あなたが見積書で見た、インド産の最高級黒御影石「クンナム」は、本物でしょうか。
クンナムの採石場は、約6年間、ほとんど動いていませんでした。それでも市場では、「クンナム」の名前の石が出回り続けていました。
2025年2月、私はインドの採石場に行き、その理由を確かめました。現地で見たことをもとに、クンナムの現状と、「偽クンナム」が出回る理由、見積書で確かめるときに聞くべきことをお伝えします。
私は、石材業界に約25年携わり、輸入石材商社でも仕事をしてきた元石屋です。
- クンナムは、インド南部タミルナードゥ州のクンナム村などで採れる黒御影石です。
- 2025年2月の視察では、安定して採れていたのは、2024年末に再開した採石場「KNM-KR」など、ごく限られた場所でした。
- 「クンナム」の名前で売られていても、本物とは限りません。人気にあやかって、別の地域の黒御影石を「クンナム○○」と呼んだ「偽クンナム」が出回っています。見分けられない石屋さんも多く、知らずに売っているケースもあります。見積書では、石の名前と産地をあわせて確かめてください。

クンナムは、インドの限られた村で採れる黒御影石
クンナムは、インド南部のタミルナードゥ州で採れる黒御影石です。セマンガラム村、クンナム村、ベルンパッカム村にまたがる岩脈で採掘されてきました。
お墓の石としては、クンナムは高級石種で、硬くて水を吸いにくい石です。
クンナムが風化に強いことは、実際に建っているお墓を見れば一目瞭然で、石屋さんなら誰でも知っています。茨城県石材協同組合連合会が、8つの霊園・2,473基のお墓で劣化を調べた調査でも、クンナムは劣化に強い最高クラスの石でした。
6年間ほとんど採れなかったのに、なぜ「クンナム」が出回ったのか
クンナムの採石は、約8年前に、当時いちばん状態の良かった採石場(クンナムEE)が閉鎖されてから、減る一方でした。ここ6年ほどは、採石量がほぼゼロの状態が続いていました。
実は、6年前の時点で、クンナムはすでに品薄の状態でした。
なぜ採れていないのか。グーグルマップの航空写真で、クンナムの岩脈を確かめました。
白丸で囲んだ部分が、再開したKNM-KRの採掘場所です。斜めに帯状に見える黒い部分が、かつて採掘していたクンナムの採石場の跡です。
黒く見えるのは、実は池です。6年以上前に採掘されなくなり、水がたまって、すっかり池になっていました。
KNM-KRと比べると、ほかの採石場は水がたまって池になっていて、とても採掘できる状況ではありません。


それなのに、採れないはずの「クンナム」が、市場に出回っていました。在庫も切れている、と噂になっていました。それでも出回っていたという事実が、おかしいのです。
2024年末に再開した採石場を、2025年2月に視察しました
2025年2月、6年ぶりに再開したクンナムの採石場「KNM-KR(カルティックラジャー)」を訪ねました。2024年末に稼働を再開した採石場です。
現地では、安定して供給できるだけの量が採れていました。切り出した原石のブロックが、大きく並んでいました。
2025年3月現在、クンナムの採石場として動いているのは、このKNM-KRのほか、細々と、ぎりぎりの状態で稼働している1か所があります。
私が視察したのは2025年2月です。採石場の状況は変わる可能性があります。購入の際は、最新の状況を石材店に確かめてください。



「偽クンナム」の正体は、名前だけ借りた、別の地域の石です
では、採れていなかった6年間、市場に出回った「クンナム」は何だったのか。答えは、人気のある「クンナム」の名前を借りて、別の地域で採れた石をそう呼んだ「偽クンナム」が出回っていたからです。
ここでいう「偽クンナム」は、本来のクンナムの産地で採れた石ではないのに、クンナムと同じ石として売られているものです。
たとえば、「クンナム8」と呼ばれる石があります。本来のクンナムの産地とは、500km以上離れたところで採掘されている石で、乾いた高温の台地で採掘されていて、品質はずっと落ちます。
そんな石を、「クンナム」と呼ぶのはかなり無理がありますよね。
クンナムを買いたい人は、高くても、いいものがほしい人です。それだけ良い石でありブランドだからです。でも現実として偽物が当たり前のように多く売られている。
「クンナム○○」と名付けられた石が、そのまま日本でも「クンナム」として販売されてしまう。名前を付けるのは、中国の工場のこともあれば、日本の商社が売りやすいように付けることもあります。これが偽クンナムの実態です。
「黒御影石の王様」と呼ばれる由緒正しい銘石、クンナムの名前が持つブランドと、そのイメージを借りることを目的としているのだと、そう私は思います。

