コンクリートの施工不良である「ジャンカ」。
見た目にも悪く、専門家でなくても施工ミスだと分かってしまいます。
中でも擁壁(ようへき)は、ジャンカが発生しやすい構造です。
私は土木工事の監督として、数々のコンクリート構造物を作ってきました。
ここだけの話、失敗もしています。しかも擁壁で……。
なぜ擁壁にはジャンカができやすいのか。
その理由は、パチンコの玉が釘の間に挟まる仕組みを思い浮かべると分かりやすいと思います。
恥を忍んで、私の失敗も含めて説明します。
- 擁壁は立ち上がり部分が細く、高いため、生コンの砕石が鉄筋と型枠の間に引っかかり、ジャンカが発生しやすい構造です。
- パチンコの玉が釘に挟まるように、一つの砕石が引っかかると、次々に砕石が詰まり、モルタル分が行き渡らなくなります。
- 対策は、生コンを材料分離させずに打ち込み、必要に応じて先行モルタルや型枠振動機を使い、隅々まで十分に締め固めることです。

擁壁はなぜジャンカが起こりやすいのか
ジャンカとは、コンクリートの内部や表面に砂利が集まり、セメントペーストやモルタル分が不足して隙間ができた状態です。
「豆板(まめいた)」とも呼ばれます。
とくに鉄筋コンクリートの擁壁は、ジャンカに注意が必要です。
擁壁は細くて高い構造になっている
擁壁は、土が崩れたり、土圧によって地盤が動いたりするのを防ぐ構造物です。
代表的なL型擁壁は、底版と呼ばれる底の部分と、壁のように立ち上がった部分で構成されています。
この立ち上がり部分が、ジャンカを起こしやすいのです。
例えば、立ち上がりの壁厚が15cm程度の比較的薄い擁壁を考えてみてください。
両側に型枠を立て、その間に鉄筋を組み、生コンを打設します。
型枠の幅は狭く、壁は上に高く伸びています。
その細い空間に、コンクリートポンプ車などを使って生コンを上から送り込むわけです。
鉄筋と型枠の隙間に砕石が引っかかる
コンクリートは、セメント・水・砂・砕石などからできています。
このうち、大きな粒である砕石が問題になります。
生コンを上から入れても、砕石がすべて真下に素直に落ちていくわけではありません。
鉄筋や型枠に当たり、動く方向を変えながら下へ進みます。
そこで、鉄筋と型枠の間に砕石が挟まることがあるのです。
一つの砕石が引っかかると、そこへ次の砕石が重なります。
さらに砕石が詰まると、砂やセメントペーストを含むモルタル分も十分に行き渡らなくなります。
そのまま固まると、砕石の間に空洞が残ります。
これが、擁壁にジャンカができる原因の一つです。
擁壁のジャンカはパチンコの玉が釘に挟まるのと同じ
私はギャンブルが嫌いなので、パチンコはやりません。
ただ、昔少しだけかじったことがあります。
パチンコをやったことがある方なら、玉が釘の間に挟まってしまうのを見たことがあるかもしれません。
玉は上から落ちていきますが、途中で釘に当たり、右へ左へと動きながら下へ進みます。
たまに釘の間で止まってしまいます。
擁壁のジャンカも、私の中ではこのイメージです。
砕石をパチンコの玉に置き換えてみる
パチンコの玉が砕石。
釘が鉄筋。
そして、パチンコ台の外側が型枠です。
上から落ちてきた砕石が鉄筋に当たり、型枠との狭い隙間に挟まります。
そこへ、次から次へと砕石が引っかかっていくのです。
実際の生コンはパチンコ玉とは違い、モルタル分を含んだ流動体です。
砕石が一つ引っかかったからといって、必ずジャンカになるわけではありません。
しかし、鉄筋の間隔が狭いところや、十分な締め固めができないところでは、こうした骨材の詰まりが原因になります。
私が勝手に「パチンコ現象」と呼んでいるのは、このことです。
配筋が複雑な場所ほど注意が必要
擁壁には、縦筋や横筋、底版から立ち上げる鉄筋などが入っています。
配筋が複雑になると、生コンの通り道が狭くなります。
そこへ振動棒まで差し込まなければなりません。
鉄筋のかぶり厚さを確保しながら、コンクリートを隅々まで行き渡らせるのは、簡単ではないのです。
L型擁壁の鉄筋の組み方については、こちらの記事でも紹介しています。
あわせて読みたい:鉄筋工とは?ハッカーと結束線で鉄筋を組む仕事と道具
新人監督のころ、私も擁壁で失敗しました
私は土木監督として、多くのコンクリート構造物を作ってきました。
その中で、擁壁の施工に失敗した経験があります。
新人監督のころは、どうしてもミスが起こりやすいものです。
もちろん、ミスをしようと思って仕事をしているわけではありません。
本人はいたって真面目です。
それでも、経験が少ないからこそ、気づけないことがあります。
技術者は失敗して育つ
だからといって、失敗を大目に見てくださいとは言えません。
施主さんにとっては、一生に一度の大切な工事かもしれないからです。
