「あの世はどこにある?」
前回のブログに引き続き、民俗学の父である柳田国男の著書『先祖の話』の話をさせていただきます。
日本には3種類の「あの世」があります。
柳田国男は、昭和初期の頃に日本人の口頭伝承・伝統ことば・固有信仰の収集と研究、出版活動などを精力的に行いました。
それは、名もなき庶民(常民)の歴史や文化を明らかにしたいとの考えからです。
それでは、日本人の一般庶民の「あの世」に関する感覚を振り返ってみましょう。
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目次
あの世はどこにある?~民俗信仰における3種類のあの世について解説
魂のふるさと・山と海
私が住んでいる茨城県にはつくば山という美しい山があります。
そのつくば山には、筑波山神社があり、神々が宿る山としての信仰があります。
このような霊山は、日本全国各地にあります。
「先祖の話」によると、亡くなった人の魂は、ふるさとの美しい山の頂上付近か、海のかなたへ帰ると信じられていました。
信仰の対象として古代人に祭られていた山:神奈備(かんなび)
海のはるか向こうにあると考えられていた不老不死の理想の国:常世の国(とこよのくに)
沖縄には「ニライカナイ」という常世の国があります。
山のふもとや海辺に社をたてて氏神様を定期的に招き、笛・太鼓や踊りでにぎやかにおまつりをします。
地下の「あの世」
日本神話である「古事記」や「日本書紀」には、イザナギの命(男神)とイザナミの命(女神)の話があります。
イザナミが亡くなって往ったのは「黄泉の国」という洞窟の中で、これは当時の古墳の石室をイメージしていると言われています。
ちなみに「古事記」から、日本神話におけるお墓のルーツを探ることができます。
イザナギは「黄泉の国」で、恐ろしい姿をしたイザナミに追いかけられるのですが、黄泉平坂を走って逃げました。
その際にあの世とこの世の入口を塞いだのが、お墓のルーツである千引岩(ちびきいわ)です。
ちなみに私中野は、島根県に実際にある千曳岩を見に行ったことがあります。黄泉平坂もちゃんとあって、独特な雰囲気がありました。
私たちはどの「あの世」にいくの?
ここで「おやっ?」と思った方もいらっしゃると思います。
さきほど、亡くなった人の魂は山や海のかなたに帰ると書いていたのに、「黄泉の国」も出てきました。
これは魂と亡骸が別々の「あの世」にいくことを意味しています。
山と海のかなたには、形のない魂が帰り。
「黄泉の国」へは、形のある亡骸が帰る。
それぞれの「自然」に帰るのです。
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