お墓の基礎工事には、建築物のような全国共通の法的な施工基準がありません。だからこそ、石材店の技術や考え方によって仕上がりが大きく変わります。
私は1級土木施工管理技士として、数々の工事で管理監督業務を行ってきました。土木工事の理論と経験には自信があります。
そんな私が、お墓の基礎工事でやってはいけないと考える3つのことをお伝えします。
- お墓の基礎工事には全国共通の法的な施工基準がなく、地域や石材店によって工法が違う。
- 生コンの手練りは原則避け、プラントで品質管理された生コンを使う。水を足す「シャブコン」は絶対にダメ。
- 鉄筋のかぶり厚さは約6cmを目安に確保する。スペーサーブロックを使い、鉄筋を地面から適切に浮かせる。

お墓の基礎工事には法的な定めがない
一般的な土木工事には、使用材料や施工方法についての基準やマニュアルがあり、検査によって品質を確かめる仕組みがあります。
決められた基準に従って施工し、検査で確認する。これが土木工事の基本です。
ところが、お墓の基礎工事には、全国で統一された法的な施工基準がありません。
建築基準法には鉄筋コンクリートの基準がありますが、一般的なお墓の基礎に、そのまま適用されるわけではないのです。
写真は、お墓のべた基礎にコンクリートを打設したところです。
納骨室の下に四角い穴があり、そのほかに塩ビ管でつくった丸い穴も見えます。
四角い穴は、遺骨を土に還すためのもの。丸い穴は、雨水を逃がす水抜き穴です。水抜きは4か所ほど設けることがあります。
このように、お墓の基礎には建築物とは違う構造上の特徴もあります。
地域によってお墓の基礎工事は違う
お墓の基礎工事は、地域によって驚くほど違います。
北海道では、鉄筋を入れない無筋コンクリートで、とても厚い基礎をつくるそうです。
一方、地方によっては、モルタルを薄く敷くだけのところもあります。
関東では、建築基準法に準拠した構造物に近い、鉄筋コンクリートの基礎が多くつくられています。
| 地域 | 基礎工事の特徴 |
| 北海道 | 鉄筋を入れず、厚いコンクリート基礎をつくる例があると聞く |
| 一部の地域 | モルタルを敷く程度の簡素な施工もある |
| 関東 | 建築物に近い鉄筋コンクリートの基礎が多い |
その土地の慣習には、それぞれの事情があるのでしょう。私の知らない理由もあるかもしれません。
墓相を重視したお墓づくりでは、また違う考え方もあります。
ただし、どんな地域でも共通して大切なのは、長い年月に耐えられる基礎をつくることです。
実際には、それぞれの石屋さんの考え方によって、基礎工事の内容が決まっているのです。
お墓の基礎工事でやってはいけない3つのこと
古いコンクリート基礎を壊してみると、その強さは体感できます。
カチカチで、なかなか壊れないコンクリートもあれば、ボロボロと簡単に崩れるものもあります。
鉄筋が入っているかどうかでも、壊しやすさはまったく違います。
もちろん、壊しやすさだけでコンクリートの圧縮強度を正確に判断できるわけではありません。
それでも、基礎のつくり方によって大きな違いが生まれることは確かです。
ここからは、私の経験と土木の知識から、高品質な基礎をつくるために避けたい3つの施工方法を紹介します。
① 手練りの生コンで基礎をつくる
お墓の基礎に使うコンクリートは、できるだけ生コンプラントから購入することをおすすめします。
生コンプラントでは、セメント、砂、砂利、水などの材料を計量し、配合を管理しています。
さらに、AE剤や減水剤などの混和剤を使い、施工しやすさや品質を調整します。
こうして品質管理された生コンが、ミキサー車で現場まで運ばれてきます。
あわせて読みたい:セメント・モルタル・コンクリートの違い|配合と使い分けを解説
一方、手練りのコンクリートは、材料を現場で混ぜてつくるものです。
トロ船という大きな容器にセメント、砂、砂利、水を入れ、スコップなどを使って練り混ぜます。

手練りは、とにかく重労働です。
それだけではありません。
大量のコンクリートを均一に練り混ぜるのは大変で、水の量や材料の配合にもばらつきが出やすくなります。
そのため、品質が安定しません。
ミキサー車で運搬してもらえば、材料の配合を管理した生コンを使えますし、作業もずいぶん楽になります。
ただし、手練りが必要な場合もあります。
ごく少量のコンクリートしか使わない場合
山奥など、ミキサー車での運搬が困難な場合
こうした場合に限って、手練りを選ぶのがよいと思います。
生コンは少量で発注すると割高になります。費用面で手練りを選びたくなる事情もわかりますが、基礎の品質を優先して考えたいところです。
② 生コンに水を足してシャブコンにする
これは絶対にやってはいけません。
プラントから運ばれてきた生コンに、現場で勝手に水を加えることです。
生コンが硬くて流し込みにくいからと、水を加えて軟らかくする。これを俗に「シャブコン」と呼びます。
水を足せば施工は楽になるかもしれません。
しかし、その分だけ水セメント比が大きくなり、コンクリートの強度が落ちます。
余分な水が抜けたあとには内部に空隙が残りやすく、耐久性にも悪い影響を与えます。
