「うわ〜、辛いな、苦しいな」と思うことはありませんか。ため息が続く。気分が落ち込んで元気が出ない。普段明るい人でも、壁にぶつかったり、悲しいことがあったりすると、そんな気持ちになることがあります。
私は、辛い時ほどお墓参りに行きます。仕事でトラブルが重なった時に、お墓に行くと心が安らぐからです。お墓参りは、気持ちを切り替える【心のスイッチ】として、とても優秀です。
1級お墓ディレクターで、石材業界に約25年携わってきた元石屋の私が、お墓参りの魅力を、実体験と心理学の両面からお話しします。
- 私は、辛い時ほどお墓参りに行きます。掃除をして手を合わせると、心が少し楽になります。
- お墓は、頑張らなくていい場所です。ため息をついて、肩の力を抜くだけで十分です。
- 辛さが続くときは、ひとりで抱え込まず、相談窓口へ。

私の【心のスイッチ】:トラブルが重なった時のお墓参り
仕事でトラブルが重なった時に、お墓へ行くと、心が安らぎます。私は、お墓を、【心のスイッチ】を切り替える場所として使っています。
お墓の前では、まず掃除をします。墓石を洗って汚れを落としていくと、心まで浄化されるような感覚になります。そして、おじいちゃんやおばあちゃん、ご先祖様がいらっしゃるお墓で、手を合わせます。私にとって、手を合わせることは、ご先祖様と心をチューニングするような感覚です。心を合わせると、心がスーッとして、楽になっていきます。
お墓参りに行って、ふーっとため息をつき、肩の力を抜く。すると、不思議と心が整理されて、また新しい活力がわいてきます。そんなとき、心の中で、カチッとスイッチが入ったような気がします。

お墓には、誰もいない?
こんな話をすると、「お墓には誰もいないよ」という方もいらっしゃると思います。いる、いないは、その人の主観の問題です。見えないものの話なので、一理あります。
ただ、「ご先祖様がいる」という感覚は、私ひとりの感覚ではありません。昔から日本人に受け継がれてきた、先祖への思い、先祖観です。
たとえば、お盆です。迎え火を焚いて、ご先祖様をお迎えし、家でお供えを囲んで過ごし、送り火で、お送りします。日本では、仏教が伝わる前から、先祖の霊を祀る信仰があります。日本各地の祭りも、もともとは、この祖霊を祀ることがルーツになっているものが少なくありません。のちに、この信仰が仏教のお盆と結びついて、今の形になりました。民俗学者の柳田國男も、『先祖の話』で、日本人の先祖観や祖霊について詳しく論じています。
そもそも、お墓や仏壇で手を合わせるとき、私たちは、誰に向かって、手を合わせているのでしょうか。そこに、ご先祖様や亡き人が、いると感じるから、手を合わせるのだと、私は思います。「いる」という感覚があるから、手を合わせる。日本の先祖供養の文化の中で、長く受け継がれてきた感覚のひとつではないでしょうか。
もちろん、「いる」の感じ方は、人それぞれです。ご先祖様が、実際に存在した方々だということは、確かです。そして、亡き人は、記憶や思い出、受け取った言葉の中で、今も、心に生き続けている、と感じる方も、多いと思います。
それをストレートに表現できる場所が、お墓です。石だから、どんな思いをぶつけても、ドン、と受け止めてくれます。石には、昔から、魂が宿る場所、という見方がありました。神様が降りる岩として祀られてきた磐座(いわくら)のように、石は、自然信仰の対象でもありました。お墓を建てたときに行う開眼供養(魂入れ)も、石に魂を迎える儀式です。お墓の石は、亡き人を思う気持ちを受け止める、魂の拠り所です。
ただ、家族との関係が複雑だったり、辛かったりする方もいらっしゃると思います。ご先祖様に手を合わせなければいけない、ということではありません。お墓参りが自分に合うと感じたときに、今、生きていることに、そっと感謝する時間になれば、うれしいです。
お墓は、ほっと力が抜ける、パワーダウン系のパワースポット
パワーダウンと聞くと、「エネルギーを吸い取られるのでは」と不安に思う方がいるかもしれません。でも、ここでいうパワーダウンは、そういう意味ではありません。肩の力が抜けて、ほっとする、という意味です。