日本で売る石屋さんは、悪気がないことも多いです。名前を付ける側がイメージで売ろうとして付けた名前を、そのまま受け取っているという意味では、石屋さんも被害者です。
ここまで言い切るのはためらいますが、けっこうわかっていない石屋さんは多い。
輸入商社にも、石屋さんにも、クンナムとほかの黒御影石を区別できない人は多くいます。目利きができないまま、偽クンナムを本物のクンナムだと思って売っているケースもあります。
実は、石に詳しくて、目利きに優れている石屋さんはそんなに多くありません。
りょういちクンナムではない石を、クンナムとして提供することは、許せません。クンナムを買いたい人の、高くてもいいものがほしいという気持ちを、台無しにする行為だと、私は思います。
買う前に、石屋さんに聞いておきたい3つのこと
クンナムかどうかは、石を見ただけでは、プロでも判断が難しいことがあります。だから、まず石屋さんに、次のことを聞いてみてください。
- 見積書の石の名前は、「クンナム」だけでしょうか。それとも産地まで書いてありますか。
- この石は、どの採石場のものですか。いつ入ってきた石ですか。
- 産地や仕入れについて、確認できる資料はありますか。
私がいた輸入卸の商社は、インドの採石場まで自分たちで足を運び、目で確かめていました。インドで掘った石は中国の工場へ送られて加工されますが、その工場に、インドのどの採石場の石が入っているかまで確認する会社でした(トレーサビリティ)。
信用できる商社でした。ただ、そこまでやる商社は、他にはありませんでした。
石屋さんによってインド材の情報量はまちまちですが、よほどアンテナを張って詳しい商社と付き合っていないとわかりません。そのため、石屋さんに聞いても、答えが出ないケースが多いです。つまり、消費者は調べようがない。そうなった際には、潔く他の石種にした方がいいかもしれません。黒御影石で質が良いMUとか。
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クンナムについてよくある質問
- 「偽クンナム」は、なぜ出回るのですか?
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クンナムの採石場がほとんど動いていなかった間も、人気のあるクンナムの名前を借りて、別の地域の黒御影石を「クンナム」として売る石が出回ったからです。輸入商社にも石屋さんにも、見分けられない人が多く、知らずに売っているケースもあります。
- クンナムとは、どんな石ですか?
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インド南部のタミルナードゥ州で採れる黒御影石です。黒御影石の王様と呼ばれ、硬くて水を吸いにくく、風化に強い石として知られています。
- クンナムは、採れていますか?(2025年2月の視察時点)
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2025年2月の視察では、2024年末に再開した採石場KNM-KRを中心に、安定して採れていました。ほかに、ぎりぎりの状態で動く採石場が1か所あります。状況は変わる可能性があります。
- 「クンナム」の名前がついていれば、すべて本物ですか?
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そうとは限りません。人気のクンナムの名前を借りて、別の地域の黒御影石をそう呼んだ石が出回っています。見積書では、石の名前とあわせて、産地を確かめてください。石屋さんに聞いても分からないときは、ご相談ください。
- 別の地域の黒御影石は、品質が悪いのですか?
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そうとは限りません。ほかの黒御影石にも、品質の良いものもあれば、悪いものもあります。チャムラジナガル付近の黒御影石は、乾いた高温の台地で採れ、品質は落ちます。産地と石の名前を確かめることが大切です。
元石屋のひとこと:石の名前より、石の産地を聞いてみてください



私は、石の名前より、どこの石かのほうが大事だと思っています。クンナムのように、名前だけが先に広まる石があります。見積書で名前を見たら、どこの採石場の石か、石材店に聞いてみてください。
この記事の根拠:25年の現場経験と、現地の視察
- 現場の経験:石材業界で約25年、輸入石材商社でも仕事をした経験(筆者。1級お墓ディレクター・1級土木施工管理技士)
- 現地の視察:2025年2月、インド・タミルナードゥ州のクンナムの採石場を訪ね、採掘の様子を確認
- 航空写真:かつての採石場の跡が池になっていることを確認
- クンナムが風化に強いこと:実際に建っているお墓で一目瞭然(石屋さんなら誰でも知っている)。茨城県石材協同組合連合会の石材劣化実態調査(8霊園・2,473基)








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