ジャンカができれば、施主さんも施工した側もショックを受けます。
補修できることと、最初からきちんと施工できたことは違います。
ただ、技術者は簡単には育たないとも思います。
失敗を経験しながら、施工の難しさを覚えていく部分があります。
私は、自分が経験した失敗を繰り返さないよう、後輩には注意点を教えています。
それでも、実際に経験してみなければ分からないこともあるのです。
この話を書くのは、正直なところ恥ずかしいものです。
それでも、この記事を読んだ方に同じ失敗をしてほしくありません。
また、これから擁壁工事を依頼する施主さんにも、施工の難しさを知っていただきたいと思っています。
擁壁のジャンカを防ぐための打設方法
私が擁壁を施工するとき、とくに気をつけているのは、生コンを材料分離させないことと、十分に締め固めることです。
① 高い位置から一気に生コンを落とさない
擁壁は、壁の上からコンクリートポンプ車などで生コンを打設します。
しかし、高い位置から一気に落とすと、砕石が鉄筋や型枠に当たり、材料分離する原因になります。
生コンは、できるだけ打込み位置の近くまで送り込みます。
ホースの先端を適切な位置に配置し、なるべく落下高さを小さくします。
一度に高く打ち上げるのではなく、層に分けて打設することも大切です。
② 先行モルタルを使う
ある程度高さのある擁壁では、打設の最初にモルタルを先行して入れる方法があります。
モルタルは、セメント・水・砂などを混ぜたもので、粗骨材の砕石が入っていません。
私のパチンコの例えでいえば、玉を落とす前に、モルタル分を先に送り込むわけです。
こうすることで、打ち始めの部分に砕石ばかりが集まり、モルタル分が不足するのを防ぎます。
ジャンカのリスクを減らすための方法です。
「それだと、下のほうはモルタルだけで強度が足りなくなるだろ!」とおしかりの声を受けそうですが、問題ありません。
擁壁は、しつこいぐらい振動をかけるのが鉄則です。しつこく振動すると、どうしても砕石が先に沈みやすいので、下のモルタルと混ざってバランスがとれるのです。
③ 振動棒で入念に締め固める
生コンを打設したら、振動棒(バイブレーター)で締め固めます。
鉄筋や型枠の周囲まで、生コンが十分に行き渡るようにするためです。
私が擁壁の打設で意識しているのは、しつこいくらい入念に締め固めることです。
ただし、同じ場所を長時間振動させ続けるという意味ではありません。
逆に、あまりしつこく振動させ過ぎると、砕石が沈み過ぎて上のほうが強度不足にならないかと心配になるぐらいです。
この辺の感覚は、正直よくわかりません。擁壁は、とにかく難しいのです。
ジャンカが怖いので、振動は掛け過ぎるぐらい掛けてしまいます。技術者のジレンマかもしれませんね。
振動棒の差し込む間隔や時間、下の層への差し込み方などは、別の記事で詳しく説明しています。
あわせて読みたい:コンクリートのバイブレーター(振動棒)による締め固め方法
④ 型枠の外側からも振動を与える
高さのある擁壁では、棒状バイブレーターと型枠振動機を併用することがあります。
内部には高周波バイブレーターを差し込み、型枠の外側からは「壁バイブ」と呼ばれる型枠振動機で振動を与えます。
棒状バイブレーターが入りにくいところまで、コンクリートを行き渡らせるためです。
そこまで大きな構造物でなければ、外からハンマーで型枠を叩くこともあります。
ただし、ハンマーで叩くだけでは、内部の十分な締め固めを保証できません。
型枠振動機も、設置位置や振動の伝わり方を考えて使う必要があります。
私が施工管理をしたストックヤードのコンクリート壁

ストックヤードの完成写真です。ジャンカもなく、きれいに打てました。
こちらは、私が施工管理をしたコンクリート造のストックヤードです。
壁の高さは約3150mmあります。
写真を見ると、型枠のパネルの継ぎ目が確認できます。
このように高さがある壁は、打設の際にジャンカを発生させやすくなります。
しかし、このストックヤードはジャンカもなく、きれいに仕上がりました。
こういう仕上がりを見ると、やはり安心します。
コンクリートは、型枠を外すまで表面の状態が分かりません。
だからこそ、打設中の施工管理が大切なのです。
擁壁にジャンカができてしまったら
ジャンカができた場合は、まず範囲と程度を確認します。
表面に少し砕石が見えている程度なのか、内部まで空洞が広がっているのかによって、対応は変わります。
軽微なものなら補修モルタルで対応できる場合もあります。
しかし、深いジャンカや鉄筋が露出するようなものは、弱い部分を取り除いて断面修復する必要があります。
程度によっては、コンクリートの打ち換えが必要になることもあります。