私は、お墓を、パワーダウン系のパワースポットだと思っています。伊勢神宮のように、バシバシとパワーを感じて、身が引き締まる場所が、パワーアップ系。お墓は、ほっとして、肩の力を抜ける場所です。私にとっては、ご先祖様のお墓だからこそ、力を抜ける場所です。
私は、ご先祖様は、お墓に来た子孫を、「よく来たな」と迎えてくれているのではないか、と勝手に思っています。お墓の前では、人は無防備になれます。思わずため息が出てしまう時は、ご先祖様に頼ってみてください。
なぜ心が軽くなる?心理学から見ると
心には、凹んでも、元に戻ろうとする力があります。心理学では、これを、レジリエンス(心の回復力)といいます。凹んだゴムまりが、元に戻っていくようなイメージです。
お墓参りそのものの効果を調べた研究は、多くありません。一方で、亡き人とのつながり、感謝、祈りなどについては、それぞれ心理的な研究があります。

亡き人を思うこと。遺族を対象にした京都大学の調査(2020年)では、葬送儀礼に満足し、亡き人とのつながりを自分なりに保てている人は、心身の不調が比較的少ない傾向がありました(京都大学の研究ニュース)。
感謝すること。感謝できることを書き出す実験では、幸福感などが高まる傾向がみられています(感謝の介入のメタ分析)。効果は小さく、病気を治すものではありませんが、感謝を意識することが、気持ちを整えるきっかけになる人もいます。アメリカの高齢の女性看護師を対象にした調査では、感謝の気持ちが高い人ほど、長生きの傾向がある、という関連もありました(研究の論文)。
祈ること。祈りや瞑想など、宗教的・スピリチュアルな取り組みと、不安の軽減との関連を調べた研究もあります(研究の概要)。
お墓の前で、手を合わせて、静かに感謝する時間は、この祈りと感謝が重なる時間です。お墓参りの効果を証明した研究ではありませんが、心を支える時間になる、と私は感じています。
頑張りすぎている人ほど、お墓参りを
日々、仕事や家庭で頑張っている人ほど、お墓参りを上手に使ってもらいたいと思います。私もそうです。頑張ることばかりで、ほうっておいても肩に力が入ります。
だからこそ、お墓の前で、ふーっとため息をついて、力を抜く。それだけでいいんです。お墓はあるけれど、お墓参りに行っていなかった、という人も、よければ行ってみてください。心のスイッチが、少し切り替わることもあります。
辛い時のお墓参りについてよくある質問
- お墓参りは、気分が落ち込んでいても、行っていいですか?
-
行っていいです。無理に元気を出す必要はありません。ため息をついたままでかまいません。体調が悪い日は、無理をしないでください。
- お墓の前で、何をすればいいですか?
-
掃除ができればしてもいいですし、手を合わせるだけでも十分です。心の中で近況を話してもいいですし、何も話さなくてもかまいません。
- お墓が遠くて、行けないときは、どうすればいいですか?
-
無理に行く必要はありません。自宅でご先祖様を思って手を合わせるだけでも、気持ちが切り替わることがあります。行ける日に行ってください。
- 辛い気持ちが続くときは、どうすればいいですか?
-
お墓参りは、気持ちを切り替えるきっかけです。眠れない、気力が出ない、といった状態が続くときは、ひとりで抱え込まず、医療機関や相談窓口に相談してください。
ひとりで抱え込まないために:相談窓口
辛い気持ちが続くときは、誰かに相談することも大切です。
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間、無料。福島県は0120-279-226)
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間365日、無料)
- いのちの電話:0120-783-556(毎日16時〜21時と、毎月10日の8時〜翌日8時、無料)
- hasunoha(ハスノハ):お坊さんに、人生の悩みを相談できるサイトです。公開での質問は無料です。
電話の窓口は、厚生労働省の「まもろうよ こころ」にもまとめられています。自分や誰かの命が危ないときや、すでに自分を傷つけてしまったときは、119番に連絡してください。身の安全の確保や、事件性がある場合は、110番です。
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元石屋のひとこと:お墓は、頑張らなくていい場所
りょういちお墓は、頑張らなくていい場所です。力を抜いて、ため息をついて、手を合わせる。それだけで、心のスイッチが、カチッと切り替わることがあります。辛い時、もし、お墓参りが自分に合うなら、思い出してください。
この記事は、1級お墓ディレクターとして石材業界に約25年携わってきた経験と、私自身の実感をもとにしています。お盆などの先祖の祀り方や、磐座(いわくら)など石への信仰は、民俗学・神道の一般的な解説(柳田國男『先祖の話』、折口信夫の石と霊魂の論など)をもとにしています。お墓参りが、心の病気を治すことを、保証するものではありません。研究は、お墓参りそのものではなく、感謝や祈りなどを対象にしたものです。体調や心の不調が続くときは、医療機関や相談窓口に相談してください。








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