茨城県の茨城県石材業協同組合連合会では、秘かに墓石の石質調査をけっこうな規模で行ってきました。
1.茨城県地域産業集積活性化計画支援事業(2003~2007)
・茨城大学工学部、工業技術センター窯業指導所が協力
・地元御影石と中国石との性能比較研究報告(2006年3月)
・御影石評価マニュアル(2008年3月、8霊園での石材劣化実態調査)
2.茨城県中小企業振興公社委託事業産・学・官共同研究(2007~2009)
・羽黒石材商工業協同組合、茨城大学工学部、(独)産業技術総合研究所
・研究成果報告書(2010年3月)
・花崗岩石材中の不飽和浸透流の研究(中性子ラジオグラフィ試験)
(放射線利用振興協会中性子利用技術移転推進プログラム) (日本原子力研究開発機構先端研究施設共用促進事業)
3.「石材学」2013年3月茨城県石材業協同組合連合会発行
『日本の石は、中国産と比較して概ね風化に強い!』
というのは、経験のある石屋さんなら疑う余地のないところだと思いますが、そこを科学的な裏付けをもって解明したいからとの思いからでした。
石質調査の結果、最終的には、概ね日本の石は優秀であるという結論を得ています。更に長谷川社長は、墓石に最も悪影響を与える『エフロレッセンス』の存在を重く見て、その後、その解明に研究を重ね、同業者にアドバイスを与えられるまでになっています。
ということで、実際に研究データを紹介を踏まえて紹介させていただきます。途中データばかりで理解しにくいかもしれませんが、最後の方に要点をまとめていますので、そこだけでも読んでいただけると幸いです。
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目次
2400区画をサンプリングしての墓石の劣化調査
茨城県は、東が太平洋に面し長い海岸線を形成し、北に上がるほど、山がちになり寒冷地にもなります。墓石にとって悪環境の1つが塩害であり、潮風に晒される過酷な環境が多い茨城県の霊園・墓地は、調査環境としては適していました。
上記の各研究論文は、国や県の研究施設と研究者の協力を仰ぎ、科学的に分析し、質・量共に学術論文として十分通用する内容になっています。
10年に渡る調査で、環境の違う8霊園を対象として現地調査を行い、約2400区画をサンプリングして劣化調査を行ってきました。そこで石材の劣化の傾向をつかみデータ化しています。
石材劣化実態調査
調査場所
海岸部、平野部、山間部、都市部、内陸部
墓石の劣化調査個体数
石塔 | 外柵 | 石材種類 | 建立後の経年数 |
2473基 | 2407組 | 141種 | 0~40年 |
石材劣化分類
劣化度 1 | 色やけ・変色・色落ち・艶とび・水じみ・濡れ |
劣化度 2 | 光沢度低下・吸着物・エフロ・変色・鉄気 |
劣化度 3 | ざらつき・キズ・ピンホール・ポップアウト・穴あき |
劣化度 4 | 剥離 |
劣化度 5 | 割れ |
劣化なしと劣化度1を「健全」 とし、この全体に対する割合を「健全度」と定義しています。
主な石材での劣化状況・経年劣化(%は健全率を表す)
茨城県産
稲田石 | 8年経過で劣化が始まり、30年位までは60%前後で推移。 |
真壁小目石 | 20年80%以上。 |
茨城県産の石は経年でざらつきがでるが、重篤な劣化は少ないのが特徴です。
中国産
G603 | 8年まで65% 18~20年37% |
G614 | 3~5年60% 6~8年50% 9~11年40% 12~14年30% |
G623 | 3~5年65% 18年以上30% |
中国産は日本産と比較して、早期に健全率が悪くなる傾向にあり、また劣化も剥離等の深刻な被害が出やすくなります。
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2400を超える墓石を比較してわかったこと
重篤な劣化の少ない茨城県産石種!
