夏場のコンクリート工事は、時間との勝負です。
気温が高いと生コンの流動性が早く失われ、打継ぎの不具合やひび割れが起きやすくなります。
とくに注意したいのが「暑中コンクリート」。普段と同じ段取りで施工すると、思わぬ失敗につながります。
1級土木施工管理技士の私が、夏の生コン工事で大切な4つの対策と、打設後の養生方法を紹介します。生コン工場(プラント)やミキサー車側の対策には触れず、現場でできることに絞ります。「夏のコンクリートは特別」だと考えて、事前の計画や準備に役立ててください。
- 暑中コンクリートは、日平均気温が25℃を超えると予想される場合が目安。打込み温度は35℃以下を標準とする。
- 夏の打設は、①涼しい朝に施工する、②練混ぜから打込み終了までを1.5時間以内にする、③型枠・鉄筋・砕石を冷やす、④打込み後すぐに養生する、の4つが基本。
- 夏の養生は乾燥を防ぐことが大切。普通ポルトランドセメントなら、日平均気温15℃以上で湿潤養生5日間が標準的な目安となる。

暑中コンクリートとは?定義と施工する期間
暑中コンクリートとは、気温の高い時期に、品質を保つための特別な対策をして施工するコンクリートのことです。
土木学会のコンクリート標準示方書に基づく施工管理では、日平均気温が25℃を超えると予想される場合に、暑中コンクリートとして扱います。
ここで間違えやすいのが、気温の考え方です。
気温25℃は最高気温ではない
暑中コンクリートの判断に使う25℃は、日中の最高気温ではなく「日平均気温」です。
たとえば、最高気温が30℃でも、夜間に気温が下がって日平均気温が25℃以下なら、必ずしも暑中コンクリートの条件には当たりません。
反対に、夜間も暑さが続いて日平均気温が25℃を超えるなら、暑中コンクリートとしての対策が必要です。
暑中コンクリートの期間はいつからいつまで?
全国一律に「7月から9月まで」と決まっているわけではありません。
施工する地域や、その年の気温によって変わります。
なお、建築工事のJASS 5では、暑中期間を日平均気温の平年値が25℃を超える期間として扱います。
実際の施工では、天気予報だけでなく、地域の気象条件や適用する仕様書を確認します。
打込み時のコンクリート温度は35℃以下が標準
土木の暑中コンクリートでは、打込み時のコンクリート温度を35℃以下とするのが標準です。
これは外気温ではなく、生コンそのものの温度です。
コンクリート温度が高くなると、スランプの低下、コールドジョイント、ひび割れなどの危険が増します。
35℃を超えることが避けられない場合は、所要の品質を確保できるか事前に検討する必要があります。
なお、生コン工場での冷却や配合の工夫、ミキサー車での対策は、この記事では詳しく扱いません。ここからは、施工現場でできる対策に絞って説明します。
夏の生コンはなぜ早く固まる?ひび割れの原因
「おーい、生コンがちょっと硬いから水を入れてくれ」
夏場のコンクリート工事では、こんな言葉を耳にすることがあります。
生コンは、セメントと水が反応する「水和反応」によって固まります。
気温やコンクリート温度が高いと、この反応が進みやすくなり、凝結が早まります。
さらに、水分の蒸発も速くなります。
そのため、時間がたった生コンは流動性を失い、施工しにくくなっていきます。
ただし、流動性が失われることと、十分な強度が出ることは別の話です。
早く固まり始めるからといって、早く強いコンクリートになるわけではありません。
夏のコンクリートで起きやすい不具合
- 流動性が低下し、型枠の隅まで生コンが行き渡りにくくなる。
- 先に打ったコンクリートと次に打つコンクリートが一体化しにくくなり、コールドジョイントが発生する。
- 表面の水分が急激に失われ、プラスチック収縮ひび割れが発生する。
- 内部と表面の温度差や、硬化後の乾燥収縮によって、ひび割れが生じることがある。
コンクリートは待ってくれません。
打込みの途中で慌てないように、事前の段取りが大切です。
私のYouTubeでも、夏のコンクリートがひび割れる理由を、水和反応から説明しています。
【動画:夏のコンクリートがひび割れる理由】
生コンに水を足す「しゃぶコン」はダメ
生コンが硬くなってくると、水を足して柔らかくしたくなります。
ミキサー車のドラムに水を入れ、もう一度回して練り直す。
これが俗にいう「しゃぶコン(シャブコン)」です。
水を足せば、たしかに一時的には柔らかくなります。
しかし、勝手に水を加えると、水セメント比が大きくなり、当初の配合で予定した強度や耐久性を確保できなくなるおそれがあります。
柔らかくなったからといって、コンクリートの品質が回復したわけではありません。