表面にモルタルを塗ってきれいに見せるだけでは、内部の強度を回復できるとは限りません。
とくに擁壁は、背面から土圧を受ける構造物です。
ジャンカが構造的に重要な部分に発生した場合は、設計者や工事監督者と補修方法を検討する必要があります。
ジャンカの程度や補修材、具体的な補修方法は、中心記事にまとめています。
あわせて読みたい:ジャンカ(豆板)とは?原因と補修方法・程度別の対処法
擁壁工事を依頼するなら、経験豊富な技術者を選びたい
これから擁壁工事を依頼する方へ、私からアドバイスがあります。
できるだけ、擁壁の施工経験が豊富な技術者に依頼してください。
擁壁は形だけ作ればよいものではありません。
地盤の状態、鉄筋の配置、型枠の固定、生コンの打設方法、締め固めまで、考えなければならないことが数多くあります。
また、擁壁には現場でコンクリートを打つものだけでなく、工場で製作するプレキャスト製品や、ブロックを積み上げるものもあります。
土地の条件に合わせて、適切な工法を選ぶことも重要です。
あわせて読みたい:外構工事の費用はいくら?現場打ち擁壁、土間コンクリート、フェンス工事の相場について
あわせて読みたい:【積み方はどう?】間知ブロックの施工方法を説明 「他の土留工法」や「間知石」との特徴や価格の違い
よくある質問
- Q. 擁壁はなぜジャンカができやすいのですか?
-
擁壁の立ち上がり部分は細くて高く、内部に鉄筋が組まれています。
上から生コンを打設すると、砕石が鉄筋や型枠に引っかかり、モルタル分が十分に行き渡らないことがあるためです。
- Q. 擁壁のジャンカは補修できますか?
-
補修できます。ただし、ジャンカの範囲や深さによって方法が異なります。
軽微なものは補修モルタル、深いものは断面修復などが必要です。構造的に問題がある場合は、打ち換えも検討します。
- Q. 擁壁にジャンカがあったら施工不良ですか?
-
ジャンカは、コンクリートが十分に充填されていない施工上の欠陥です。
ただし、ジャンカの程度によって構造物への影響は異なります。すべてのジャンカが直ちに擁壁全体の危険につながるわけではありません。
- Q. 型枠をハンマーで叩くだけでもジャンカは防げますか?
-
ハンマーで型枠を叩く方法はありますが、それだけで十分な締め固めができるとは限りません。
基本は棒状バイブレーターを使い、薄い壁など使用が難しい場所では型枠振動機を使用します。
- Q. 擁壁に先行モルタルを入れても強度は大丈夫ですか?
-
コンクリートの配合や施工条件に合ったモルタルを、適切な方法で使用することが前提です。
大量のモルタルを底にためてしまうと、所定のコンクリートと同じ性能を確保できないおそれがあります。
まとめ|擁壁のジャンカを防ぐには経験と施工管理が大切
擁壁は、細くて高い立ち上がり部分に鉄筋が組まれています。
そのため、上から落ちてきた砕石が鉄筋や型枠の間に引っかかり、ジャンカが発生しやすい構造です。
これを防ぐためには、生コンを材料分離させずに打ち込み、必要に応じて先行モルタルや型枠振動機を使用し、十分に締め固めることが大切です。
ただし、振動のかけ過ぎにも注意が必要です。
擁壁工事は、見た目以上に難しいものです。
施主さんにとっても、施工する側にとっても、ジャンカができてしまうのはショックなことです。
だからこそ、経験のある技術者による丁寧な施工が必要だと思います。
元石屋のひとこと
りょういち擁壁のジャンカは、私にとって今でも忘れられない失敗です。どうかこの記事が、同じ失敗を防ぐきっかけになりますように。そして、私のトラウマもなくなりますように。
この記事の根拠
- 国土交通省「土木工事共通仕様書 令和8年度版」第1編 第3章 第6節 運搬・打設(棒状バイブレーターによる締め固め、薄い壁での型枠振動機の使用、鉄筋や型枠の周囲への充填、狭い場所での施工方法について。)
- 国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」(コンクリートの自由落下高さ、材料分離の防止、鉄筋や型枠の移動防止、締め固めに関する施工管理について。)
- 文部科学省「土木工事標準仕様書(令和4年版)」6.2.5 締固め(棒状バイブレーターと型枠振動機の使用、上下のコンクリートを一体化させる締め固めについて。)
- 筆者の施工経験(新人監督のころの擁壁工事での失敗、パチンコの玉を使った骨材の詰まりの例え、先行モルタルと振動機による対策、後輩への施工指導。)
- 筆者の施工写真(鉄筋コンクリート造ストックヤード(高さ約3150mm)の施工例。)








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