8つの異なる立地条件の霊園で行った劣化実態調査の結果は、茨城県産の石種が、中国産の石種と比較して劣化に強いというものでした。
なぜ、劣化の進行度合いが違うのでしょうか?大きな原因は、御影石を構成する鉱物の違いによります。
同じ花崗岩でも性質が異なる!
御影石は鉱物の集合体
御影石と一口に言っても石を構成する鉱物の割合は様々で、鉱物組成割合は石種によって違います。
稲田石や真壁小目石は、二酸化ケイ素の割合が多く、酸性雨などの科学的な劣化に強くなります。また日本の石種は、全般的に圧縮強度が高めですが、鉱物同士の繋がりが密だからです。つまり、剥離や割れなどの現象が起きにくくなります。比較的、劣化に強い茨城県産の石種ですが、霊園によっては、ザラツキなどの被害が出ていることもあります。
劣化が酷いのは、平野部>沿岸部
意外に思われるかもしれませんが、経年劣化が酷いのは、塩害の被害のある海沿いより内陸部の方が酷いことでした。ただし、酷いところには条件があって、お墓の周りが土の墓地です。特に、サビが出やすい中国産のG688hは、目立って酷い状態のものが多くありました。
石が直接土に触れたり、雨の跳ね返りによって土が石についたりしているお墓は、劣化が非常に進行しやすい傾向にありました。土に含まれる成分、特に有機物が悪さをしてる可能性があります。また、土に触れなくても目だって劣化が侵攻している墓地もありましたが、おそらく農薬の影響によるものだろうと思われます。
G688hに限らず、中国産の山西黒もサビの出方が酷い石でしたが、新規開発され市場に出回ったのはいいけど、クレームの嵐で次第に流通しなくなる石種もあります。国産の昔から使用されている石種は実績も豊富で、安心して利用できるのが魅力です。
エフロレッセンスには要注意!
エフロレッセンスが御影石の内部から吹き出し、石肌がポロポロと剥離しているお墓もありました。これは、沿岸部、内陸部関係なく、発生していました。特に日陰が多く日中日が当たらないような霊園・墓地に多く起こります。なので、これから墓地を購入したいという方に言えるのは、なるべく日陰の区画は選らばないこと、そして、エフロレッセンスに強いお墓の構造を知っている石材店に依頼することです。
中国産墓石は隠していたキズやムラが見えているものが多い
これは、中国産墓石の1つの特徴でもあるのですが、キズやムラといった模様のあるものを色を塗るなどして誤魔化すことがあります。これはお墓を建ててから半年~数年で出てくるもので、なかなか気づくことができません。
また、薬品処理の問題点は他にもあり、天然の御影石に科学的な薬品が化合して何らかの悪影響を及ぼす可能性があることです。中国産墓石には原因が良く分からない風化が起こっていることが良くあり、何らかの添加物が悪さをしていることも考えられます。
日本の墓石でもキズやムラが出ている場合もありますが、それは20年以上前に建てられたものであり、近年は品質要求も厳しくなり、見られなくなりました。
中国の工場での実際の薬品を紹介している記事がありますので、興味のある方は覗いてみてください。
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まとめ
劣化実態調査を行うことにより、茨城県産の石種が優秀であることがわかりましたが、同時に、石が劣化するメカニズムも解明されてきました。
塩害によりサビが出るお墓もありますが、それよりも土による被害の方が大きい場合が多い、また石にとって一番の大敵はエフロレッセンスで、内部から石をポロポロ破壊していました。
御影石の風化のメカニズムが、これだけで解明されたわけではありませんが、2400を超える区画を分析し、科学的な実験を繰り返したことで、傾向と対策はわかってきました。
これらの結果を参考に、科学的根拠に基づいた、劣化に強いお墓の構造や施工方法を考慮するようになりました。よりよい、お墓づくりに活かされています。
1級お墓ディレクターの「なかの」はこんな人ですよ。
自己紹介・プロフィール
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羽黒石材工業株式会社
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