夏場の施工性を確保するには、工場との打ち合わせで適切な配合や混和剤を検討し、現場での待機時間を減らすことが大切です。
暑中コンクリートの温度管理については、別の動画でも説明しています。
【動画:生コンに氷を入れるって本当?暑中コンクリートの現場対応について解説】
暑中コンクリートの4つの対策
それでは、夏場に品質のよいコンクリートを打設するには、どうしたらよいのでしょうか。
私が紹介したいのは、次の4つです。
① 気温の低い日の朝に施工する
工程の都合もありますが、できるだけ気温の低い日を選び、朝早くから施工します。
夏場は朝と昼で気温が大きく変わります。
朝の涼しいうちに打込みを進めれば、コンクリートや型枠の温度上昇を抑えやすくなります。
午後に発生しやすい夕立を避けられることも、朝に施工する利点です。
大きな建設工事では、生コン工場との調整によって早朝や夜間の出荷に対応してもらうこともあります。
ただし、すべての生コン工場が早朝・夜間の出荷に対応しているわけではありません。
工程と出荷時間を事前に相談しておきましょう。
また、夏の炎天下では作業員の熱中症にも注意が必要です。
暑さの厳しい時間帯を避けることは、品質管理だけでなく、安全管理にもつながります。
② 練混ぜから打込み終了までの時間を短くする
夏場の生コンは、時間がたつほど施工しにくくなります。
国土交通省の土木工事共通仕様書では、日平均の外気温が25℃を超える場合、練混ぜから打込み終了までを原則1.5時間以内としています。
25℃以下の場合は、原則2時間以内です。
ここでいう1.5時間は、生コン車が現場に到着してからの時間ではありません。
工場で練り混ぜを始めてから、現場で打込みを終えるまでの時間です。
そのため、移動時間や現場での待機時間も含まれます。
対策としては、次のような段取りが有効です。
- できるだけ現場に近い生コン工場へ発注する。
- 生コン車が到着する前に、型枠、鉄筋、道具の準備を終える。
- 必要な作業員を確保する。
- 打込みの順番と、締固めの方法を決めておく。
- 生コン車が現場で長時間待機しないようにする。
大切なのは、急いで雑に施工することではありません。
準備を終えてから生コンを呼び、打込みが始まったら作業を止めないことです。
③ 型枠・鉄筋・砕石に散水して冷やす
夏場の鉄筋は、直射日光によって高温になります。
同じように、型枠や基礎砕石も熱を持っています。
そのまま生コンを打ち込むと、接触するコンクリートの温度や水分状態に悪影響を与えることがあります。
そこで、打込み前に散水して冷やします。
型枠や砕石を適度に湿らせることで、コンクリートから水分が急に吸い取られることも防ぎます。
ただし、型枠の底に水がたまった状態で打設するのはよくありません。
散水後は、余分な水を残さないようにします。
お墓の基礎工事でも、打込み前の散水は大切な工程です。
あわせて読みたい:鉄筋工とは?ハッカーと結束線で鉄筋を組む仕事と道具
④ 打込み後はすぐに養生する
夏のコンクリートは、打ち終わってからも注意が必要です。
とくに怖いのは、直射日光や風による急激な乾燥です。
水分が失われると、表面にひび割れが発生しやすくなり、セメントの水和反応にも必要な水が不足します。
そこで、打込み後は速やかに乾燥を防ぐ養生を行います。
具体的には、ブルーシートなどで直射日光や風を遮り、コンクリートが散水に耐えられる状態になったら養生マットや散水で湿潤状態を保ちます。
打った直後の柔らかいコンクリートに強く散水すると、表面を傷めるため注意してください。
養生は、固まるまで待つだけの工程ではありません。
コンクリートの強度と耐久性を確保するための、大切な施工管理です。
夏のコンクリートの養生方法と養生期間
夏のコンクリートでは「湿潤養生」が基本になります。
湿潤養生とは、コンクリートの表面を乾燥させず、セメントの水和反応に必要な水分を保つことです。
散水・養生マット・シートを使い分ける
施工直後は、まず直射日光と風を防ぎます。
表面が十分に硬くなったら、散水や湿らせた養生マットを使用します。
| 養生方法 | 目的 | 注意すること |
| ブルーシート | 直射日光や風を遮り、乾燥を抑える | シートだけでは給水にならない |
| 養生マット | 表面に水分を保つ | マットが乾かないように散水する |
| 散水養生 | コンクリートへ水分を補給する | 表面を傷めない段階から始める |
| 湛水養生 | 表面に水を張り、湿潤状態を保つ | 水をためられる形状・条件が必要 |
施工するコンクリートの種類や条件に応じて、必要な養生期間を確保します。

あわせて読みたい:コンクリート養生マットの使い方|敷き方と冬の凍結対策
湿潤養生期間は何日必要?