せっかくプラントで品質管理された生コンを購入しても、現場で水を加えてしまったら台無しです。
シャブコンを防ぐにはスランプを注文する
コンクリートの軟らかさは「スランプ」という数値で指定できます。
流し込みやすいコンクリートが必要なら、最初から施工条件に合ったスランプを注文すればよいのです。
また、夏場などで生コンの流動性が落ちやすいときには、流動化剤を使う方法もあります。
ただし、流動化剤は生コン工場と相談し、適切に管理して使うものです。
勝手に水を足すこととは、まったく違います。
暑い時期の生コンの扱いについては、別の記事でも解説しています。
あわせて読みたい:暑中コンクリートとは?夏の打設の4つの対策と養生期間
シャブコンがダメな理由と対策は、私のYouTubeでも詳しく説明しています。
生コンに水を混ぜてしまうシャブコンを打つダメな理由と対策法
③ 鉄筋のかぶり厚さを確保しない
3つ目は、鉄筋のかぶり厚さです。
当たり前ですが、鉄筋はサビます。
かぶり厚さとは、コンクリートの表面から、その内側にある鉄筋の表面までの距離です。
鉄筋はコンクリートに覆われ、強いアルカリ性の環境に守られているため、通常はさびにくい状態にあります。
しかし、年月が経ち、コンクリートの中性化などによって鉄筋が腐食し始めると、さびの膨張でコンクリートにひび割れが生じます。
さらに進行すると、表面が割れて剥がれ落ちる「爆裂現象」が起こります。
この現象について、無頓着な石屋さんが多いのです。
あわせて読みたい:コンクリートの爆裂とは?中性化の原因とお墓の基礎を長持ちさせる方法
鉄筋のかぶり厚さは約6cmを目安に
土木の立場から考えると、お墓の鉄筋コンクリート基礎では、かぶり厚さを最低でも60mm程度確保するのが理想です。
参考になるのが、建築基準法施行令第79条です。
建築物の鉄筋コンクリートでは、部材によって必要なかぶり厚さが定められています。
| 部材 | かぶり厚さ |
| 耐力壁以外の壁・床 | 2cm以上 |
| 耐力壁・柱・梁 | 3cm以上 |
| 直接土に接する壁・柱・床・梁など | 4cm以上 |
| 基礎(布基礎の立上り部分を除く) | 6cm以上 |
※建築基準法施行令第79条の原則的な規定を整理したものです。お墓の基礎に直接適用される数値ではありません。
お墓の基礎でも、この基準を参考にする価値があります。
特に地面に接する底面は、6cmを確保したうえで、条件によっては8〜10cm程度の余裕を持たせてもよいでしょう。
大切なのは、コンクリートの上面だけでなく、下面や側面でも十分なかぶり厚さを確保することです。
鉄筋自体のさびについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
あわせて読みたい:基礎の鉄筋のサビは施工不良?大丈夫なサビと、本当に見るべき「かぶり厚」
スペーサーブロックで鉄筋を浮かせる
鉄筋を適切な高さに保つために使うのが、スペーサーブロックです。
コンクリート製の小さなブロックを鉄筋の下に敷き、鉄筋が地面や型枠に接触しないようにします。
現場では「サイコロ」と呼ばれるものも使います。
これによって、鉄筋の下までコンクリートが入り、必要なかぶり厚さを確保できます。
ところが、鉄筋を地面に刺し、その鉄筋に配筋を縛り付けて浮かせている石屋さんも見かけます。
これは絶対にダメです。
地面に刺した鉄筋がコンクリート内部までつながっていると、その部分が腐食の原因になります。
「どうぞ、爆裂してください。」
と言っているようなものです。
実際、爆裂した基礎は、解体するときに非常に楽です。
それだけ傷んでいるということでもあります。
スペーサーブロックを使えば避けられる問題を、わざわざつくる必要はありません。
あわせて読みたい:鉄筋スペーサーの種類と使い方|サイコロ・ドーナツの違いと設置個数
お墓の基礎工事を頼むときに確認したいこと
では、お墓を建てる人は、どこを確認すればよいのでしょうか。
石材店には、次の点を聞いてみてください。
| 確認すること | 石材店に聞きたい内容 |
| コンクリート | プラントの生コンを使うか |
| 配合と施工 | 呼び強度とスランプはどうするか |
| 基礎の厚さ | 何cmの厚さでつくるか |
| 鉄筋 | 鉄筋の太さ・間隔・配置はどうするか |
| かぶり厚さ | スペーサーを使って確保するか |
| 水抜き | 排水用の穴をどこに設けるか |
| 養生 | 打設後、どのようにコンクリートを養生するか |
基礎の厚さだけで良し悪しが決まるわけではありません。
地盤の状態やお墓の大きさ、鉄筋の配置などを含めて考える必要があります。
また、基礎工事の価格は、墓地の広さや施工条件、使用する材料によって変わります。
見積書に「基礎工事一式」とだけ書いてあっても、どんな基礎をつくるのかはわかりません。
金額だけで比較するのではなく、施工内容も確かめてください。
お墓の基礎工事全体の流れや価格については、こちらにまとめています。
あわせて読みたい:お墓の基礎工事の流れと価格のポイント|地盤から養生まで
よくある質問
- Q. お墓の基礎は何cmの厚さが必要ですか?
