど最初に話をしてもキョトンとして、見えない存在であるご先祖様にピンときてないことが多いのですが、しっかりと説明をすると何度目かの打合わせで、ふと涙を流されたりします。
見えない存在であるご先祖様を感じて感謝の念を覚えることは、なかなか難しいことですが、腑に落ちると心が震えるような体験と申しますか、自分が今生きているありがたみも深く感じることになります。
これはお墓の見えない価値を伝えるだけに留まらず、その人のあり方や生き方をも変えることにつながるかもしれません。話が脱線するので軽く触れますが「心の時代」とも言われる昨今、若者の自殺率が高くなり、精神疾患を患う方の割合も増えています。
便利で豊かな時代になった反面、些細なことに感謝する感性が同時に失われてきています。【当たり前】だと思うと足りない部分にばかり目がいき不満が出てきます。ただ生きているだけでもありがたいのです。
そして、お墓を通して【先祖供養】の意味を教えるのに最適なツールが『いのちの積み木』になります。我々石屋さんは「モノ」を伝えるだけでなく、お客様にお墓の「コト」について説明できる言葉を持つ必要性を感じます。
「いのちの積み木ファシリテーター養成講座」は、お墓の「コト」の部分を伝えるのに良く組み立てられた体系になっていますし、日々発展を続けています。6月に、名古屋・大阪・徳島でファシリテーター養成講座を行います。おかげさまで21日の名古屋はsold outしました。
ご興味のある方は、ぜひお申込みください。
1級お墓ディレクターの「なかの」はこんな人ですよ。
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こんな会社に勤めていますよ。
羽黒石材工業株式会社
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