国土交通省の土木工事共通仕様書では、通常のコンクリート工事における湿潤養生期間の目安が示されています。
| 日平均気温 | 普通ポルトランドセメント | 早強ポルトランドセメント |
| 15℃以上 | 5日 | 3日 |
| 10℃以上 | 7日 | 4日 |
| 5℃以上 | 9日 | 5日 |
※通常のコンクリート工事の標準的な目安です。セメントの種類、配合、施工条件によって必要な期間は変わります。
普通ポルトランドセメントを使うなら、日平均気温15℃以上では5日間が目安です。
「夏は暑いから1日で固まる」「3日たてば必ず養生を終えてよい」というものではありません。
また、早強ポルトランドセメントは強度の発現が早いため、標準的な養生期間が短くなっています。
表の期間は、あくまで湿潤状態を保つ期間です。型枠を外す時期や、墓石を据え付けられる時期と同じではありません。
夏は何時間で固まる?
夏のコンクリートが固まる時間は、気温だけでは決まりません。
コンクリートの温度、セメントの種類、配合、混和剤などによって凝結時間が変わります。
表面が硬くなって歩けるようになっても、必要な強度が出たとは限りません。
一般的なコンクリートでは、材齢28日の圧縮強度を品質管理の基準にすることが多くあります。
ただし、28日間ずっと湿潤養生しなければならないという意味でもありません。
「表面が固まる時間」「湿潤養生が必要な期間」「必要な強度が得られる時期」は、それぞれ別に考えます。
暑中コンクリートは強度が上がりにくい?
コンクリートは、温度が高ければ高いほど強くなるわけではありません。
高温では初期の強度発現が速くなる一方、その後の強度の伸びが小さくなる場合があります。
つまり、初めは早く固まっても、長期的な強度に不利になることがあるのです。
建築工事では暑中期間に6N/mm²の構造体強度補正
建築工事で使うJASS 5では、暑中期間に構造体強度補正値を適用します。
一般的な管理条件では、暑中期間の構造体強度補正値28S91は6N/mm²です。
これは、標準養生した供試体と、実際の構造体コンクリートとの強度の差を考慮するための補正です。
たとえば、品質基準強度24N/mm²のコンクリートに補正値6N/mm²を加える場合、必要な調合管理強度は30N/mm²となります。
ただし、これは建築工事のJASS 5に基づく考え方です。
土木工事やお墓の基礎工事で、一律に6N/mm²を加えればよいという意味ではありません。
実際の強度管理は、適用する仕様書や施工条件に応じて決めます。
また、夏季配合や夏季補正という言葉もありますが、生コン工場側の配合調整と、建築の構造体強度補正は同じものではありません。
お墓の基礎工事で夏に気をつけたいこと
ここまで説明した暑中コンクリートの対策は、もちろんお墓の基礎工事にも当てはまります。
お墓の基礎工事には、公共土木工事のような全国共通の施工基準が定められているわけではありません。
だからこそ、私は土木工事の施工管理の考え方を、お墓の基礎にも取り入れることが大切だと考えています。
墓地は日陰が少ない場所もあり、石や地面からの照り返しが強くなることがあります。
また、小さな基礎は大型構造物と比べて表面積の割合が大きく、乾燥の影響を受けやすい形状です。
夏場はとくに、次の点を意識したいところです。
- 朝の涼しい時間帯に打込みを計画する。
- 生コン車が到着する前に、型枠や鉄筋の確認を済ませる。
- 型枠、鉄筋、基礎砕石を散水しておく。
- 打込みから仕上げまで、作業を滞らせない。
- 打込み後は日差しと風を防ぎ、必要な期間の湿潤養生を行う。
基礎の表面だけがきれいに仕上がっていても、内部の締固めや養生が不十分では困ります。
