寒中コンクリートの施工は、強度補正(温度補正)or 早強 or 防凍剤(耐寒剤)のどれがいい?

皆さん、寒中コンクリートを知っていますか?

コンクリート標準示方書には、日平均気温(1時から24時までの毎正時24回の観測値の平均)が4℃以下になることが予想されるときは、寒中コンクリートとしての施工を行わなければならないとされています。

東京の日平均気温 気象庁

東京でも12~2月は寒中コンクリートが基本になるんですね。

なかの
こんにちは、1級土木施工管理技士のなかのFacebook Twitter))です。

コンクリートは凍結すると著しく強度が落ちます。

なので、寒冷下においても所要の品質が得られるように、材料、配合、練混ぜ、運搬、打込み、養生、型枠および支保工等について適切な措置をとらなければなりません。

これを寒中コンクリートと言います。

 

寒中コンクリートの材料配合のアプローチとして一般的に利用されるのが、強度を上げる強度補正(温度補正)早強コンクリート防凍剤(耐寒剤)。

コテ仕上げまで含めて考えると早く仕上げてマットなどでの養生をしっかりするための意味も含まれてきます。

どれが適正な寒中コンクリートになるのか意見が分かれるところでもあるのですが、自分の経験から説明をしてみたいと思います。

 

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目次

寒中コンクリートには早強コンクリートが最適?

寒中コンクリート

始めに断っておきますが、この話に関しては技術者によっても意見が分かれるところではあります。

以前私が工事を担当していた大手ゼネコンでは、寒中コンクリートとして、早強コンクリートを使用していたのが、ある日を境に強度を上げての強度補正(温度補正)に変わりました。

 

早強コンクリートと強度補正(温度補正)ついて少し説明。

早強コンクリート

普通ポルトランドセメントが材齢3日で発現する強さを1日で、また、7日で発現する強さを3日で達成する。

緊急工事用、寒冷期の工事用、コンクリート製品用などに使用される。

参照元:住友大阪セメント

早強コンクリートは早く強度がでるので、工期短縮を目的として使用されます。

初期強度が高くなるので、寒中コンクリートの施工にも利用されます。

ただ欠点もあって硬化が速いので、ひび割れのリスクが高まります。

 

強度補正(温度補正)

コンクリートには強度が定められていています。

強度補正(温度補正)とは、例えば、21N/mm2の強度に設定されている構造物があったとしたら、強度を足して27N/mm2にあげることです。

コンクリートは水和反応という水とセメントが科学反応を起こして硬化しますが、強度が高いコンクリートほどセメント分を多く含んでいて熱を発します。

温かければ凍りにくい、だから寒中コンクリートになるという理屈です。

 

大手ゼネコンにおいての早強コンクリートから強度補正への変化した際に戸惑ったのですが、強度補正の方がお客さんに対するイメージがいいそうです。

だって、最終的な強度は上がりますから。

早強コンクリートだと、21N/mm2はあくまで21N/mm2です。

 

また、コンクリートは初期強度を一気にあげるよりも、基本的にゆっくりと硬化した方が最終的な強度があがります。

なので、コンクリートの品質においては、強度補正(温度補正)に分がありそうです。

早強コンクリートは、寒中コンクリートとしても使用はされていますが、なんとなく突貫工事のイメージがあります。

 

でも、施工のしやすさから言うと、早強コンクリートの方が作業員のウケがいいです。

例えば、普通コンクリートだと仕上がるのに深夜まで掛かる作業が、夕方に終わったりします。

建設現場での深夜のコンクリート仕上げは冬季においては当たり前にあります。

寒いですよ。深夜の作業。

 

早強コンクリートと強度補正(温度補正)の価格差は?

そんな早強コンクリートと強度補正ですが、価格差はいかほどになるのでしょうか?

実は、両方ともそんなに価格は変わりません。

 

大阪広域生コンクリート価格表  1m3辺り

普通コンクリート 21N/mm2  18700円 27N/mm2  19800円

早強コンクリート 21N/mm2  19500円

 

大阪高っ!生コン高いですね!

関東と比較にはなりませんが、ネットに情報がなかったのでお借りしました。

 

でも、価格差はこんなものです。

強度補正と早強コンクリートの差は300円しかありませんし、普通コンクリートの21N/mm2と比較しても1m3辺り1000円程度しか違わない。

茨城県はお墓の面積が大きいけど、それでも3㎥なんて使うのは稀で、それでもたかだか3000円の世界です。

それで品質を買えるのだから安いものです。

 

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防凍剤(耐寒剤)について

コンクリートミキサー車

防凍剤は、コンクリートを手練りでつくるような小規模工事に良く利用されます。

ミキサー車で生コンを搬入するのなら、高価な防凍剤よりも強度補正か早強コンクリートの方が安いし練り混ぜる手間もいりません。

 

防凍剤には塩化カルシウムが入っているタイプと無塩タイプがあります。

 

同じ18ℓ入りで塩化カルシウムタイプが2980円で、無塩タイプが5000円。

けっこうなお値段の差です。

 

凍結防止の塩カルは雪道でも良く利用されている


塩化カルシウムとは、雪が降った道に撒くあれです。俗にいう塩カル。

凍結防止になるのは何となく理解できるかと思います。

 

昔ながらの職人さんは、塩カルを直接コンクリートやモルタルに混ぜてしまいます。

「こうすれば凍らないんだよ!」

「いや、ダメだよ!」

ほんと、おっちゃんは気の抜けない時があるので困ります。

 

確かに凍りずらくなりますが、コンクリートの品質には悪影響を与えます。

そして鉄がサビます。

雪道を走ってきた後は、足回りがサビやすくなるので洗車をした方がいいのと同じ理屈です。

そんな塩カルのイメージがあるので、防凍剤でも塩カルタイプは敬遠してしまいます。

 

因みに早強コンクリートと防凍剤(耐寒促進剤)を併用した場合についての学術論文の記述。

早強セメントと耐寒促進剤を併用したコンクリートの性質(物性一般)

本研究では,早強ボルトランドセメントと耐寒促進剤を併用したコンクリートについて、凍結温度、凝結・硬化性状、初期凍害に対する抵抗性、圧縮強度増進性状に関する実験を行い、普通ボルトランドセメントを用いたコンクリートの試験結果と比較検討した。

その結果、早強ボルトランドセメントは単独でも初期凍害の防止のためには十分な早強性を有しており、経済性を考慮すると耐寒促進剤と併用する効果は少なく、耐寒促進剤は早強ボルトランドセメントが使用できない状況での利用が望ましいことが明らかとなった。

併用するのはあんまり意味なさそうですね。

 

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まとめ

寒中コンクリートの施工は、強度補正(温度補正) or 早強 or 防凍剤(耐寒剤)のどれがいい?

ということでしたが、いかがでしたでしょうか?

 

個人的には、強度補正(温度補正)で呼び強度を上げてしまうのが品質も兼ね備えていいと思います。

そして、工期がない場合を除いて実際にそうしています。

早強コンクリートは、特に表面仕上げが困難だと予想される時には、早めに仕上げることも考えて使用することもあります。

防凍剤は、手練りの施工の場合、特に冬季のモルタル施工には重宝します。

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この記事を書いた人

中野良一のアバター 中野良一 羽黒石材工業㈱営業部長

1級お墓ディレクター・1級土木施工管理技士
見に見えない存在であるご先祖を「見える化」した【いのちの積み木】→http://senzo.inotinotsumiki.com 雪のように白くてキレイな【淡雪五輪塔】のプロデュース。

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