-
全国共通の厚さの決まりはありません。
お墓の大きさ、重量、地盤、鉄筋の配置によって必要な厚さは変わります。
たとえば、15cm程度の基礎と30cm程度の基礎では、適した配筋方法も違います。
厚ければ必ず安心ということではなく、構造全体で判断することが大切です。
- Q. お墓の基礎にある四角い穴や塩ビ管は何ですか?
-
四角い穴は、納骨室の下に設ける、遺骨を土に還すための穴です。
塩ビ管で設ける丸い穴は、雨水を逃がすための水抜き穴です。4か所ほど設けることもあります。
どちらも必要な役割があり、穴があるから欠陥というわけではありません。
- Q. お墓の基礎工事には何日かかりますか?
-
工事の規模や地盤の状態、天候によって違います。
掘削、砕石の締固め、鉄筋と型枠の組立て、コンクリート打設という工程があり、さらに打設後の養生期間も必要です。
コンクリートを打ち終えたからといって、すぐに墓石を据え付けてよいわけではありません。
工程表や据付けまでの期間を石材店に確認しましょう。
- Q. お墓の基礎工事の価格はどのくらいですか?
-
墓地の面積、地盤の状態、基礎の厚さ、鉄筋の量、重機やミキサー車が入れるかどうかで変わります。
同じ「基礎工事一式」という見積りでも、施工内容には大きな差があります。
まずは基礎の仕様を確認し、同じ条件で価格を比べることをおすすめします。
- Q. 古いお墓のコンクリート基礎は再利用できますか?
-
基本的には、古い基礎をそのまま再利用することはおすすめしません。
昔の基礎には鉄筋が入っていないものもあり、内部の状態もわからないためです。
ただし、鉄筋の入った健全な基礎であれば、条件によってかさ上げなどの方法を検討できる場合があります。
あわせて読みたい:お墓の建て替えで基礎は再利用できる?寿命と嵩上げの注意点
まとめ|お墓の基礎は見えなくなる部分こそ丁寧に
今回紹介した3つのことは、土木工事に従事している人なら当たり前の施工管理です。
しかし、お墓だけをつくっている石屋さんには、なじみがない場合もあります。
全国共通の施工基準がないからこそ、石材店の知識と技術が大切になるのです。
もちろん、お墓には地域の慣習があり、墓相など別の考え方でつくられるものもあります。すべてのお墓に同じ工法を当てはめるべきだとは思いません。
それでも、お墓は一生に一度、あるいは末代まで使う大きな買い物です。
その年月に耐えられる、きちんとした基礎をつくるべきだと私は考えています。
生コンが硬いから水を足す。スペーサーブロックがないから鉄筋で代用する。
そんな安易な施工をしても、完成してしまえば見えなくなります。
だからこそ、見えない部分を丁寧につくることが大切なのです。
元石屋のひとこと
りょういちお墓の基礎は、完成したらほとんど見えません。だからこそ、手を抜かずにきちんとつくってほしい。末代まで使うお墓ですからね。
この記事の根拠
- 建築基準法施行令 第79条「鉄筋のかぶり厚さ」(建築物の鉄筋コンクリートについて、部材ごとのかぶり厚さを定めた条文。一般的なお墓の基礎に直接適用するものではなく、技術的な参考基準として紹介しています。)
- 国土交通省「鉄筋かぶり厚さに関する技術資料」(建築基準法施行令第79条を参考とした、鉄筋コンクリートのかぶり厚さの説明。)
- 一般社団法人 セメント協会「セメント・コンクリートに関するQ&A」(水量とコンクリートの品質、鉄筋の腐食、コンクリートの中性化についての技術解説。)
- 三重県生コンクリート工業組合「生コンクリートとは」(JIS A 5308に基づく生コンクリートの製造と品質管理について。)
- 伊丹市「生コンクリート品質低下防止対策指針」(練混ぜ後の不法加水と品質管理について。)
- おはかのなかのブログ「お墓の基礎工事」
- 私の経験:1級土木施工管理技士としての管理監督業務。(「法的な定め」の断定を整理する 「絶対にダメ」の対象を明確にする 冒頭で読者の確認行動を示す)








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