お墓の基礎は、完成するとほとんど見えなくなります。
見えなくなる部分だからこそ、施工の手間を省いてはいけません。
お墓の基礎工事全体の流れについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
あわせて読みたい:お墓の基礎工事の流れと価格のポイント|地盤から養生まで
夏のコンクリート施工では熱中症にも注意
炎天下での生コン打設は、作業員にとっても過酷です。
生コンが到着すると、打込みや締固めを途中で止めにくいため、作業に集中するほど休憩が取りにくくなります。
そこで、作業前に必要な人数をそろえ、交代や休憩を取れるように段取りしておく必要があります。
暑さを避けて朝に施工することや、待機時間を減らすことは、熱中症対策にもつながります。
気温だけでなく、湿度や日射などを考慮したWBGT(暑さ指数)を確認し、危険な暑さでは作業の中断や延期も判断します。
コンクリートの品質も大切ですが、作業員の安全が最優先です。
よくある質問
- 暑中コンクリートは何℃からですか?
-
日平均気温が25℃を超えると予想される場合が、土木の暑中コンクリートの基本的な目安です。
最高気温が25℃を超えただけで、必ず該当するわけではありません。
- 夏のコンクリートは何日養生すればよいですか?
-
普通ポルトランドセメントの場合、日平均気温15℃以上では湿潤養生5日間が標準的な目安です。
早強ポルトランドセメントでは3日間が目安ですが、実際の養生期間は配合や施工条件に応じて決めます。
- 夏のコンクリートには何回水をまけばよいですか?
-
全国共通の「1日何回」という決まりはありません。
大切なのは、必要な養生期間中にコンクリートを乾燥させないことです。
散水の回数だけでなく、養生マットなどを併用して湿潤状態を保ちます。
- 生コンが硬くなったら水を足してもよいですか?
-
現場の判断で勝手に水を加えてはいけません。
水セメント比が変わり、予定した強度や耐久性を確保できなくなるおそれがあります。
施工性に問題がある場合は、生コン工場と相談し、適切な方法で対応します。
- 夏と冬ではコンクリートの養生はどう違いますか?
-
夏は直射日光や風による急な乾燥を防ぎ、湿潤状態を保つことが重要です。
一方、冬は初期の凍結を防ぎ、必要な温度を確保することが重要になります。
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冬のコンクリート工事のまとめ:冬のコンクリート打設|温度・固まる時間・養生期間と注意点
まとめ|暑中コンクリートは打込み前の段取りと養生が大切
夏のコンクリート工事では、気温と時間が品質を左右します。
暑中コンクリートの4つの対策を、もう一度整理します。
① できるだけ気温の低い日の朝に施工する。
② 練混ぜから打込み終了までを原則1.5時間以内にする。
③ 型枠・鉄筋・砕石に散水して冷やす。
④ 打込み後は速やかに乾燥を防ぎ、必要な期間の湿潤養生をする。
近年、日本の平均気温は長期的に上昇しています。気象庁によると、1898年以降の日本の年平均気温は、100年あたり約1.4℃の割合で上昇しています。
昔と同じ夏の施工方法でよいとは限りません。
夏の生コンは、打つ前の準備と打った後の養生が重要です。
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元石屋のひとこと
りょういち夏の生コンは待ってくれません。私は、打込み前の段取りと、打込み後の養生がとくに大切だと考えています。お墓の基礎も、見えなくなる部分にこそ手間をかけたいですね。
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